救う者と救われるもの 第二十四話

(僕の生きる道は僕自身が決めるべき、か・・・そんなことは言われなくても分かってはいるが、生きる事を止めようとしていた僕はルークの目にどう映っていたんだろうな・・・)
瞳を閉じたジューダスの脳裏に浮かぶのは、アスターの屋敷でのルークの顔。
(・・・僕はどうするべきなんだろうな・・・ここまでお膳立てされて今更逃げようとは思わん。思わんが、時空間に戻るべきだと考えて今までの僕があったのも事実だ・・・生きる、か・・・改めて自身だけでその意義を考えるような時が来るとは思っていなかったな、シャル・・・)
ルークに言われた生きるという意味を考えていくにつれ、自然と別れを告げたはずのシャルティエの名前を口にする。だがシャルと名前を呼んだジューダスの心に去来した答えはただ一つだけ。
(・・・わかっている、シャル。僕は僕自身で答えを出すさ。もうお前はここにはいない、お前はもう僕とは関係ないんだからな・・・)
その答えは『坊ちゃんに従います』の一言だった。助言や叱咤などの世話焼きな事はいくらでも言ってくれたが、肝心な自身が決めたことにはシャルティエは最終的にジューダスの意見を尊重してくれた。そして今はシャルティエは傍にいない・・・
(・・・思い返せば僕は僕自身が描く理想の自分らしくあろうとし過ぎたんだろうな。そのために僕は必要以上に心を閉ざしていた・・・)
だがそうやってシャルティエを思い出してしまうことに併せて出た物に、ジューダスは自身でそれを悪い癖だと振り返る。



・・・いつしか『エミリオ・カトレット』は『リオン・マグナス』になるにつれ、更に『リオン・マグナス』から『ジューダス』に変わるにつれて彼は心に壁を作り高く積み上げた。その壁の実体は、ジューダス自身が思ったように『自制心と理性』だ。

名を変える事にこうあるべきだと強く自分を律し、そうであると決めたなら自らが犠牲になることも厭わない・・・そこまでの強い意志がある故に、それが自身の全ての本心であると錯覚するほどに。

だがそれは違う。理想はあくまでも理想、理性と本能は別物だ。その証拠にルークがジューダスが生きる事を当然と思った発言をしたあの時、普段のジューダスなら即答でそのつもりじゃないと答えれただろうが、ジューダスは衝撃を受けて即答出来なかった・・・



(僕は僕であろうとするあまり、僕の気持ちに目を背けて来たんだろうな・・・)
今まで自分のやってきたことが本心からではないとはジューダスは微塵も思っていないが、オールドラントに来てから出た自身の生の渇望に関してはごまかしを入れていたと、認めたくなかった心を認める。
(だがそう分かっていても、僕は・・・生きていていいのか?あいつらに甘える形でいいのか・・・生きたいと願うだけでいいのか・・・?)
しかしそれをわかっていても、ジューダスは自身の理屈を捨て切れない。だがそれもジューダスを構成している一部の思考、それを安々と覆せないからこそのジューダスでもあった。












・・・堂々巡りになっている思考の二人。しかしタルタロスはそんな二人の考えに結論が出るのを待たずに、目的地へひた走る。












・・・そして程なくして、タルタロスはタタル渓谷へと到着した。










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