救う者と救われるもの 第二十二話

「そもそも、外殻大地を作るに到ったのは溢れ出した障気が世界を覆う程に世界に蔓延したため、魔界のその障気を避ける為のもの。アクゼリュスで噴出した障気はあくまでも魔界から昇って来た一部、このままなんの対策も取らずにいたなら、もし外殻大地を魔界に下ろしたとしてもかつての世界の危機のように我々は障気により滅びの淵へと立たされていたでしょう。パッセージリングの限界がまだだと甘い見識でいたならいずれは遠くない未来に外殻大地の崩落を招いていた事だと思われます・・・このことからなんらかの対策を取らなかったならいずれ、人類の死滅は避けられない事態となったものと思われます」
イオンの不穏な推測にどよめきが少なからず起こるが、そこまで重要視するような混乱はない。
「その話をローレライから聞いてオールドラントの命運を話し合う為に僕達はマルクトのピオニー陛下に話を通しておかなければいけないと考え、ルークは出来る限り早く外殻大地降下を済ませたいと言いバチカルを出ました。その時点ではローレライという存在とともにいるルーク以外に外殻大地降下、それに魔界の障気をどうにか出来る存在がいないという為に僕達は彼に命運を任せる以外にはありませんでした」
「それで俺はマルクトへの説明を導師達に任せて、各地にあるパッセージリングを回りました」
ここで話をルークが引き継ぐ。
「パッセージリングを回り徐々に外殻大地降下の準備を整えながらシェリダンで開発された空を飛ぶ音機関アルビオールを借りて世界中を飛び回りました。俺はそれで最後のパッセージリングを操作し終った後・・・急いで降下の始まった外殻大地からアルビオールで魔界の中で障気に飲み込まれていないレムの塔という場所に向かいました。それはなんでかと言うと、障気を中和するためです」
障気の中和、はっきり口にされたそれにどうやって?といった疑問の視線がルークに飛んでくる。
「・・・ローレライは俺に言いました。障気は自分と俺が使える力、つまり超振動を使えば中和が出来ると」
超振動、ある意味で納得のいく答えを聞いた聴衆達だがまだ怪訝な視線を送る者がいる。
「けどその中和にも条件がありました。その条件は第七音譜術士一万人分の第七音素が必要で、更に上手く障気を中和出来るコントロールが必要だっていう二つの条件が。その二つの条件は第七音素を集めるだけならローレライだけでも出来るんですけど、超振動をコントロールするには相当な集中が必要な上に自分の存在が消えて更に障気が消えないって最悪の展開が考えられたからローレライは超振動を下手に使う事も出来ないままで地核に閉じこもってしまった・・・とのことです。そこで俺が超振動を使い、ローレライは第七音素を俺に提供するサポートの役割をすることで成功の確率が格段に上げられると聞いたので互いに役割分担をしながら超振動を使う事にしました」
ここまで聞いてようやく、聴衆達の疑問の視線が無くなっていた。失敗が可能性にあり、その失敗は起こる確率が単体で行うより高いように思われる口調。更には失敗していればローレライも消滅していて、障気も今どうしようもない状態で残っていたかもしれない事・・・それらを踏まえれば聴衆達の納得という結果は当然ともいえた。



・・・だがルークは忘れてはいない。自らが本来体験した障気中和はローレライの協力などなく、ヴァン達の作ったレプリカ一万人の命を使い自らも死を賭けて障気を中和したことを。

・・・あの瞬間命を預かった光景は思い浮かべればすぐに瞼の裏に焼き付いている。だからこそ理不尽に命を奪われる事のないよう、あのような悲しみを生まないようにルークはその瞬間を口にする。



「そして・・・様々な助けを受けながら、俺達は超振動を使い障気の中和に成功しました」







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