救う者と救われるもの 第二十三話

「ふぅ・・・」
「・・・」
「それでは連絡が届くまで存分にくつろがれてください。イヒヒ・・・」
インゴベルト陛下達もバチカルへと出発し、二人は屋敷に備えてあるソファーへと腰をかけてアスターはそんな二人に独特の笑い声を残して屋敷の奥へと退出していく・・・



「・・・」
「・・・」
二人はアスターが退出してからしばらく、沈黙を維持しながらただ膝あたりで手を組んで目をつぶっていた。その理由は互いに考えに没頭していたため、余計な会話を互いにする気がなかったからだ。



(これが終わったら預言が詠まれなくなるのか・・・やべぇ、緊張してきた・・・)
ルークはバチカルとグランコクマから連絡が届き次第アブソーブゲートとラジエイトゲートに向かい、プラネットストームを止めれば自分の望んだ世界・・・それにジューダスの事をちゃんと話し合える機会が来るという状態を想像し、様々な事を考えていた為にジューダスに話しかけるような気持ちになることはなかった。



そして、対面にいるジューダスは・・・
(大爆発か・・・確かにルークとアッシュの二人には重大な問題だが、僕はさしてやれる事はない。ジェイドとディストが大爆発回避の研究に成功するか大爆発が結局起こらないですむならそれでよく、対応策が見つからず大爆発が起こったなら・・・もうそれまでの話だ。僕が隣にいてやったところで何も変わる物などない・・・)
ジェイドから話された大爆発についての提案について考えていた。
(・・・くそっ、何を僕は考えている・・・僕は全てが終わり次第消えると決めているはずだ、僕に選択肢など他にはないだろう・・・)
表情にはおくびにも出さないがジューダスは自問する自分の声に、苦悶の叫び声を上げたくてたまらなかった。












~その頃のキムラスカ船の一室~



「貴方はどう思いますか?サフィール」
「は・・・?いきなりなんですか、ジェイド」
二人だけの船室でジェイドとサフィールが机に乱雑して置かれているように見える資料に目を通しながら、ジェイドはサフィールに話しかける。
「ジューダスの事です。貴方はルークに大爆発の事実を話した時に、ジューダスはどのような行動を取ると思いますか?あのジューダスが大人しくルークの隣に収まるだけで留まると思いますか?」
ジェイドはサフィールにまるでルークの隣にいることは有り得ないと決め付けているよう、質問を投げ掛けている。
「・・・意味がわかりませんね、ジェイド。そこまで貴方は自身で言っているのに、何故そうするように仕向けたんですか?ジューダスの性格は貴方も彼の過去に触れた事で少なからず理解しているはずですが」
対するディストは質問には答えず、変わりに意味のわからない質問のその意図を問い返す。
「覚えているでしょう、彼の生き様という物を。その中で彼は自らの不自然さを受け入れながら、満足して消えていきました。そして彼は自分が死んでから十八年後の世界においてかつての仲間達との交流を避けただけではなく、その世界に慣れ親しみ生きる事すらも放棄しました・・・そんな彼にとってこの世界というのはエルレインの時とは違っても、自らの意志で来た世界ではないんです。そんな彼、ジューダスが全てが終わった後で取るだろうと思われる・・・行動を想像してください」
「・・・?・・・・・・!?」
「・・・気づきましたか?」
そんなディストの声にジェイドはジューダスの行動を振り返るように状況を照らし合わせながら話し、最後にディストに考える時間を与え言葉を切る。そして一人何のことかと疑いながらも目を閉じて思考に没頭していたディストは途端に大きく目を開き、ジェイドへ視線を向けるがそこにはただ真剣すぎて怖いくらいの表情のジェイド。



「彼は・・・放っておいたなら、確実に私達の前からいなくなるだろうということが」





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