救う者と救われるもの 第二十二話

・・・ユリアシティでの会合から数日経った。キムラスカ・マルクト・ダアトの主要人物達がダアトに集まって世界に関する重大な事実を話す・・・そう通達を各地に降り立った面々が伝えて以降、ダアトには住民以外にその話を聞こうと世界各地から続々と人が集まって来ていた。

世界にも人にも重要な出来事・・・人が集まるのは歓迎すべきこと。そうなればなるほど多くの人達に預言を詠まなくするため、預言に頼らなくなるため・・・出来る限り早く事実を受け止め、行動出来るようになる・・・そう言った考えもあるため、出来る限りダアトに集まってもらいたいとルーク達は考えていた。

むろんまた聞き話では信憑性に欠けるかもしれないのでバチカル・グランコクマ両首都とケセドニアでやることも計画している為、そこまで集める事もないと考えている。









・・・そして預言とルーク達の行って来た事を合わせて全ての運命が決まるその日、ルークはダアトの教会の中の一室で一人椅子に腰掛け目をつぶって頭を下げていた。



(・・・この日、この場所で全てが決まる・・・ジューダス、俺やるよ)
控室として特別にあつらえてもらった自分の為の部屋、その中にジューダスはいない。これはジューダスが演説には出る気はないということから、当事者ではない自分はどこからかその場面を一人で見ると言い出し前日ダアトの街中に消えて行った事によるからだ。
だがジューダスがいない、という事にルークの心に陰りはない。
(ジューダスだけに全部任せてられない・・・本当は俺達が頑張ってやらないといけない事だった事、それをジューダスに全部負わせちゃいけないんだ・・・だから俺達はジューダスの考えを成功に導くんだ、これだけは俺達自身の力で・・・!)
ジューダスが傍らにいて常に手助けをしてもらう、もしくはジューダスに全てを任せてもらう・・・そんなジューダスに頼るだけ頼って自分が何もしないということに、ルークの気持ちはそれは駄目だと強く訴えていた。
確かに演説はジューダスの考えによるもの、だがそれを成すのは案を託された自分達以外にいない・・・
だからこそジューダスがいないことにルークは陰を落とす事なく、むしろジューダスに報いる為に熱く決意に満ちた表情になっていた。



‘コンコン、ガチャ’
「ルーク、時間よ」
一人ルークが決意を固める室内にドアをノックする音が響いた後、ティアが入室してきて演説の時間だと告げる。
「・・・ああ、わかった!」
その報告に目を開け立ち上がると曇り一つない強い意志を込めた瞳でティアに向き直る。
「それじゃあ、行きましょう」
「ああ!」
ルークのその顔に微笑を見せ、ティアは一緒に行こうと誘う。ルークははっきり肯定を返すと、先に室内を出たティアの後を追うようその部屋から退出していく・・・






ルークとティアは演説会場に向かうまでの間、一言も交わす事はなかった。

二人はユリアシティでの会合の後、ガイ達を交えて存分に話し合う事が出来た。その際に今までの経緯などは互いに話終わっている、そしてルークがいかに演説の成功を願っているかも・・・

ルークの頭は今はそのことだけがほとんどを占めており、ティアもその使命感に燃えており余計な言葉が互いに出て来る事はない。






・・・そしてルークとティアの二人は演説の場所として選ばれた教会への正門入口前、その裏の教会内部の出口の前に来た。そこには、インゴベルト陛下・ファブレ公爵・ピオニー陛下・ジェイド・イオン・モース・ヴァンといった面々と、面々を守る為に三国の兵士数人が二人を待っていた。
「来ましたね・・・では皆さん、行きましょう」
二人が来た事でイオンが場にいる全員を見渡しながら行こうと切り出す。ルーク達は確認するまでもないと、全員縦に首を振る。



その意志を確認し、イオンは教会から出ようと体を出口に向ける・・・その瞬間、教会の扉は開かれた。






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