救う者と救われるもの 第二十三話

・・・ダアトでの演説が終わり、数日が経った。

ルーク達はキムラスカ・マルクト・ケセドニアでの演説の場を残し、まずはキムラスカ・マルクトの中間点であるケセドニアに向かい演説を行うべきとの意見が出た為、ケセドニアに行く事を決定させた。









・・・そのためにルーク達は今、タルタロスの上にいた。
「うわぁっ!」
「・・・大振りになっているぞ、隙を自ら作ってどうする!」
甲板に倒れ込むルークに木剣を突き付け、ジューダスは剣術指南をする。



ここで今何故アルビオールに乗らずルーク達がタルタロスにいるのかと言えば、ケセドニアで演説の準備をすると言い出したアスターを先にノエルが送りに行ったからだ。そういった用意の観点で言えばルーク達は少しお門違いになる、故に急ぐ理由もないということでルーク達はタルタロスでケセドニアに向かう事になったのだ。



「やるなぁジューダスの奴。ヴァンの言ってた通り、いい腕をしてるぞ」
「えぇ、彼の剣技には無駄がないわ。でもまさかルークが・・・」
そんな二人の模擬戦を傍らで見ていたガイとティアが感嘆の声をあげるが、ティアはルークを見て信じられないと言った響きを口に残す。
「どちらかと言えばルークはモチベーションで強さの幅が変わる方ですからね。安定した高い技術を持つジューダスは下手にぶれない分、ルークにとってこう言った技術面での真価が問われる試しあいでは相性はあまりよくありません」
「大佐ぁ、その言い方だと実戦ならルークに分があっちゃったりするんですかぁ?」
そんなティアの声にジェイドは解説を入れてジューダスに分があるというが、アニスはそんな解説に実際に戦ってみたらどうなるのかと聞いてみる。
「さぁ、どうでしょうね?彼はシンクと一対一の戦いで互角以上に切り繋げたと聞きました。実戦においても彼が強いのは既に実証済みです」
「一概にはどうとも言えないんですね・・・」
答えが出にくい事を口に出し、イオンが難しい顔で頷く。
「どちらにしてもジューダスの腕が確かな事には違いない、か。いいな、ますますマルクトに欲しくなったぞ」
「陛下ー。いきなり顔を出さないでください、あくまでも陛下は護衛対象なんですよ?」
「はっはっは、気にすんなジェイド」
そこに自らに用意された部屋から抜け出して来たのか、朗らかな笑顔のピオニー陛下がジェイド達の会話に乱入してきた。
「でも実際これからはジューダスにも色々考えてもらわなきゃならないのも事実だ、全てが終わった後の身の振り方をな。ナタリア殿下も色々考える事があるからと、キムラスカの船にラルゴを共に乗せるように頼んだ訳だ。俺がジューダスを勧誘するのも終わった後の身の振り方の一つ、それは皇帝の考えだからお前には否定出来ねーぞ?」
「それはそうですが、場所くらいは弁えて下さい。陛下」
皇帝勅命と楽しそうに言われジェイドは呆れたように頭を抱える。



・・・ピオニー陛下の話途中に出て来たがこのタルタロスにはナタリアと、アッシュはいない。それは何故かと言えばまた話の途中にあった、ラルゴとの対話をインゴベルト陛下も併せてキムラスカの兵士が乗って来た船で行う為だ。

本当の父親と育ての父親、真実を知り状況が変わりつつある今ナタリアは二人の父親との共生を誰よりも強く望んだ。アッシュはそれを見届ける為にナタリアと一緒にその場にいることを選んだ。
今現在四人の間でどのような会話が行われているのかをルーク達は知るよしもない。だがルーク達はナタリアの強い決意を受けて、快くナタリアとアッシュの二人とのしばしの別れを決めた。

・・・どのような結末になろうとナタリア自身が決めた事に異論は挟めない、未来を決めるのは預言ではなく自らの意志。そう考えてしまったティア達は新たな歩みを始めたナタリアを止める気にはならなかった。








2/22ページ
スキ