救う者と救われるもの 第二十二話

「それにローレライが預言を詠む事を望まない理由は、ユリアが滅びを回避してほしいと願った事もあるんです」
ユリア、その名に聴衆の目が真剣な物へ変わる。
「皆さんはユリアの遺した譜石が何故第七譜石までしかないのか、という事に疑問を持った事はありませんでしたか?」
そこでルークは聴衆達に質問を投げ掛ける、ユリアの遺した譜石の数について。そう言われ、聴衆達は確かな答えが出ないのか、首を捻るばかり。
そんな聴衆達を見て、ルークは事実を明かす。
「それはユリアが第七譜石を見てこれが滅びだって知ってもらう為、預言のままに世界が進んだなら世界が終わるっていう言葉ないメッセージでもあったんです」
「「「「!!!」」」」
「第七譜石を見てもらってそれが世界が終わる証だと認識してもらうのもユリアの願い、ですけど第七譜石までしかないっていう事実に気付いてもらうのもユリアの願いでもあったんです。世界がいつまでも平和に預言通りに続くなら、第七譜石とは言わずに第十・第百とまででも続いてもおかしくはないと思いませんでしたか?」
その更なる問い掛けに確かに・・・といった声が所々から聞こえてくる。



本来だったなら議論されたであろうこの譜石の数の問題、だがそれはローレライ教団が預言の余りの的中率に預言を神格化し過ぎてその問題を無視してしまい、預言を守るだけの存在となってしまった事で譜石の数の少なさに触れなくなっていた。

しかし一度疑問を植え付ける事が出来れば自分で理由を考える事が出来る、しかも今は預言の事実を知ってしまっているが為にもうそれは強く考えざるを得ない精神状態となっている。



「ユリアは第七譜石までしか譜石を遺しませんでした。それが滅びを示したからと言うのが理由でもありますし、だからこそユリアでさえ滅びを詠んだ世界でそれ以降の預言があるわけがないんです。何故ならその世界では・・・人が生きている訳がないから、預言なんてあるわけがないんです」
「「「「!!」」」」
預言が詠めなくなる、その訳は滅んだ預言が示す世界に人がいないから預言の意味がない。すなわち預言自体がないのだから、預言に頼る事が出来なくなる・・・
第七譜石までしかユリアの遺した譜石がないことを併せてそう告げられた聴衆達はいやがおうでもそう気付き、顔色を悪くする。
「そう踏まえれば・・・もう預言にずっと頼る事も出来ずに、遠くない未来には預言は完璧に詠めなくなります。そんな状況になるのに一時の預言の安心だけを求めて、再び障気が世界を巡るかもしれない状態を望みますか?」
そんな聴衆達を見て心を痛めている様子を隠せず、ルークは表情を歪めながらもこれ以上預言に頼らないで下さいと訴える。
「・・・そんな事・・・俺も、陛下達も、ローレライも・・・そしてユリアも、そんな事を望んじゃいません・・・」
・・・見ている人が胸が痛くなる程、絞り出された悲痛の声。ルークのその顔に顔色を悪くしていた聴衆達も、切なげにルークを見ている。
「だから俺達はプラネットストームを止め、これからは預言を詠むのを止めるようにしたいと思っています・・・けどこのことは国の首脳陣の間の話だけで終わらせてはいけない事だという事で、皆さんに聞かせたいと思ってこの場を用意してもらいました・・・だから皆さんに、お聞きします」
そこまで言い切ると、ルークは深々と頭を下げる。






・・・全て、理解してもらうために、命を救う為に行動を起こした。そして今、演説を終末に導く為の最後の瞬間が来た。

ヴァン達を無事に世界に絶望にせずいられるよう、全人類に預言が詠まれない事が受け入れられるよう、ルークはそのままの体勢で審判を聴衆に委ねる言葉を紡ぐ。



「プラネットストームを止める事に賛成だったら、今ここで手を挙げてください。お願いします・・・」






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