救う者と救われるもの 第二十三話

「終わった、か・・・」
そのルークの声と譜陣が消え去った事から、ジューダスはどこか感慨深げに呟く。
「うん、これで後はケセドニアに戻ってジェイド達にこのことを報告すればいいんだ。その後は世界をゆっくりでもいいから、変えていくんだ・・・」
その呟きにルークはローレライの鍵を納めながら答えると、左手にはめた指輪を手を前に出してから見つめる。
「ローレライ・・・お前を音譜帯に送るのはケセドニアに行ってからになるけど、いいか?」
「・・・っ!」
『・・・あぁ、二千年も地核にいたのだ。それくらいは構わん』
ルークは済まなそうに指輪に同化しているローレライに話しかけるが、ローレライは少しの間を空け気を遣ったように答える。だがその会話を聞いて心中穏やかでないのはやはりというか、人知れず目を大きく見開いたジューダスだった。
「・・・じゃあジューダス、戻ろう」
「っ・・・あぁ」
ローレライとの会話を終え、ジューダスに振り返るルークに影はない。その表情にジューダスは一瞬言葉を失いかけるが、すぐさま返事を返す。
その返答にルークは一つ頷くと、上に戻る為に出口に向かい歩き始める。そしてジューダスもそれに従い、出口に向かう・・・












そしてラジエイトゲートから出て、アルビオールに戻ったルーク達。その際にノエルは無事に戻ってきた二人にホッとした様子を見せ、二人を労いながらアルビオールを飛ばした。

そして一路ケセドニアに向かうアルビオールの中、ジューダスはまた一人考えに没頭しながら席でじっとしていた。



(ローレライが音譜帯に行く・・・それはわかっていたはずのことだ。なのに何故僕はそれを忘れていた・・・?)
先程のルークとローレライの会話を思い返しながら、内心でジューダスは自己嫌悪に陥るのではと思うくらいそのことを頭の中から抜け落としていたことを疑問に思う。
そもそもの話でローレライは地核からの解放を望んでいた、それは確かにルークの記憶から見て知ってはいた。
だが今の自分はそのローレライの願いを全く振り返ることもなく、ただ時空間に戻ることだけをローレライに望んだ。
(僕があそこに戻るにはローレライの力が不可欠だ。だがそれもローレライの考えと、時期がある・・・ジェイドからの話が終わったなら、ルークは様々な問題と向かい合うことになる。色々とゴタゴタが起きる前にローレライは音譜帯に行くのが都合がいいだろうから、おそらくローレライを送るのはケセドニアに向かった後くらいか・・・そして僕はその前にオールドラントから消えなければならない・・・!)
そして音譜帯に行きたいというローレライを送る為の都合を考えれば考える程、ジューダスは自身に時間がないという自覚に満ちて来る。
これからは預言・第七音素を頼らず使うにあたって、ローレライという存在が地上にいるのはあまり好ましい物ではない。もちろんローレライ自身が音譜帯に帰りたがっている希望があるために早く送るべきでもあるが、第七音素の集合体が地上にあるのはまだ預言にすがる人がローレライを求めてはヴァンのようにローレライを使役しかねない者が現れる可能性がある。
そういった点を見ても早めにローレライを音譜帯に送るべきであると考えているからこそ、ジューダスはローレライに合わせる形で時空間に戻るべきだと焦りを感じていた。



(そのためにも、ジェイドの話が終わったら一刻も早くルークに話を通してローレライと一対一の状況で対峙出来るようにせねば・・・)
・・・だがそこまで考えているのに、ジューダスの頭には『今すぐルークから指輪を借り、時空間に戻る』という結論が全く浮かばなかった。それが自身のらしくなさを表しているとは知らず、それが自身の変化を表しているとは知らず・・・





10/22ページ
スキ