救う者と救われるもの 第二十一話

「その事実から考えてみてください。私はルークとアッシュ、二人が近くにいなければ大爆発は起こらず一人にならないと言いました・・・ですが、大爆発を起こさないとは言っても音素乖離を引き起こしレプリカを乗っ取ろうと安定を求めるコンタミネーション現象が無くならないとは言っていません。つまりそれはアッシュ、彼単体の消滅の可能性があるという事も示しているんです」
「・・・っ!」
「・・・」
ジェイドの更なる補足、ではなく視点を変えた現実の突き付け。ファブレ公爵は息子達に降り懸かる重い問題にまた苦しそうに顔を歪め、ジューダスはその事を聞きただ納得したように首を軽く縦に振る。
「・・・それら大爆発の条件をアッシュに私は伝え一つの質問をしました。貴方はルークと大爆発を起こす気はあるか、もしそうでないなら私が大爆発の問題を解決すると信じる形でルークと離れる形で活動しないかと」
そこで公爵は隣に座るアッシュの横顔に注目する・・・そこには静かに目を閉じ、何も言わないアッシュの顔があった。
「・・・答えはルークと離れながら動く、アッシュはそう答えてくれました」
ファブレ公爵が見守る中でアッシュの答えをジェイドが話の流れを継いで告げる。その横顔に波紋一つ浮かばない、アッシュを見ていたファブレ公爵は息子の意図を理解したように目を伏せる。



そのアッシュの答えが指し示しているもの、それは譲れない決意と意地だった。ルークを取り込んで生きるくらいなら自分が一人死んで、ルークを遺す。それが意地固になっていた自分がようやく認める事が出来たルークの為であり、事実を知り前に迷惑をかけた分これ以上ルークに荷を背負わせる訳にはいかないと考えた為である。



「そう、アッシュは言ってくれました。そしてアッシュは神託の盾を辞めた後はファブレ公爵が認めてくれさえすれば、公爵家に戻りたいとおっしゃっています。この場で公爵との話し合いをするのはまだ早いかと思われますのでどうなさるかは私は聞きませんが、とりあえずルークと距離を取りながら自分の居場所が分かるように動くと言ってくれています」
「それなら・・・シュザンヌに話を通す事からになるが、私はアッシュにファブレに戻ってもらおうと考えている。そのことに関しては問題ない」
「・・・そうですか」
ジェイドの続いたアッシュの行動指針を聞きファブレ公爵がたまらず、アッシュに対する想いを伝えるように戻れるよう計らう事を明らかにする。ジェイドは事実を一言で受け取るが、それを踏まえた話し方に切り替える。
「アッシュがファブレに戻ると言うのであれば、必然二人が近い位置で暮らす事になります。ですが二人が一緒にいることは大爆発の問題が解決しない限り、アッシュは心地よく過ごす事が出来ません・・・だからジューダス、貴方に常にルークの傍らにいてもらいたいんです。大爆発の解決の為に二人が離れる時ルークがどこかに行くか逆にアッシュがどこかに行く事になっても、貴方にルークの心の支えであってもらいたいと思っているんです」
「・・・何故支えなどと言う、そして何故僕がルークと共にいなければならん・・・?」
ジェイドから共にルークと暮らす事の核心を突く発言はまだ出ていない、そう理解はしているがジューダスは会話の中から出て来た支えという言葉にある種の不信を感じ先を促す。






・・・その後のジェイドの言葉がジューダスのある決意に導く物だと、知らず・・・







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