「そのような先の見えない世界を作るくらいならいっそ復讐のみに目を向けて自らの手で世界を滅ぼす、その方がより一層合理的だろう。何せお前の目的は預言への復讐だ、後の世界を気にする事なく復讐を果たし満足して一人死ねばそれで済む話だ・・・だがお前はそうはせず、レプリカ大地を持っての復讐を成し遂げんとした。その事実が指し示すのは・・・お前が‘預言’を忌み嫌っていただけで、‘世界’を残したいと考えていたという事ではないかと僕は考えている」
「・・・・・・え？」
「・・・！」
話の内容が一気に飛躍したことでルークは疑問符がついた声を自然と上げるが、ヴァンは人知れずその弁を聞いてうっすらと柳眉を押し上げ目もかっと見開かせていた。
「お前が預言を忌み嫌っているのは事実、レプリカを軽視しているのも事実。だがお前はあえてレプリカが住まう世界を作ろうとした。穿った見方をすれば預言が詠まれる事のないレプリカを預言漬けのオリジナルとすり替える事で預言脱却を果たしたのだという皮肉を込めているようにも思えるが、その世界を作ろうと考えたという事が・・・僕は」



「ヴァンが世界を救いたいと考えていたのだと、思えてならなかった」



「「「「・・・！？」」」」
「・・・っ！」
そのジューダスの言葉は最大の衝撃をルーク・ヴァン側どちらも関係なく与えていた。今までの過程が全て救い？という疑問を持つのがルーク側、ヴァン側は自身にも想像だにしていない言葉への唖然・・・
一同が同意も反論も唸り声すら出せない異様な空気の中、ジューダスは辺りを見渡しながら丁寧に話し出す。
「皆様もご覧になられたでしょう、エルレインの目的を。あの女は私達と目指す物が相入れなかった為に敵対しましたが、私達に倒される最後まで・・・人の幸福を実現しようとしました。ただ人類全てを殺して新たな人類を作ろうという、人の生き方全てを拒否したやり方は許せる物ではありませんでしたが」
「「「「！！」」」」
その言葉にヴァン達を除いた一同の顔がはっとしたものとなる。
「成程・・・方法や経緯、それに動機こそ違えど根幹にあるものはエルレインと同じように人のいる世界の存続・・・ヴァン謡将の作る世界は確かに預言からの救いと言えなくもないですね、まぁ私達からすれば滅びも同然ですが」
その皆が行き着いたであろう結論をジェイドが独り言のように代弁し、最後に彼らしさに彩られた言葉で締め括る。



・・・今ジェイドから出された結論に全員が同じ考えを持てたのはひとえにジューダスから見せられた記憶のおかげである。エルレイン、そしてフォルトゥナは人類の幸福を神からの目線だけではあるが真に想っていた。

その記憶を今ジューダスが話したヴァンの事と照らし合わせれば照らし合わせる程・・・一同はそう思えるようになった。前ならヴァンが救いと言ったとしても復讐に取り憑かれているものだと、正義はないと頑なに思っただろう。



「・・・ヴァン。お前の行動は褒められた物ではないし、僕もそのやり方は認めん。そしてその世界を実現させたとしても・・・お前は神ではない、ただの人間だ。ただの人間が神のように人を導き続け、生き続けるはずもない。つまり遠くない世界でお前の作った世界は崩壊する、お前がいなくなったことでな」
ジェイドの後を受け、ジューダスは自らの全てをさらけ出しその全てを持って全身全霊の言葉を紡いでいく。
「今この場にいるルーク達もそれを許しはしない、預言が無くなった後の世界があることを知っているのにむざむざと世界を壊す事など許しはしない。それにお前は僕の事を夢想家だと言ったが、ここにいる全員が役割を果たしてお前を止めれた。そしてこれから目指すのはもうやり遂げた事のある預言脱却だ、何を夢を見ていると言える？実現可能な事は夢想などとは言わん、ただ状況が少し変わっただけのことだ」
大袈裟な過信ではなく確かな自信、更にジューダスの言葉にはルーク達への信頼がかけられている・・・
「それでも納得出来んというのであれば一度だけでいい・・・ルーク達と預言を共に覆す舞台に付き合って欲しい、そこで満足した成果ではなかったというならもう一度レプリカ大地計画を発動しても構わん」
不穏な発言、だがジューダスのその声に異論を挟む存在は誰一人いなかった。
もうヴァンの説得はジューダス以外になしえる存在がいないというのが一同の心に去来していたのもあるが、それ以上にヴァンのことまで考えた最大限の歩み寄りでもあったからだ。その言葉がもしうまくいかなかった場合、自分達でお前を倒して預言廃止させるようにすると先程見せた悲しい男の決意を無駄にしないためのジューダスの考えだと。



「だから・・・頼む。ルーク達に協力してくれ」









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