救う者と救われるもの 第二十一話

「その相当に少ない可能性を無視し、アッシュとルーク・・・二人が大爆発により一つになってしまったら、私達は過去に戻って来た意味の大半を失う事になります。私達はルークを助ける為に戻った、救える命を救おうとしたルークを助ける為に・・・現実には貴方がこうやって大詠師などを始めとした方々の命を助けるルークのサポートをしていたのですがね」
「・・・」
ジェイドらしい皮肉が混ざっているがジューダスはその声色からは嫌悪感を感じず、黙って続きを聞く。
「・・・話が逸れましたが、ルークの目的は果たされようとしています。ですがその結果の果てにルークが消滅するような事だけは避けねばいけません、それでは彼が戻って来た意味が無くなってしまいます。ローレライがルークに求めたのは彼の存在が確かに確立された状態で生きる事、そして今現在彼の生存を望む人はティア達だけでなくアリエッタやシンクといった本来敵対していた面々も望んでいます。現にサフィールも大爆発研究をしようとしています・・・私も、人の事を言えた義理ではありませんが」
そう言うと共に合わせていたように眼鏡に手をつけるジェイドとディスト。普段ならジェイドがディストをこき下ろすようなシンクロした行動なのだが椅子の場所の関係で互いが見えない事と、ジェイド自身があまりにも真剣に気持ちを吐露して集中している事で周りも気にすることはない。
「それに・・・彼自身も生きる事を熱望しています。そんな彼を黙って見殺しにすることなど、今の私には出来ません・・・だからこそ貴方に、ジューダスにお願いします」
本題・・・自然とジェイドの言葉から皆が身体を固くする。



「ジューダス、ルークとともに暮らしてはいただけないでしょうか?」



・・・だがその本題はあまりにも突飛すぎた。切り出されたその言葉に誰もが時が止まったように大きく目を開け静止した中、切り出された当の本人ジューダスが開けた目を細め怪訝な顔つきでジェイドを睨む。
「・・・話が見えないが、ジェイド。どういう意味で僕にルークと暮らせと言っている?」
当然と言えば当然な質問に皆はっと意識を取り戻す。何故、と周りも思う中でジューダスは早く真意を聞かせろと尚視線に力を込める。
(こいつ・・・どういう意図で言っている・・・?・・・どう転んでも僕にとってはあまり歓迎できる事態になりそうではないな・・・)
ジューダスは演説の終わりを無事に見届けたなら出来るだけ早々とオールドラントから消えようと考えている。ジェイドの様子から察して悪意はないようだが、その悪意の無さが一転した時空間に戻る事を心情的に引き止める言葉になるとジューダスは感じていた。
「意味・・・という事で言うならルークの相手をしてもらうためです」
「・・・相手をだと?」
「はい。先程の大爆発の条件においてまだ言っていない事があります。それが近い位置にオリジナル・レプリカの存在があることです」
「何?・・・それはどうしてなんだ?」
「例えの話ですが、極端な話貴方はここで出せるだけの最大の音量で叫び声をあげて今ユリアシティにいるルークにその声を届かせる事が出来ると思いますか?」
「無理だな」
その例え話に即答するジューダスはジェイドが何を言わんとしているか、それも理解できた。
「ありがとうございます。その例えに沿って言いますが大爆発を起こすにはある程度近い距離、しかも範囲は目視出来る程度の位置にいなければ大爆発は起きません。音素と化してレプリカのいる位置に飛ぶにしてもあまり位置が遠ければその実体は固体ではない音素、そのオリジナルの魂と呼べる音素はレプリカの元に行くまでに霧散することになります。元々は存在の不安定さから安定を求める為にレプリカを目指す現象、長い間音素だけでいられるはずもありません」
「その魂と呼べる音素が崩れ切らないように大爆発を起こすにはそれに見合っただけの近い距離が条件、か。だがそれだけでは僕がルークと暮らす事には繋がらんが?」
条件の更なる追加を聞きはしたものの、肝心の答えがまだ返って来ない。ジューダスは聞きたくないという想いもありながら先を促す。








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