救う者と救われるもの 第四話

ライガの背に乗り、一時もするとすぐにルーク達はクイーンの巣のへと到着した。巣には何匹かのライガがいて、その中心にクイーンが悠然とたたずんでいた。
以前と変わらないクイーンの姿を見たルークは決意を新たに、表情を変えてライガの背から下りた。続いてジューダスも背から下り、クイーンの様子を見て威嚇の様相を示していることから、交渉は少し難色するかと考えていた。
「ルーク、僕は見ている事しか出来ん。交渉はお前に託すしかない・・・やれるな?」
「・・・ああ!!」
自らの想いをぶつけるだけ、それがルークのやることだということはルーク自身がよく理解している。ジューダスに振り返りつつ返答を返したルークの眼に迷いはなかった。
(・・・杞憂だったか)
クイーンに歩み寄るルークの背中を見たジューダスは腕を組み、ただルークを見守ろうという形に入った。




《何の用だ、人間よ》
「すみません、クイーン。話があります」
《何だ?》
「これからあなた達に・・・エンゲーブの人達の捜索の手が伸びてきます。チーグルが食糧を盗んでいたことが昨日発覚してしまいました。すぐ近い未来に理由の判明の為に人がこの森に来ます。そうなればクイーン、ライガを討伐しようとする動きが出てきます。だからクイーン・・・この森から出ていった方がいい」
その言葉に驚いた気配を出しているクイーン。先程までの殺気まで混じっていた覇気が嘘のように霧散してしまっている。クイーンから感じられる感情はどちらかと言えば戸惑いが強い。
《・・・解せん。人間の貴様が何故我等の心配をする?》
クイーンの芯からくる疑問に、ルークは答える。
「・・・あなたが死んだら誰よりもアリエッタが悲しむんです」
《アリエッタを知っているのか!?》
「はい・・・。あなたがいなくなればアリエッタは悲しんでしまいます。それに・・・今から少しした後で来る人はアリエッタの大事な人なんです。このまま行けば確実にアリエッタが悲しむ結末になってしまうんです。だからクイーン・・・お願いします」
丁寧に頭を下げてお願いをするルーク。クイーンもアリエッタの事を愛している。それに目の前の人間が悲壮な顔をしながら放った言葉に嘘はないと感じとったクイーンは、そう遠くない未来に良くない展開が近い事も理解していた。
《わかった・・・人間よ。我等はこの場を離れよう》
クイーンの一言で勢いよく頭を上げたルーク、その顔はぱぁっと明るい笑顔そのものだった。
「ありがとうございます!!」
《礼を言うのは我等の方だ。・・・危機を知らせてくれて感謝する》
そうクイーンが言うと、クイーンは周りにいたライガを二匹呼び寄せ、何かを言った後、そのライガ達がルークとジューダスの近くへとすりよってきた。
《その者達に二人を望む場所へと乗せて行かせよう。何も返せん分にはそれくらいはさせていただこう》
「あ・・・すみません」
《せめてもの礼だ、気にしなくてもいい》
そう言うと、周りのライガは卵を抱え、クイーンを中心にして森の奥へと姿を消し去っていった。
「上手くいったようだな」
「うん!!」
様子を見ていたジューダスがルークに近付き、確認を取る。上手くいったことに内心ジューダスは嬉しくなりながら先を促した。
「チーグルに報告に行くぞ、ライガは立ち去るとな」
「うん、わかった・・・チーグルの住みかまで行ってくれ」
ライガの背に乗りながら耳元で行き先を告げる。するとライガ二匹は一目散にチーグルの住みかの方角へと向かっていった。




一方その頃、エンゲーブではティアが眠りから覚めた所だった。





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