救う者と救われるもの 第二十二話

・・・イオンによる解散が言い渡され数時間後、ルークは枕に顔を埋めベッドに横たわっていた状態からはっと目を覚ました。
・・・その目には涙が流れたと容易に推測出来る赤さがあり、枕には濡れた後が染みとなって浮き出ている・・・この部屋に戻って来てすぐにベッドに飛びつき、むせび泣き続けてその果てに疲れて寝てしまったのだろう。
「いけね・・・俺、寝ちまったんだな・・・」
うつぶせの状態から起き上がり右手で頭を抱え左手で目をこするルーク。
「今・・・どれくらいなんだろ・・・?ちょっと外に出て確かめに行くか・・・」
一通り泣き果てた事で気も落ち着いたルークは時間の流れが気になり、ベッドから降りてドアへと向かい、ドアを開けると外の明かりが見える所を目指す。








・・・静寂。教会の中を包む無音の音に違和感を覚えつつ、ルークは教会の入口辺りに来ていた。しかし何故静寂が教会の中を支配しているのか?・・・それは簡単、窓の見える位置までルークが来た時に見えた光景が先程まで降り注いでいた太陽の光が存在しない、夜だからだ。
夜という事がわかった時にルークは迷惑をかけないように部屋に戻ろうかと考えていたが、今すぐに部屋に戻っても何も出来る事がないと思ったために静かに教会の中を歩いていた。
(・・・ちょっと教会の外ってまだ人っているのかな・・・?見てみよう)
ふとルークはその扉へと思いを向け、外へ出ようと足を出す。



(あぁ・・・流石に夜は人はいないよな・・・)
扉を開けた先の演説の片付けがされた夜のダアトの町並みを見て、ルークはそうだよなと思いつつ自嘲して笑みを漏らす。
何千以上の人達が集まったと言ってもそれはあくまでも演説の為だ、ダアトに留まる為ではない。大多数の人達は国本に帰り船に乗れなかった人もダアトの宿にて宿泊していることだろう。
だがその昼間に見た溢れかえらんばかりの人達が夜に一斉に見えなくなったことで、改めてルークは自嘲した笑みではなく満足げな笑みを浮かべる。
(でも・・・やれたんだよな、俺達。集まった人達に話を受け入れてもらえたんだ・・・)
・・・実の所、演説に参加したメンバー全員は事がし損じれば聴衆全てが暴徒と化す可能性を肝に命じて、事に挑んでいた。預言はそんな事を示していない、昔のモースだったなら確実に言ったであろう言葉を掲げ演説を打ち壊そうとなだれ込む危険性を胸に。
しかし現実はそうならず演説を成功に導けた、恐らく暴動になってたなら破壊の後が争いの激しさを語ると言える程の街を無事に傷一つない状態に留めれた。
この光景を目の当たりにしてようやく緊迫した成功の瞬間の安堵ではなく、ルークは緊張のほぐれた成功させたという安心ある安堵を実感していた。



「何を一人ニヤついている、こんな夜中に」
「え・・・」
すると下の方から呆れているような声をルークにかけながら、一人の人物が階段を上がって来た。その言い回しにルークは即座にその人物が誰かと理解し、階段を上がり終え自分と同じ高さにまで来た人物の名を嬉しそうに呼ぶ。
「ジューダス!」
「なんだ」
今1番会いたいと思っていた人物、ジューダス。そのジューダスに会えたのだがジューダスはそっけない普段通りの態度に、ルークは逆に勢いを削がれる。
「な、なんだって言われてもえっと、その・・・なんかジューダスに会えたから名前を言っちゃったんだけど・・・」
「・・・なんだそれは」
理由は嬉しくてつい、などとルークは恥ずかしくて言えずにしどろもどろになってしまう。ジューダスは訳がわからんと口では言っているものの、少し口角が上がっている。
「・・・もうそれはいいだろ・・・あっ、そういえばジューダスは演説を見ててくれたよな?なぁ、どうだった?」
どうにもジューダスにやられっぱなしだと自爆気味なルークは、空気を変えようと話題転換をする。







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