救う者と救われるもの 第二十一話

・・・和平の為の会合、そして預言を排するための会合が終わりを告げた。
「皆さん、ダアトまで止まらず行かせていただきますので席に着かれてゆっくりされてください」
そして一日経った今、何人かの人員を乗せユリアシティから飛び立ったばかりのアルビオールの中でノエルは後ろを振り返りながらダアトまで行くと言うと前へと振り返り操縦に集中する。
・・・しかしそのアルビオールに乗っているノエル以外のメンバー、そのメンバーは奇妙な者達で構成されていた。
まず一人目はジューダス、続いて二人目はジェイド、そして三人目はアッシュ・・・まぁここまではアルビオールに乗って移動してもおかしくはない面々と言えよう。だが四人目からのメンツの取り合わせは少々奇妙としか言えなかった。その残るメンツ三人、そこに名を連ねているメンバーはファブレ公爵・モース・ディストというもの。
・・・何故この六人でアルビオールに乗っているのか、それには訳がある。



まずダアトで演説をするにあたり、場を整える必要と出来る限りのローレライ教団の信者をその場に集める必要がある。その役目を担うのは導師であるイオンかその次点の地位にいる大詠師のモースくらいしか、会合の場にはいなかった。故に先にダアトに行き現地での指揮を取るべきだと、どちらかが行くべきだという話が出たのだが・・・そこで立候補をしたのはイオンではなく、モースであった。



「私に・・・行かせてください」
「モース、いいんですか?貴方はまだ迷っているのでは・・・」
「・・・私はこれまで自分自身で選択をする、という事を放棄していたように今なら思えます。過去の自分はヴァンから出された第七譜石を偽物だと断じて、けして信じようとはしませんでした。ですが神の言葉が絶対の善ではないと示してくれたジューダス、ローレライが見せてくれた在りし日のユリアの姿・・・そして滅びを止めようと尽力するルーク様。これらは皆預言に詠まれたから起こした行動ではない、自身の意志に従った行動です・・・確かに私はまだ迷っています。だから私は預言に別れを告げるかどうかを決める為に、その演説に自身の意志で参加したいのです。預言に詠まれたからではなく私の意志で・・・」



・・・そのモースのあがきと言ってはなんだが、自身の考えをまとめたいという精一杯の声。その声にイオンはダアトでの準備をモースに任せる事にして、アルビオールに乗る事が決定した。

残りのメンバーも同様の流れで役目を負う為、アルビオールに乗って各地を目指している。ファブレ公爵はインゴベルト陛下の命を受け、キムラスカ内で演説をするための準備をするためとダアトでの演説の際に周りを固めるキムラスカ兵の選出をするためにダアトに飛んだ後キムラスカに向かう事になっている。ディストはモースの補佐をするために六神将の中から誰かを付ける方がいいのではという話を受け、モースとの繋がりもそこまで浅くなく雑務に長けたディストが付く事になった。

そしてジェイドもマルクトへと演説の事を説明に行くという事になったのだが、それは本来フリングス少将が行く予定だった。その役目をフリングス少将がピオニー陛下に命じられた時、ジェイドは願い出たのだ。自分が行きたいと、そしてそう言った後にピオニー陛下に耳打ちをした。ほとんど一瞬の間の出来事だったので、気付けた者はほぼいなかったが。



「・・・ジューダス。すまないがお前もマルクトに行ってはくれないか?」
「・・・は、何故でしょうか?」
「お前を迎え入れたいと俺は本気で思っている、だからこそマルクトを見てもらいたいと思ってな。なに、行った後すぐにマルクトに来いとは言わんから観光がてらジェイドとグランコクマに行ってくれ」



最後はもはや行く事が決定項となっているピオニーの願いに、ジューダスはアルビオールに乗る事を了承した。

・・・了承した理由が言い出したら中々聞かないという事が原因ではない、その言葉が出たのはジェイドの耳打ちからだとジューダスは確信していたからだ。








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