救う者と救われるもの 第二十二話

ホッとしたのもつかの間、イオンは意を決して口を開く。



「彼の元に降り立った伝説・・・それは、ローレライになります」



‘‘‘‘ええっ!?’’’’
イオンの宣告に一気にざわめく聴衆達。
「僕の隣に来て下さい、ルーク」
その声を聞いて押し止めようとすることもなく、イオンはルークを呼ぶ。
(来た・・・!)
バクバクと心臓の鼓動が早くなるなか、ルークはイオンの隣に歩を進め並び立つ。
「皆さんはローレライが彼の元に降り立った事を信じられないことかと思います。ですので貴方方にもその存在を直に見ていただきたいと思います・・・ではルーク、ローレライを呼び出していただいてよろしいですか?」
「・・・ああ!」
・・・イオンとルークの会話に聴衆達のざわめきが一気に静まり返る。ローレライ、本当に出て来る物なら・・・という気持ちからか、緊張感に満ちた顔つきの者がほとんどである。
「ローレライ、聞いていただろう。出て来てくれ」
指輪をはめた左手を目の前に出して、ローレライに呼びかける。その瞬間指輪が強烈な光を放ち出し、聴衆達はその現象に目を細める。
だがその光に目が慣れていき視力が戻っていった面々が目にした物は、ルークとイオンの二人の図上に浮かぶ尋常な量ではない第七音素の塊のようなものがいつまでも霧散せず存在する‘モノ’だった。



「あれが・・・ローレライ、なのか・・・?」
誰もがその存在に呆然としていた中、誰とも知れぬ聴衆の呟きが聴衆全員の気持ちを代弁しているかのよう静かに響き渡る。
『いかにも、我がローレライである』
その気持ちを汲み取ったかのようにローレライが声に答える。イオンでもルークでもない第三者の声が拡声器越しに聞こえて来た、そのことから言葉を発したのは紛れも無く第三者であるあの第七音素の意識集合体であるローレライそのものなのだと聴衆達は一気にその存在を伝説のものとしてではなく、実際にいるものとして認識せざるを得なくなっていた。
その証拠に畏敬の念を持った尊敬の目を一気に聴衆達はローレライを見て浮かび上がらせていき、中には演説の途中だというのに拝みだす人がいる始末だ。



・・・あえて注意をしておくが、ローレライもこの演説に対し協力することは納得の上でルークに呼び出されている。

ローレライが言うにはこのような世界の風潮になったことは自身にも責任があるということを考えるようになったとのこと、責任の一端を負う為にも是非やらせてもらうとのことだとの事だ。

・・・その協力を申し出る時の声色が何か決意めいたものがこもっていたというのもあり、ルーク達はそのことを深く追求することはなかった。



「・・・皆さん、ここからは俺から話させてもらいます」
ルーク達と同じく決意を持ったローレライに注目が集まる中、ルークが打ち合わせていた通り自身の番になる流れを受けて少し横にどいたイオンの位置に移り、話を切り出す。
「ローレライは最初、俺にチャネリングという同じ音素振動数の存在同士でしか出来ない精神と精神を繋ぐ行為によって度々接触してきました。本当だったらチャネリングでは互いの言葉を遠い位置でも正確にやり取り出来て、会話をするには便利な現象なんです。けどその時ローレライは星の地核にいて、チャネリングを正常に行うにはあまりにも位置が遠すぎいつもローレライからはとぎれとぎれの言葉しか聞こえませんでした」
‘ほぉ・・・’
あまり専門的ではないようにかみ砕いてルークなりに説明すると、聴衆達からそういうものなのかと言った納得の声が聞こえる。まあチャネリングで精神を繋がれた方が頭痛が起きる事を除けば実体験したことなので、説明出来ておかしくはないが。







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