救う者と救われるもの 第二十一話

「考えてもみてください。今のルークに大爆発の事実を伝えファブレの家にいるかどこかにしばらく身を寄せるかの選択をしてもらうにしても、彼が動く世界を見ているだけに留まると思いますか?」
「いや、思わん」
ジェイドからの遠回りな質問にジューダスは内心不安で苛立っていた。だが質問に関してルークを思い直したジューダスは普通の声で即答で返す。
「ルークはルークとして動く事を考えるでしょう、大爆発の事を聞いたなら。その時彼がどちらを選ぶかはわかりません、今の彼はもはや私達と旅をしたときのままのルークではありませんからね。ですが彼がどういう道を選ぶにしてもルーク自身の人生経験自体は七年程しかありません。そんな彼一人でやること全てがうまくいくなど、まず有り得ません。ルークの成長を促す為にも、彼を見守る為にも誰か頼れる方が隣にいたほうがいいと思われます」
「・・・それが、僕だと言うのか?」
明かされたジェイドからの本題、ジューダスは隠していた苛立ちをたまらず声にこもらせる。
「なにも僕でなくてもよかろう・・・」
その苛立ちをジューダス自身痛い程に実感しながら、たまらず頭を抱えたくなっていた。何故自分なのか、それは自身がよく理解しているが故だった。
「・・・恥ずかしい話ですが、貴方以外に頼める人がいないんです」
半分が本当で半分が嘘、ジェイドからの困り声の本質はそう構成されているとジューダスは苛立ちながら感じていた。



自分以外に頼れるのがいない、本当だと感じる理由としては立場だ。ジューダスはオールドラントにおいては別世界から来たどこにも属していない異邦人、アッシュを始めとするかつてルークが旅をした信頼する面々は軍属・貴族といずれかの二つに全員属している。その点で自由に立場をこれから擁立出来るジューダスはルークと一緒にいさせやすいと言える。

しかし反面でジューダス以外いない、というのも嘘であると言える。信頼という点はともかくとしてもファブレはキムラスカでも有力貴族、優秀な人材はファブレの名で集めればいないことはないだろう。何も絶対ジューダスで、などという理由には結び付かない。



(この男、僕をルークと一緒にさせようとする理由はなんだ・・・?)
ジューダスがその真意を伺おうと神経をジェイドに向ける中、当の本人はいたって真剣な様子で話を一転させる。
「とは言ってもこればかりはルークの意志も聞かねば話になりません。まずは演説を終える事を考え、そしてうまくいったなら大爆発の事を切り出します。今は彼に余計な事を聞かせて演説の際に上の空にするような悩みを植え付ける訳にはいきませんからね。ジューダス、演説が終わってルークに大爆発の話をした時でいいですのでこの話を受けるかどうか決めていただいてよろしいですか?」
「・・・ああ」
探ろうとした矢先にこれ以上の話はルークを通してから、更には演説を滞りなく進める為に時間を空けてから返答を聞きたい。そう言われてしまってはジューダスも下手な口を出せない、不満を感じながら簡潔な返事しか返せなかった。
「他の皆様方も、このことはルークに聞かれぬよう私が本人に切り出すまでは他言無用でお願いします」
「・・・わかった」
そんなジェイドは周りを見渡すようにこの場だけの話にするようノエルにも聞こえる音量で頼み込む。その声にファブレ公爵のみが了承の声を上げるが、他の面々も事の重大さから無言の肯定で首を縦に下ろす。
「・・・すみません、このような話をしてしまって。ではこの話はこれまでにして、ダアトに行きましょう」
その反応に謝りを入れ気を取り直し本来の目的、世界への報告に向かおうとジェイドは話を打ち切る。






(・・・くそっ、なんなんだ一体・・・)
ジェイドの話が打ち切られた後、雑談も特にない時間の中でジューダスにとって中途半端極まりない形で終わった話にもやもやした気持ちでいた。
(あまりいい予感がせんな・・・)
そもそもの話で言えば今この場で大爆発の事はともかくとしても、自分がルークと共に暮らす事を今話す明確な理由が存在しない。その意図が掴めない事がジューダスの懸念を産んでいた・・・









世界が変わる中で動く一人の世界



そこにはもう一人の英雄の世界を左右する因子が存在する



結末がどう変わるかは世界の変革後にしかわからない・・・






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