救う者と救われるもの 第四話

「何と・・・!ライガは既に森から出ていったと!」
チーグルの住みかの樹の中で長老に報告にをしているルークとジューダス。その報告に案の定長老は驚いている。
「そうなんです。だからもうエンゲーブから食糧を盗まなくてもいいんです」
「うむぅ、何と礼を申し上げたらよいか・・・」
少し長老が悩んでいると、ジューダスがその答えを先に用意してくれた。
「ならば誰かに伝言を頼みたい。これからローレライ教団の導師が来る。その導師に手紙を渡して欲しい」
そう言うと、ルークが紙を取りだし、おもむろに文章を書きだした。
少しするとルークが文章を書き終り、手紙の形にしたところでルークがチーグルに話しかけた。
「これはイオンが来た後に青い服を着た軍人が来るんです。その人にこの手紙を渡すようにして欲しいんです」
「何故そのような事を?」
「・・・詳しい事は言えません、けどお願いします」
事情があるとルークの顔が言っている、その顔に長老は何も聞かずに頷こうと思っていた。
「それと誰か森の入口に待機させて欲しい。導師はエンゲーブの食糧盗難事件を調べに来る。森の奥にまでわざわざ来させる必要は無いように説明役にリングを持たせた奴を頼む」
ルークの隣のジューダスが補足の頼みをする。
「わかった、我等を助けてくれたもの達の頼みを断る訳にもいかん。ミュウ!」
長老のミュウという一言で、チーグルの群れの中からかつてルークが旅をしたままのミュウが長老の横に現れた。するとミュウを見て何故か寂しそうな表情になるルーク。そのルークに気付かず、ミュウは長老からリングを受け取り、挨拶をしてきた。
「僕はミュウですの!よろしくお願いするですの!」
「・・・行くか」
ミュウのやけにテンションの高い声に少し声を落として先に行く事を促すジューダス。明らかにミュウの声が気に入らなかったようだ。




その後すぐに森の入口に辿り着き、ミュウを下ろしてルーク達は立ち去っていった。
エンゲーブへと向かう最中、ライガの背に乗ったまま二人は会話を繰り広げていた。
「あれで、よかったんだよな」
「ああ、あれでよかったんだ」
ルーク達の頼み、それはジューダスの考えから来るものだった。
「僕達は以前と同じ流れを繰り広げる訳にはいかん。だから僕達は先回りするために機先を制す」
「・・・だから俺達はジェイド宛てに手紙を残して先に行くんだよな?」
「・・・ああ」
ジューダスの提案、それは以前の流れとの決別、つまり仲間との繋がりを意図的に絶つ事だった。前の通りに進むのではなく、その先を行く。チーグルの森に行くときからジューダスは以前の流れを断ち切ろうと色々考えていたようで、その結論がこれだった。
「一歩先を行く、誰にも知られないように手を進めて行けば必然的に僕達に有利になってくる。ヴァンとやらに僕達の事を感付かれては面倒になるからな」
「ジェイド達に協力させるって手もあるけど、それだと和平に遅れるし、六神将に気付かれるって可能性も出てくるんだよな?」
「酷なようだが、ジェイド達に目が行けば僕達はその分自由に動ける。だからこそあの手紙をミュウに託した」
「あの手紙、ジェイドは信じてくれるよな?」
「奴は頭が切れる、手紙を見れば対策はとるだろう」
「・・・うん、あっエンゲーブが見えてきた」
ティアとの合流の為、エンゲーブに戻ってきた二人。しかし現在ティアはチーグルの森にイオン達と共に向かっていた。





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