救う者と救われるもの 第二十四話

・・・月明かりが柔らかく大地を照らし、草原の中に鉄の船が走る・・・



今は夜、そんな時にタルタロスはルーク達を乗せてある目的地に向けて走っていた。
そして、タルタロスの甲板の上・・・そこにルークは自らの体を抱くように走行している方を向きながら一人俯いていた。
「ジューダス・・・」
今この場にいないジューダスを想い、ルークはそっと呟く。









・・・さて。何故ジューダスがここにいないのか、タルタロスはどこに向かっているのか、そしてルークは暗く思い雰囲気をまとっているのか・・・それを知るにはケセドニアでジューダスの考えをジェイドが暴いた時まで遡る・・・



『我を音譜帯に送る、だと?』
「はい、いずれ貴方は音譜帯に行かれるつもりなのでしょう。ならばこうやって全てが無事に終わり、ジューダスが貴方を頼ろうとしていたことがわかった今、あまり時間を置かない方がいいかと思います。機としては十分かと見受けましたので、そう意見を述べさせていただきました」
『だから、か。我はそれで構わんが・・・』
自分の意志を告げながらもローレライはルークとジューダスを気遣うよう、言葉を止める。恐らく顔があったなら交互に二人の顔を見ている姿があったことだろう。
「二人が納得する時間を取りたいのはわかります。ですが貴方の存在をそう長い時間地上に残しては争乱の種に成りかねません。それにそう考えているからこそ、ジューダスは近い内に一人消えようとしたんです。貴方より先に。無論勝手に消えるなんてことをさせる気は私を含めて皆さんありませんが、だからこそもしもの芽を潰したいと思って言っているんです」
「・・・・・・っ」
ローレライのそんな態度にジェイドはジューダスを生かす為だと、強い言葉で返す。そんなジェイドの声からふとルークが周りを見渡すと、皆が皆ジェイドと同じように揺るがない視線を浮かべている事にルークは息を呑む。
(皆・・・ジューダスに生きてもらいたいって考えてる・・・なのに俺は一人、違うことを考えてるようだ・・・俺もジューダスに生きてほしいって思ってるのに・・・)
ルークはその一糸乱れぬ意志の統一の在り方に自身がジェイド達と違うのでは、そう思ってしまいルークは目を閉じて拳をギュッと強く握る。何故なのかと、自身に問い掛けるよう。
「ローレライ、貴方は構わないとおっしゃいましたね。でしたらすぐにでも貴方を送りたいと思うのですが・・・一つ問題があります」
そんなルークの葛藤の間に、ジェイドは問題提起をする。
「貴方を送るだけなら問題はないのですが、送ろうとする時先程言ったように預言を諦めきれない者が近くにいてはもしものことが起こりかねません。ですので人のいるケセドニアを避け、タタル渓谷にまで行ってから貴方を送らせていただきますが、構いませんか?」
『そのようなことなら構わん、いいだろう』
ジェイドから出たのは慎重案。人の集まる地は避けた方がいいという考えから出たのは皮肉にもルークとジューダス、二人が出会った地にてローレライを送るという物。その案にローレライは特に否定する事もなく、了承を返した。









「タルタロスがタタル渓谷に着いたらローレライは音譜帯に行く・・・送り終えたらジューダスはいなくならないけど、それだとジューダスは納得しないままで生きる事に・・・」
向かう先はタタル渓谷、その訳はローレライを送る為でジューダスの永遠の逃亡を防ぐ為の物でもある。ルークはそれでいいのかと自問自答しながら、一人佇んでいた。
ちなみにアリエッタやフローリアンはそんなルークと一緒にいたがっていたが、シンクの気遣いにより二人は場から遠ざけられた。
「どうしたらいいんだよ、俺・・・」
だが自問自答を繰り返してもルークにはいい考えは浮かんではこない。泣きそうな声を必死に押さえつつ、ルークは自らを抱くその腕に更に力を込めてしまう・・・







2/23ページ
スキ