救う者と救われるもの 第四話

「ううん・・・」
窓から降り注ぐ朝の光を浴びてベッドで身じろぎをするティア。彼女は眠気と戦いながら思考を覚醒の一途へと導こうとしていた。
(・・・えっと、私はどうしてたのかしら?確かタタル渓谷にルークの成人の儀をみんなと祝うためにいて・・・それでアッシュが帰ってきて・・・ルークを助けるために・・・過去・・・へ?)
今現在自分がいる状況、それは間違いなくベッドの中、どうしてベッドにいるのかという疑問がティアの意識を急速に覚醒へと誘っていた。
バッと掛け布団を払い、自分の周りを見回すティア。その風景は以前泊まったエンゲーブの宿屋だと確認したところで、鏡で自分の姿を確認してみた。
「あの頃の・・・私・・・」
自分の記憶が確かに告げている、ルークと旅をしたころの自分だと。その自分の姿にティアは過去に来たのだと実感していた。
「戻ってる・・・戻ってるのね・・・!!」
喜びを隠しきれずに声を大きくしていたティア。すると宿屋の入口が開き、以前の姿の黒髪の少女が勢いよく飛込んで来た。
「ティア!!」
「アニス!!」
アニスの言葉にティアは彼女もちゃんと戻ってきたのだと確認出来た。後この時にいた人物は・・・
「あなたも無事に『戻って』来たみたいですね、ティア」
眼鏡を手でクイッと上げ、微笑を浮かべながら青い軍服を来た人物がアニスの後にゆっくりと入ってきた。
「大佐!!」
「久しぶり・・・と言うべきなのでしょうか♪」
変わらね軽口、彼も戻ってきたのだ。すると、ジェイドの後ろからダアトの法衣を来た緑の髪の少年が宿屋の中へと入って来た。
「ジェイド、彼女があなたの言っていた知り合いなのですか?」
「はい、そうです」
「ど・・・導師イオン・・・」
彼の顔をティア、いやあの時一緒に旅をした人間が忘れるはずがない。自分の中に蓄積していた障気を引き取ってルークの腕の中で逝ったイオン。彼の顔を見たティアは驚愕してしまった。
「どうしたんですか?」
「あ・・・いえ、何でもありません」
イオンが今現在生きているという事、それを認識したティアは泣きそうになりながらも耐えた。
(導師イオン・・・すみません。あなたのおかげで私は助かりました。だから今度は私があなたを守ります・・・)


「ところでティア、ルークはいますか?」
「えっ?」
そういえばと、あの時横になっていた筈のベッドにルークがいない。戻って来たことに嬉喜としていた為、現状のルークの確認をしていなかった。どういうことだと部屋を見渡すと、ルークが使ったと見られる枕元に何か紙が置かれていた。ティアはそれを手に取り、読み上げていった。



『ティアへ   少しチーグルの森にジューダスと行ってきます。いなくなったら心配すると思って置き手紙を置いて行きます。戻って来るので、心配しないで下さい   ルーク』



手紙を読み終えたティア。その内容に確信とある疑問がティア達の中で生まれていた。
「内容から察するにルークは確実に戻って来ています。ですが・・・」
「ジューダスって・・・誰?」
手紙の書き方から間違いなく、ルークは以前のルークだと確信出来ていた。しかしそこに記されていた‘ジューダス’という人の名前を表す単語は、ティア達の記憶には欠片も存在していない。そんな人物と何故ルークは一緒に行動しているのかということも大きな疑問になっていた。



「・・・考えても仕方ありません、大佐。チーグルの森に行きましょう」
「・・・そうですね。では導師イオン、チーグルの森に行きます」
「はい・・・でもいいんですか?ジェイド。僕のわがままに・・・」
「私が行くなと制止してもあなたは一人で行くでしょう?・・・それに我々もチーグルの森に行かなければいけなくなりました。気にする必要はありません」
「・・・ルーク、という人の事ですか?」
「はい」
「・・・変わりましたね、ジェイド。何か昨日と今日で急に」
「・・・そうですね。さ♪今はチーグルの森に行きましょう」
ジェイドがそう言うと、ティア達は宿屋を出てチーグルの森へとタルタロスに乗って向かっていった。






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