救う者と救われるもの 第二十四話

「着いたな・・・」
花畑の中で中心部分を囲むように皆が散らばっている中、ルークの前にいたガイが独り言を呟く。
「さて・・・ルーク、真ん中に立ってローレライを呼んでください」
「・・・わかった」
そんな中でジェイドは全員の中で花畑の海に近い位置につけ、ルークに真ん中についてもらうよう誘導する。答えを見つける事の出来なかったルークは若干諦めに近い様子で、真ん中に歩き出す。
(皆・・・迷いがないけど、ジューダスは・・・)
そこで位置に着き、ルークは周りをゆっくり確認する。皆の顔はパッと見て揺れは感じないが、一番ルークに遠い入口側にシンクとアッシュを両隣につけられたジューダスは表情はいつものようでもやはり憂いの雰囲気がある。
(やっぱり、時が経たないと俺もジューダスも納得出来ないのかな・・・?・・・けどここで俺がローレライを送る事を止める訳にはいかないし、割り切るしかないんだよな・・・)
「・・・出て来てくれ、ローレライ」
しかし個人の都合を優先している場合ではないこともルークは承知している。やむなくルークは指輪を見ながらローレライを呼び出す。その声にローレライは指輪からすぐさま姿を現し、ルークの頭上に留まる。



(ルークは決心したか・・・それでいい・・・)
その様子にジューダスは情けない表情だと感じながらも、ローレライを解放することに踏み切ることを内心で誉める。
(未だ僕は生きる事に答えを見つけられないままだが、それでも僕の事を引きずってローレライを送るのを先延ばしにするよりはな・・・)
ジューダス自身は覚悟していた、ルークがローレライを送らないというのであれば自らの立場と考えを脇に置いて叱咤の声でルークを責っ付こうとする事を。
(そう、これでいいんだ・・・)
だがその様子を見届ける事が自身の生を認めると繋がる。ジューダスは半ば自己犠牲であると無自覚に思いながら、遠い目になりかけるのを必死にこらえる。



『・・・ルーク、よいのか?』
「・・・うん」
指輪から出て来たローレライは表情の優れないルークを見て、気遣いの声をかけてくる。だが自分でも必死に絞り出した決意に嘘をつかせる訳にはいかないと、ルークはローレライの鍵を取り出しながら小さく頷く。
「第七音素をこのローレライの鍵に集めて、超振動を使えばいいんだよな・・・あの時のように」
『そうだ、それで我は譜石帯にまで行ける。譜石帯にまで我自身を押し上げる上昇のエネルギーと推進力としてな。だがエルドラントをそのまま第七音素として使った時とは違い、今この地に残る第七音素の量はかなり限られている。慎重に第七音素を集めてくれ、我も出来る限り協力する』
「・・・わかった」
ローレライに自らのやれることの確認を終えると、眺めていた鍵をゆっくり目の前に掲げ、目を閉じて集中しだす・・・









・・・徐々に集まりゆく第七音素、二人の共同作業によりルークが最後になるであろう超振動を使う為の瞬間を一同は待ち侘びる。
(そろそろ、と言った所か・・・)
静かに、だが確かにゆっくりローレライの鍵に蓄えられていく第七音素の量を見ながらジューダスはそろそろだろうと当たりをつける・・・それがもう時空間に戻れない事を意味していると、同時に感じながら。
『・・・ルーク、十分な量の第七音素は集まった』
そしてその目論見はローレライによって、現実となった。ローレライの合図を受け、ルークの目がゆっくり開かれる。
「・・・これ、で・・・え・・・?」
「「「「?」」」」
超振動を使う、そんな覚悟を決めた表情・・・になっていたルークだったが、少しづつ目を呆然と見開いていった様子に一同がなんなのかとルークに注目する。もちろんジューダスもなんだとルークに集中する形になっていたが、それが自身に向けられている事に気付くのが・・・



少し遅かった。



「ジューダス!?」










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