救う者と救われるもの 第二十二話

・・・ルークの声が確かに、波紋を打つように静かに響き渡る。そしてその声に呼応するよう、壇上に上がっていた全ての人間が・・・ルークと同じようにゆっくり全員頭を下げた。ティア達にイオンにインゴベルト陛下やピオニー陛下などは言うに及ばず、六神将にモースにヴァンまでもが一糸乱れぬ統制を取って。

だが頭を下げる、という行為を全員が全員測ったように合図をして行った訳ではない。ただ心が一つになったからこそだ・・・もう預言を詠まないようにしてほしいという、願いが。









・・・ルークは頭を下げて30秒程の間、人々に手を挙げるかどうかを選択する為の時間を空けていた。だがその30秒という普段なら何ともなく過ぎるはずの時間が酷くルークには重かった、一秒一秒がまるで一分とも一時間とまでも感じられる程に。

だがいつまでも頭を下げていても望む答えも望まない答えも伝わっては来ない・・・ルークは一つ息を飲み込み、ゆっくりと答えを知るべく頭を上げた。
(・・・えっ・・・!)
ルークはその光景を見て、思わず声を出しそうになったが声をなんとか心の中で押し止める。



・・・そこでルークが目にした物は・・・
(皆・・・手を挙げてる・・・!)
そう、ルークが見たのは見渡す限り溢れかえっていた人の波の中で目視出来る中の人全てが思い思いに手を挙げている光景だった。
「み、皆さん・・・俺達の話したプラネットストームを止める事に、賛成してくれるんですか・・・?」
・・・ルークはその光景にたまらず口を動かしていた、無意識に。それだけルークは人々が統一した意識を見せた事に驚きと、喜びを隠せず。そしてルークの声を受けてティア達も顔を一斉に上げる、聴衆達の反応を見る為に。
‘‘‘‘‘‘コクリ’’’’’’
返って来た反応は擬音が着きそうな程、これまた綺麗な統一反応を見せての頷きだった。



・・・とはいえ統一した意志を見せていると言っても、表情には一人一人差があった。

大体の人達の表情は戸惑いや不安などで暗く、どちらかと言えば状況の悪さに気付いてしまって預言が詠めなくなるという事を諦めて受け入れているのだろう。こればかりは時が解決するのを待つしかないので、一挙一動で納得してもらうのは難しい。

少数の面々はどちらかと言えば決意に満ちた表情をしている。預言に対してさして盲信的ではないナム孤島の人達がいるのだ、その人達のように自立をしている人達なのだろう。この人達に関しては問題ないと言えそうだ。



・・・認識の差異こそあれど、たどり着いた結論は同じ。あくまでもこの場は預言を頼れない事実を一般市民に知ってもらえればいいのだ。
表情の細かい違いにルークは気付けなかったが頷いてもらい、安堵の溜め息を吐きかける。だが最終的にはまだこの演説の場は終わっていない、ルークは息を調え震えそうな声をしっかり集中して平静へと保つ。
「・・・ありがとうございます、皆さん。その気持ちが確認出来た事が凄く嬉しいです。ですのでここで改めて宣言をしてもらおうと思います・・・キムラスカ・マルクトの両陛下と導師イオンに、プラネットストーム停止と預言廃止の宣言を」
その声に聴衆達は手を下ろして自然と体を強張らせ、ルークは後ろへ下がる。
そう、ここで三国協同体勢の姿勢を見せる宣言を告げてこそ実際に二つの事柄に対して活動におこせるし舞台を終焉へと向かわせる事が出来る。イオンを真ん中に据えてインゴベルト・ピオニー両陛下はその両脇へと位置につく。







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