救う者と救われるもの 第二十三話

・・・ジューダスがルークに対しひた隠しにしていた決心、それはジェイドに感づかれていた。



「確かに・・・おおいにありえますね・・・彼は他人に厳しいですが、それ以上に自分にも厳しい・・・全てが終わったなら人知れず消えていてもおかしくはないでしょうね・・・」
そしてディストも驚きからジェイドの言葉に同調するように頷く。
「ええ、ですがそれを簡単に表面上に出すような人ではありません、ジューダスは。だからこの推測を事実の物にしないためにルークの隣にいるように私は頼んだんです」
「・・・何故ですか?」
「彼にまだ問題が残っていると自覚してもらっている内に、外堀を埋める為です。ジューダスはなんだかんだ言いながらも情にほだされやすい面がありますからね、ルークの事を聞いて色々考えていることでしょう。少なくともどういった結論を出すにしても大爆発の事をルークに切り出すまで、彼は私達の目の届く範囲にいてくれるでしょう。そこに行くまでの時間勝負になりますが、もしもルークの隣にいることを断ったとしてもキムラスカ・マルクト・ダアトの三国がジューダスを受け入れる体勢を整えた上でその後即座にどこに行くのかという質問を出来たなら・・・ジューダスも人知れずいなくなる事も出来なくなります」
「・・・成程」
そこまで言われてディストはジェイドの言わんとしていることがわかり、納得した。ジェイドは例え力ずくでもジューダスに消えられないように手を打つのだと。
だがディストはジェイドの言葉に反論に似た声を上げる。
「ですが、ジューダスがそれを望みますかねぇ・・・?」
眼鏡を押さえながら言ったディストのその一言はジューダスの理屈においての本音に他ならない物だった。事実ジューダスはその状態になることを望むはずがないし、安々と受け入れるはずもないだろう。



・・・だがジェイドの答えはそんなジューダスの考え方を受け入れての、あえての物だった。
「簡単に受け入れるはずもないでしょう、そもそもそうするような方だったならジューダスはジューダスではありません」
「・・・は?」
「重要なのは彼に世界に普通にでもいいので関わってもらい、生を享受してもらうだけのきっかけと思ってもらうことなんです・・・これまでの彼は幸福と呼べるだけの時間は普通の人に比べて、あまりにも少なかったように思われます。そしてその生も。二度目の生は人の為の運命を切り開く為に自らの生はやむを得ないと受け入れ彼は時空間に残りましたが、この三度目の生とも言える今は彼自身の生を満喫するために神とは全く別の因果が働いた物・・・私はそう考えた為にこうやって彼が生きる為に生を受け入れざるを得ない体勢を整えているんです。まぁジューダスは絶対に反対するでしょうがルークもシンク達も、そしておそらくカイル達も言葉は違えどそう感じて行動するでしょうからね・・・時間がかかってもいい、彼に生きていてもらう心構えを作る為にはこの手段しかないと考えたから私はああ言ったんです」
「・・・」
ディストはそこまで聞いてはっきりわかった、ジェイドも因果とは言いつつもやはりジューダスの事を気にかけているのだと。そしてジューダスに生きてほしいと思っているのだと。
(・・・私も人の事を言えた義理ではありませんがね・・・)
だからそこまで聞いてこそディストは言えた、自分も例えジューダスにやっかみを向けられても普通の生を享受してほしいと。



「・・・貴方の言いたい事はわかりました。ですが三国協力の為の手回しはもう終えてるんですか?」
「ピオニー陛下には即座に許可をいただきました。後はイオン様とインゴベルト陛下にお話をするだけです、とは言っても演説前にこの話をしては変な空気になりかねませんのでそれは成功してから話をしに行きます」
「そうですか、では今は大爆発の問題に取り組みましょう。こちらも大きな問題ですからね」
「ええ」
ディストはそこまで話を終えるとジェイドとともに冷静に資料へと再び視線を向ける。



・・・ジューダス自身の悩みは全く別の場所にて明かされた。だがその企みをジューダス自身は知るよしもない。












・・・そして数日後、ケセドニアにて両国からの手紙が届いた。








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