救う者と救われるもの 第二十三話

・・・ジューダスがかつてない危機を感じている今の状況に到った経緯・・・それはバチカル・グランコクマでの演説が成功した後にまで遡る。

それは謁見の間にて、演説に参加したメンバーを集めてジェイドがディストに言った考えを明かしたことからだった。



『・・・という訳です』
『・・・むぅぅ、ジューダスがそのような考えに・・・』
『嘘・・・ジューダスがいなくなっちゃうの・・・?』
『有り得ん事ではないな・・・ジューダスは閣下と同じように意志が強い、それに奴の考え方なら十分に・・・』
『・・・ですが貴方はそのジューダスの考えを見抜いてそれを止めたいと思ってるんですね、ジェイド・・・』
『はい、そうです。それで陛下とイオン様、そして皆さんには協力をお願いしたいのです』
『・・・わしに出来る事なら、協力は惜しまん』
『僕も協力させていただきます』



・・・そしてバチカルにて演説に参加したメンバー全員の同意も得て、グランコクマからピオニー陛下のメンバー全員の協力を約束された後のジェイドのジューダス包囲網の案は二人に知られない内に進められていった。

ジューダス自身が感じていた不必要な程周りを固められた状態はもちろん、全員が承知済みの事。いざという時にはジューダスを取り押さえられるよう、戦えるメンバーはジューダスの行動に目を光らせている。屋敷の外で待機している両少将も同様だ。

そしてアルビオールがケセドニアからシェリダンに戻ったのも、ジェイドの案によるものだ。もし万が一ジューダスが包囲網から逃れたとしてもその足を止めれるよう、シェリダンからノエル宛てに手紙を出させたのだ。アルビオールの調整を理由に。これはジェイド達を待たなければいけないルーク達の状態を考えれば、容易に了承が取れるとジェイドは踏んでいた。



ジューダスからすれば四面楚歌、としか言えないこの状況・・・
(貴方は全て知ったなら私達を恨むでしょうね・・・ですが恨み言くらいならいくらでも受けてあげます、貴方が生きることを受け入れてくれるなら・・・)
だがその四面楚歌の状況もジューダスに人並みの幸せと、人生を送ってもらいたいと思ってのことだ。無論ジューダスがそう言った心遣いを望んでいないのは、返答に困っている姿でディストにもよくわかっている。そしてルークとジューダスを除いた、他のメンツ全員が。
しかし今ここでジューダスを確実に捕らえておかなければ、ジェイドの仮定と返答に困っている姿から人知れずいなくなっていたという状態になりえるとも感じているのだ。それも全員が全員。だからこそ皆覚悟はしている、ジューダスからどのように言われようと彼をしっかり捕まえて生かすと皆・・・



(ジューダス・・・まだ決まってないのか、どうするのか?けどそれにしても、なんかジェイド達の言い方とジューダスの態度がそんなのとは違うって言ってるように思えるんだけど・・・)
だがただ一人、ジェイド達の真意を知らないルークはそのやり取りに違和感を感じていた。
(でも急ぐ必要はないよな、だってジューダスはもう普通に生きる事が出来るんだから・・・)
しかしルークはその違和感をジューダスに答えを急ぎ過ぎているからだと、喜びが強い為に自分で結論した。あながち急いでいるというのは表現が違うだけで、間違いではないが・・・そう違和感を取ってしまったからこそ、ルークは場の空気を変える為に口を開いた。
「なぁ、ジェイド。何も今ここで無理にジューダスに答えを聞く必要はないだろ?」
「・・・ルーク・・・!?」
「・・・っ!?」
「・・・えっ?」
いざジューダスの弁護に笑顔で入ったルーク。だがあまりにも場の流れから離れた発言にジェイド達は意外な物を見るように、ジューダスは驚きを隠せない様子でルークを見てくる。そんな全員の様子にルークは何故と言いたくなるが、その言葉を飲み込んで話を続ける。








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