救う者と救われるもの 第二十三話

「ジューダスが考えている事はわからないでもないよ・・・俺も本来だったらエルドラントで死んでいたから・・・」
「おい、ルーク・・・」
「でも、俺はそれでも今生きている。それはジューダス、お前も同じだ!」
自身の想いをジューダスに照らし合わせ悲痛に話し出すルークにガイが諌めようとするが、声を荒げたその様子に出した手を引っ込める。
「確かに今生きているのはジューダスからすれば不自然な事かもしれない・・・でもそれは、俺も同じはずだろ!だって俺も同じように死ぬ運命だったんだから!」
「っ!」
「それなのにジューダスは自分だけ生きてるって状態を否定して、俺を不自然だって言ったりしない・・・おかしいだろ・・・?なぁジューダス・・・」
「・・・っ・・・」
その溢れ出るジューダスへの想いと、ジューダスの矛盾を突く無自覚なルークの訴えにジューダスは何も言えずに顔を背ける。ルークはそんなジューダスの肩を掴む。
「そんな風に考えてるんだったら、なんで俺の事を助けてくれたんだよ・・・ジューダスの考え方だったら、俺が歴史を変えることを止める方が普通なんじゃないのか・・・なんでなんだよ、教えてくれよ・・・ジューダス・・・」
そこまで言い切ると感情に抑えが効かなくなったよう、ルークは肩を掴んだまま頭を下げる。



「・・・僕は・・・お前がエルレインと違ったから、協力したんだ」
「・・・え?」
時間にして一分も経ってはいない。だが二人の間にある空気に誰もが時間の流れを遅く重く感じていた中、ジューダスがその口を開いてルークの顔を上げさせる。そこにあったのはジューダスの変わらぬ弱い顔。
「エンゲーブに着いてお前から話を聞くまで、僕はお前がいたずらに人の歴史を狂わせるように過去に戻って来たなら差し違えても僕がお前を止めようと考えていた・・・だが話を聞き、僕はエルレインを彷彿とさせるヴァンの行動を止めようとするお前をどうにかしようという選択は無くなっていた。むしろ僕は話を聞き協力する気以外起きなくなっていた・・・それが僕がお前を手伝って来た理由であると同時に、お前を否定出来なくなった理由を作ってしまった」
「・・・どうして?」
「エルレインを倒す道を選んだ僕は消滅を覚悟した、それと同じようにルーク。協力する事を選んだ時点で僕はお前の望む未来を形にするためにお前を生かす事を決めた。何故ならその未来にはお前がいなければ意味はないんだからな・・・そう考えれば、僕がお前が不自然だと否定は出来んだろう」
「だったら、ジューダスも生きるんだ!俺は、ジューダスと一緒に生きる未来を望む!自分だけ不自然だなんて言うなよ、ジューダス!」
「・・・何を言っても言い訳にしかならんだろう。だが僕はあくまでも死んだ人間であり、お前はあくまでも死ぬ手前で過去に戻ってこれた。生きていたか死んでいたかの違いは近いようで遠い。そして望まれた物か望まれない物かどうかの違いもだ。生きたまま過去に望んで戻れたお前は、死んでいた僕とは違う」
「違わない!今こうやって生きる事が出来ている、それは変わらない!俺も、ジューダスも、皆も!」
ジューダスの考えを聞けば聞くほどに、ルークの口調は熱を帯びていく。
「落ち着いてください、ルーク」
すると、そこにジェイドの仲介の声が入る。









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