救う者と救われるもの 第二十一話

「・・・いや・・・ちょっと待ってくれ、カーティス大佐・・・」
しんとした空白の時が数瞬だけ流れた、その流れを変えたのは顔を明かし困惑気味のファブレ公爵の声だった。
「いつ起こるか分からんというのはまだしも、大爆発は現に起こったではないか。それを何故起こらないかもしれぬと言えるのだ・・・?」
ファブレ公爵の声はある意味では的を得ていた、一度起こった事なのになんで今度は起こらないと言えるのかと。
「それは大爆発はあくまでもかなりの条件をクリアした上で起こりえる、限定的な現象と言える物だからです。その限定的な現象を引き起こす為の条件、その中の一つに互いの同調フォンスロットを開く事が考えられています」
「・・・何・・・?」
しかし専門家、それに加えて相手はジェイド。詳しく現象を話し出すジェイドにファブレ公爵は身を乗り出し、ジェイドの話に集中する。
「完全同位体という存在は普通のレプリカと違い音素振動数が全く同じ事からなる存在です。普通のレプリカでしたなら身体情報の違いのおかげでオリジナルがレプリカに同化するという事は有り得ないんです。普通のレプリカの体の音素振動数は例え似てはいてもオリジナルとは違う、事実上の別人となります。自らの欠けた身体情報を求めてレプリカの体を乗っ取るのが大爆発・・・ですが少なからず提供した身体情報が劣化現象を引き起こし、全く音素振動数が違う人間になる普通のレプリカでは大爆発は起こらない・・・ここまではわかりますか?」
専門的な知識を大分かみ砕いた表現でジェイドは説明し、一端理解出来たかの確認をとって話を止める。その声に疑問の声も出ず隣のジューダスもファブレ公爵も黙って首を振った事で、話の続きをしようと軽く首を縦に振る。
「・・・そういった事例が起こる確率は本来は相当に低い物です、事実アッシュは身体情報を抜かれても何事もなく七年間を過ごして来ました。身体情報を抜かれた際の体調不良を訴える事もなく。ですがアッシュがしばらくして、彼は自らが大爆発を引き起こしているのではと疑うようになりました。その行動をトレースしていくと、確かに大爆発に陥る為の要素をどんどんと満たしていることが確認できました」
「・・・して、その要素とは?」
「まずは先程も言いました、同調フォンスロットです。まず同調フォンスロットは自らの手で開けられず、同様に自らの手で閉じる事も容易ではありません。意識をすればチャネリングはシャットアウト出来たでしょうが、開いたフォンスロットまでも自力ではシャットアウトは出来ません。フォンスロットを開きっぱなしというのは体内にある音素を常に解放した状態という事になり、音素が体から失われやすい状況になります。つまり同調フォンスロットを開く事は自らの失われた音素をレプリカを乗っ取り補う、大爆発を引き起こしやすい状態を作る事になるんです」
「・・・むぅ・・・」
大爆発と同調フォンスロットの関係性、聞かされたその内容にファブレ公爵は理解を深めなんとも言えない唸り声を上げるが、その関係性にまいったと思っていたのは隣で苦い顔をしていたアッシュだった。






始めはルークの行方を知り自らの言葉を聞き入れて動くならそれで構わないとアッシュは思ってディストにルークの同調フォンスロットを開かせた。以降ザオ遺跡を経てチャネリングを繋いではルーク達の行方を時折気にしながら、ヴァンの動向を探っていた。その時のアッシュには時々の通信をするのは当然で、ルークを嫌ってはいてもそれが繋がりでもあった。

しかしその同調フォンスロットを開く行為がルークと大爆発を引き起こすきっかけとなり、果てには自らの暴走で自分が死ぬと思い込み一人エルドラントに突っ込んでしまった。






・・・自らの失態と無知、そして強がりが招いてしまった行動がルーク達に迷惑をかけた。
アッシュは大爆発の事を詳しく知らなかったとはいえ、大爆発に繋がる行動を自ら取っていた事。それが耳に痛い事だと知りながらも、黙ってジェイドの話を座して聞く。








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