救う者と救われるもの 第二十一話

「・・・確かに、貴方のおっしゃる通りです。ジューダス」
「「「・・・?」」」
ジューダスの声にジェイドは眼鏡を押さえていた手をどけ、ジューダスの方に顔を向ける。一同はなんの事かと理解できずにいたが、ジェイドは尚話を続けていく。
「その点ではすみません、陛下を利用する形でついて来てもらったことは。ですが是非貴方に聞いていただきたい事があるんです」
「それは、僕でなければならん理由があるということか」
「はい・・・少なくても貴方以外にこの話は切り出せません」
ジェイドの事の重大さを感じさせるその慎重な声色に、一同の緊張感は一気に増す。



ジューダスはそこまで聞いて、既にその話の核になるであろう人物を思い浮かべていた。その人物は・・・ルーク。

ジューダスは自分が優秀だと自覚しているわけではない、自分の立場と力量を自身で理解している為に二つを最大限に生かす手段を考える事が出来ている。

そんなジューダスはジェイドが自身に対し悪意的ではない気持ちを抱いているのは想像していたが、全てをさらけ出した今ジェイドなら意味もなく自分に接触してくる事はないことも理解していた。

ジューダスとジェイド、二者の間に繋がるもの・・・それは大まかに言えばルーク、その存在があったからこそ。ジューダスは付き合いの薄いジェイドがどうして自分を呼び出したのか、その自分とを繋ぐ存在ルークの事があったからだと感じていた。



「そのお話とは・・・今の話に出ました、ルークの事についてです」
正解。そう思い眉一つ動かさないジューダスとは対称的に、ファブレ公爵達は更に動揺する。しかしジューダスに話をするジェイドは切り出す声に、暗い響きを覗かせる。
「・・・今話した通り、大爆発を起こす理由は限定されたものです。アッシュもそれを分かっている今、むやみに大爆発に繋がるような事はしないと思われます・・・ですが、それでもまだ一抹の不安は残ります。七年の歳月を経ていたとしても大爆発は起こりえる現象、大爆発に繋がらないように行動したとしてもきっかけ一つでどうなるかはわからなくなります。いえ・・・もしかすると大爆発は今も緩やかにアッシュの身を蝕んでいる可能性も否定出来ません」
「なん、だと・・・!」
今尚の危機がある、そう聞いてファブレ公爵は愕然と呟く。
「とはいえそうであってもこの一年内にすぐ大爆発が起きる事はないと思われます。急激に体内の音素が失われるような事態はこれからはないと思われますので、少なく見ても数年単位くらいでは大爆発は起こらないかと」
「・・・だがそれ以降はもしもの可能性がある、ということか・・・」
ファブレ公爵の不安を感じる声にジェイドは補足を入れるが、それでも十年後以降に大爆発は起こるかもと言われファブレ公爵は両手で顔を覆う。
「・・・しかしそれもあくまでも可能性、相当に少ない可能性です。本来なら起こるはずがないと言ってもいいほどの」
・・・不確実な物は基本は信じないが起こった事実は無視出来ない、その上で事実を確率で照らし合わせ発言をする。そういったジェイドのスタンスから言うなら、大爆発も注意さえしていればどうという事ではないと言える物だろう・・・本来のジェイドなら。



だが続いたジェイドの声からは執念・執着・信念といったけして諦めない、強い力がこもっていた。
「ですが、私達はそういった理由で彼を失いたくはありません」
その声にジューダスはジェイドの顔を改めて見る。そこには遠い過去を見るような、ジェイドの・・・いや、ティア達の想いまでも全て代弁するような強い哀愁が存在していた。





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