救う者と救われるもの 第二十三話

「貴方はこれよりどのように動くのですか?ジューダス」
「どのように・・・とは?」
「貴方の提案した演説に関しては成功を収めたと言っていいのはわかるでしょう。そして貴方には両陛下とイオン様からユリアシティで貴方を受け入れる、というお話がされていますよね?出来れば貴方にはどこで活動するのかを早く決めていただきたいんですよ、今この場に各国の重要人物がいる内に」
そこまで言われ、ジューダスは改めて場にいるメンツを見渡していく。
(・・・イオン、モース、ヴァン、ファブレ公爵、ナタリア、ガイ、それにジェイド・・・確かに場には重要人物は揃ってはいるが、それ以上になんだ・・・?このジェイドの言葉に込められた圧力・・・!?)
場にいるメンツを全て見渡したジューダスは途端に、自身の考えに恐ろしい物がよぎる。
(コイツ・・・今この場で僕がどうするのか明らかにしろというのか・・・!?答えを後にとか、そういう時間を与える気もないとしか思えん・・・!)
ジューダスは表情には一切出さないが、背筋に寒い物を感じていた。状況全てを把握して、自身にとって不利以外ありえない物に。



ジューダスがそう感じている理由は簡単に言えば、自身への視線の集まり方だった。場にいるのはルーク達はもちろん、ヴァン達六神将にその他戦えないイオン達といったメンツだ。

戦えないイオン達はまだいいだろう、視線を送って来る分には・・・問題はルークを除いた他のメンツの視線だ。

もしここで適当にごまかして逃げようとしたとしても、相手はジェイドを筆頭にしたメンツだ。生半可な弁では太刀打ちするのは難しい。

だからといってジューダスが消える為にはローレライの力が不可欠だ、ローレライがいなければどうやってもジューダスは時空間には戻れない。だがルークから指輪を借りるにしても、その行動の意味を問われれば逃げようがなくなる。

そして最後の手段であり最低の手でもあるルークから指輪を奪い逃げようとするという手も、成功の確率は相当に低い。場にいるのはジェイド達にヴァン達という、ジューダス個人と互角に戦える人間達ばかり。シンク一人でも苦戦するというのに、他の複数のメンツにまでジューダスの乱心の取り押さえにかかられたなら切り抜けるのはまず無理に等しい。

それにもしその場から抜け出せたとしてもその先にはアスターの屋敷を囲んでいるだろう、セシル・フリングス両少将率いるキムラスカとマルクトの実質ジューダスから見れば自身を包囲するための兵士達・・・更にはアルビオールも今シェリダンに戻っていて、遠くまで逃げようとするのは厳しいと言わざるを得ない・・・






(どうする・・・どうする・・・!?)
心の中で少しでも打開策を打ち立てようと、思考を回転させるジューダス。
「どうするんですか、ジューダス?貴方はどのように動くんですか?」
だがジェイドは長考の時間を与える気はないと言わんばかりに、質問をジューダスに突き付ける。
「キムラスカにマルクト、それにダアトに所属する気がないのであればケセドニアにて活動しますか?そうであるなら口添えは惜しみませんが」
「・・・っ!それは・・・っ」
敢えて出る選択肢はあくまでもどこかに所属することを前提としたもの。だが自分の本位ではない質問であるのに自身の考えを明かせないジューダスは、どうしようもなくなったように言葉を濁してしまう。






(もう少しのようですね・・・)
そんな中で出合ってから初めて目にするジューダスが追い込まれた様子に、ディストは眼鏡を押さえながら周りにいる頼れるメンツをさりげなしに見てからジェイドとジューダスにもう一度視線をやる。
(ジューダス、貴方は望まないかもしれませんが我々は貴方が普通に生きる事を望んでいるんですよ・・・)
内心に募る想いに、自然とディストの目に慈しむ温かさが宿っていく・・・






16/22ページ
スキ