救う者と救われるもの 第二十二話

・・・今までの旅を全て思い返しながら、様々な想いを受けて障気の中和を行った。自らの想いは世界を残す為に費やされた、その瞬間を思い返しながら出たその言葉は穏やかながらも聴衆達に想いの重さを理解させるには十分と言えた。



‘‘‘‘・・・’’’’
言葉を失いながらも聴衆達は一切ルークの言葉に負の感情を宿した表情をしていない、むしろただルークの感情を最後まで受け取る空の器のように毅然とした表情をしている。
「・・・そして障気の中和を終えた俺達はバチカルへと戻り、外殻大地降下と障気の中和成功との報告を陛下達にしました。そこで俺達が陛下から聞いたのは、キムラスカ・マルクト・ダアトの三国での和平を行う話し合いをユリアシティでするとの言葉でした・・・それから数日後、ユリアシティで三国の代表とヴァン謡将を交えて預言の事を踏まえての和平の取り決めがされました。それが・・・和平の真実です」
そこまで言い切り、ルークは強く目を閉じる。
「・・・多分、皆さんはすぐには俺達の言葉を信用出来ないと思います」
一つ呼吸を大きく吸って間を空け、目を閉じたまま声を出すルーク。
「けど、俺達は知ってしまった以上・・・これ以上、預言に従うまま行動することは出来ないと感じました。だから陛下達もそう考えて、この場を用意しました。皆さんに預言の事実を聞いてもらい、預言に頼るままの生き方を変えて欲しいという願いを込めて・・・」
ここで冷静に務めあげているように見えるルーク。だがその心中は全く穏やかと言える物ではなかった。
「・・・そしてその願いはローレライが一番感じている物でもあります。今はアブソーブゲートとラジエイトゲートが起点のプラネットストームが活動しているからまだ預言は詠めますけど、これ以上プラネットストームを動かしていたらまた障気が復活して液状化した大地に世界が飲み込まれる可能性が非常に高くなってしまいます」
・・・その理由はこの預言がまだ詠める環境にあった。



・・・ルーク達はアブソーブゲートとラジエイトゲートに着いた時に、あえて世界の混乱を避ける為にプラネットストームをすぐに止める選択をしなかった。何故ならいきなり預言を詠めなくなるような状況に強制に陥らされたと、聴衆達に印象つけないために。

最大の問題とも言えるのは民達が預言を詠まなくなるのが自分達で選ぶような気持ちにさせること、だからこそルークは慎重に・・・慎重に、言葉を紡ぎあげているのだ。



「このままプラネットストームを放っておいたら、またいつ障気が復活するかわかりません。そしてその時が・・・俺が生きている時に来るのかどうかも、わかりません・・・」
・・・目を閉じてるルークの耳にはっきりと聞こえた、ヒッと引き攣る声が聴衆の中から。やはり障気という存在を怖い物と感じているのだろう、あまりにも真摯にルークの言葉を受けてしまって。
「このままだったら確実に障気によって今度こそ、世界は滅んでしまいます。滅びが詠まれた預言なんか関係なく。けど預言を詠み続ける事を選んだなら、プラネットストームが活動していなかったなら預言は詠めない事になります。第七音素を含む音素はプラネットストームが活動することで世界に音素の恩恵を巡らせています。つまり預言を詠み続けるなら、障気がまた世界に溢れかえる条件をクリアしている事を示します」
わかりやすい危険を示した話の内容に、更にルークの耳に今度は戸惑いの声がまばらに聞こえて来た・・・半ば脅しのような話になっているが、これは可能性という名の現実。人は怖さを知ってこそ学ぶ、という心理をうまく利用した話し方。ルークはジェイドの方が話には適しているとは思ったが、あえて自分でやりたいと志願したのた。だからこそこのような話し方も必死に覚えた。



・・・そして全てうまくいかせるためにルークは目を開き、困惑に色めく聴衆達をしっかり見据えて力を込めて静かに語る。







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