救う者と救われるもの 第二十二話

「そんな折りにルークがバチカルに戻って来てその話を聞いた時、私はすぐさま頷けずにいました。確かにパッセージリングの限界、詠まれていない預言・・・それらを考えれば和平をすぐに結んだ方が世界の為になる、そう思えばよかったのですがマルクトとの仲を一朝一夕に見直せるものではないという思いが頭をよぎり、決断をすぐには下せませんでした。ですがその迷いを晴らしてくれる存在がルークとともにいたことで、話が変わりました。その存在はティア・グランツの兄であり、神託の盾騎士団首席総長であるヴァン謡将の配下の六神将の二人のシンクとアリエッタです」
‘‘‘‘?’’’’
インゴベルト陛下は自身の苦悩を明かしながらも、起こした事実とヴァン達を無事に済ませる為のシナリオの繋ぎを話し出す。
だがそこで何故ヴァンと六神将の二人?そう疑問に思う聴衆達の表情に、インゴベルト陛下は話を続けていく。
「その二人はルークがアクゼリュスにいた時に、ヴァン謡将の命で来たとルークに明かしたそうです。そこで詳しい話をルークが二人に聞いた時、衝撃的な発言を受けたと言いました。その発言は、預言の内容をヴァン謡将も知っている、というものです」
‘‘‘‘!?’’’’
「詳しい詳細はここはヴァン謡将に話してもらいます」
更なる爆弾発言に聴衆達がどよめきかける中、インゴベルト陛下はここでヴァンに話を振って後退する。そこで入れ代わるよう、ヴァンが拡声器の前に位置をつける。
「ただいま紹介にあずかりました、ヴァンです。私が預言を知ったきっかけですが、皆様はかつてマルクトに存在していたホドという地をご存知でしょうか?・・・私は、そこの出身者です」
ホド、その名に自然と聴衆達のヴァンとティアを見る目つきが自然と同情的な視線が多くなる。その視線の大多数は察するにマルクトから来た人達だろう、だが同情をさらに掻っ攫う為にヴァンはらしくもない神妙さを見せて事実を語る。
「あの地が何故消滅したのか、その訳はホドという地もまたパッセージリングがあったセフィロトであり、ホドにて発生した擬似超振動の為に魔界に崩落したためです」
‘そんな事が・・・’
ヴァンの紛れも無い事実を語る言葉により一層、同情を引く視線が集まる。
・・・だがこのことは本来マルクトとキムラスカの闇に関わる話、実際に深く掘り下げられたら全てが台なしになりかねない。しかしこの話は前置きである、その為には危険をいとう事は出来なかった。
「私はホド崩落の際に命からがらといった様子で、ホドから離れる事が出来て今に到ります。そんな私が神託の盾にて活動を行うに到った理由、そして二人をアクゼリュスに派遣した理由はそのホドにこそあります。その理由は・・・崩落してしまう最中のホドの地で、誰もが求めてやまなかった第七譜石を私が偶然に見つけてしまった為です」
‘‘‘‘!?’’’’
・・・そう、この第七譜石がホドにあったという事実。このなによりの事実はヴァン以外に利用出来る者がいない為、ホド崩落の事実を明かす事となった。
「第七譜石がホドにあった事、それは今考えればユリアゆかりの地にて子孫である私達が代々譜石を守る意味を込めていたのではないかと考えられます」
ホドはユリアが没落したと言われている土地、それは一般論でその可能性があると言われている。更にはグランツ兄妹はユリアの子孫であると、ローレライがその存在を認めている。
・・・条件として第七譜石がホドにあってもおかしくはない、現に聴衆達の表情はヴァンの推測に納得の様子を浮かべている。
「そして第七譜石が崩落した時にようやく顔を出した理由も、ホドが崩落しきる前に第七譜石を詠んでその内容を理解して絶望しながら逃げ出した後、しばらくして落ち着いた所で私なりに考えて結論を出しました。それはこの預言の事を民衆に明かせば、ただいたずらに混乱を招いてしまうのではとユリアが考えていたのではないのかと」
納得の様子を示している聴衆達にヴァンは自身が本当に想っていた事も併せ、実際に行っていた事をオブラートに包みつつも話していく。





9/19ページ
スキ