救う者と救われるもの 第二十三話

・・・何故止める理由がないのか、と言えばそれはティア達にも同じような気持ちが内心で渦巻いていたからだ。



ティアは自らの恩師であるリグレットと、自らの兄であるヴァンとの対話を望んでいる。

アニスは以前の決闘での自らのわだかまりとイオンの真実もあり、アリエッタとの和解を求めている。そして自分の親との預言に対する姿勢とお人よし過ぎるその行動を話し合う事も。

ガイはこれからマルクトの貴族として活動するにあたり、改めてファブレ公爵と向き合わなければならないと感じている。

アッシュは既に公爵との話し合いは終えているが、公爵夫人とルークと腰を据えて向かい合う気持ちを強く持っている。

・・・そしてジェイドはアッシュを除き現在問題視をしている、大爆発の問題に取り掛からなければならないと使命感に満ちている。



・・・各々心に根差している物がある、未来へ向かうはっきりとした向上心が。それが一同にははっきり現れている・・・

故にナタリアの行動は皆の理解の得られた物であった。









「でも確かにジューダスの行方というのは気になりますね・・・」
二人の会話を聞いていたイオンはその会話に首を捻りながら加わる。
「とは言っても彼は非常に用心深いですからね。はっきり演説が終わるまではどうするとは言ってはくれませんよ」
「やっぱりそうですよね・・・」
「ま、わかっちゃいることなんだけどな。とは言っても勧誘くらいは先にしておいてもバチはあたらんだろ」
「貴方の場合は気が早過ぎるんですよ、陛下」
だがジューダスの性格を会合の時に大体把握している面々はジェイドにジューダス自身が言った言葉を言われ、二人共に納得する。



「・・・だからこそ、彼には出来る限り早く決断をしていただかないといけないんですがね」
「?大佐ぁ、何か言いましたか?」
「いいえ、なんでもありませんよ」
・・・だがその後に続いたジェイドの独り言はアニスにボソッと聞こえただけで、すぐに流される事となった。
・・・恐らくその声がジューダスに届いたならすぐさま真意を問われる事になり、その末路が著しく変化していただろうことを感じ、ジェイドは内心で失念していたと眼鏡を手で押さえる仕種で顔を隠しながら・・・












・・・船上での穏やかな時間からまた数日後、ルーク達の乗ったタルタロスとキムラスカの陛下達が乗った船はケセドニアへとたどり着いた。

そこでルーク達は久方振りの対面を果たした、キムラスカの船から降りて来たナタリア・アッシュの二人組と。



「どうだった・・・ナタリア?」
少し人目を気にして街角の一角に移動したルーク達。誰もいないことを確認してからルークはナタリアへと緊迫して質問する。
「まだ、その・・・ラルゴ、お父様はキムラスカにあまりいい思いを抱けないとのことです・・・」
「・・・そうか・・・」
ラルゴを父と呼ぶ事に戸惑いがあるのか、二人の父の呼びわけに戸惑いがあるのか。ナタリアはそういった様子を見せながらもラルゴ自身の偽りなき声を語る言葉に暗さを見せ、ルークもつられて暗くなる。
「ですが・・・これからの世界を共に変える事をはっきりと誓えるなら、自分も協力は惜しまないとはっきり言ってくださいました・・・お父様達にはまだ時間が必要だとは思いますが、それは私達も協力すればけして不可能なことではなくわかりあう事も出来るようになる・・・私はそう信じておりますから、それでいいと思っています・・・」
「・・・そっか・・・」
だがナタリアから語られたラルゴの精一杯のキムラスカを許すではないが歩み寄る言葉に、ナタリアは自身の希望と決意を込めてやれないことはないと目をつぶって軽く笑む。ルークはナタリアのその表情にまたつられて、同じような笑みを浮かべる。
・・・そして、似たように安堵の表情を浮かべる一同。だが一人、別の思惑を浮かべ笑みを見せる者がいた。









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