救う者と救われるもの 第二十話

二人はただじっと身じろぎ一つせず、光の中から皆が出て来るのを各々の想いで待つ・・・

そして・・・その瞬間は訪れた。光は続々と部屋にいた者達から離れ、ローレライのもとへと戻っていく。皆が意識を取り戻したことで、ルークは本能的に全員の顔を確認するよう室内を見渡して行く。



まず左の方に陣取るキムラスカ側にいた陛下にファブレ公爵はけして悪意的ではないが、苦い物を噛み締めたような顔をしてジューダスを見ている。ナタリアにセシル少将は程度の違いはあれど同じように同情を顔に宿していて、ナタリアにいたっては涙すら浮かべそうな程だ。アスターはジューダスの事を真剣にただ見つめている。

奥にいるダアト側を見てみればイオンはナタリア達と同じようになっており、苦しそうにしている。ディストは眼鏡を押し上げる動作で顔はよく見えていないが、顔を斜め下に背けた時に見えた横顔から暗い・・・暗い物があるとルークにも分かった。モースとテオドーロはキョロキョロと落ち着かず、戸惑いを見せている。

そして右側マルクトに視線を向ければピオニーとジェイドはただ眉間にシワを寄せ、目を閉じている。フリングス少将は毅然とジューダスを集中して見ている。ティアにガイにアニスは目を伏せんと、気まずげにしている。アッシュはふとルークと視線がかちあい、いらだたしげではなくどうとも言えない表情で視線を反らした。表情も視線がかちあった時のままだったので、恐らく衝撃が予程強かったのだろう。

そこから更にヴァン達を見たルークが目にしたのは・・・何か全てを悟ったように目を細め、まだ抵抗をしようとした覇気すらなくした姿だった。それも三人が三人共。






・・・少なからず見ても表立って悪意をジューダスに持った感情は感じられない、そんな面々の様子にルークは内心少しだけホッとしていた。
ふと後ろにいたシンク達を見ると、アリエッタとフローリアンは互いの手をしっかりと握りフルフルと震えながら下を向いている。シンクは二人を少し気を使うように視線を送りながらも、握っている拳には少しの震えが見られる。
・・・ジューダスの事実をあらかじめ知っていたのだから心に来る衝撃は少なかった、という訳にはいかなかった。寧ろ知っていたからこその自らの想像とは違いのある事実に、ギャップに悲しさをより一層強めたのだ。いくらなんでも全く見た事がない世界のジューダスの話だけで全てを把握しろというには、無理があるだろう。
(そうだよな・・・)
辛そうにする三人にルークは同情しつつも、前を向く。ここで大丈夫かなどと聞いていけるような状況ではない、何せこれはジューダスと自分とローレライが起こした出来事だ。喜怒哀楽のどの感情をぶつけてきてくれていい、ただ無事に全部終わるまでは構ってやれない・・・自分はこの場でオールドラントだけではなく、ジューダスの行く末も見守りいざという時には行動しなければならないのだから・・・
ルークは場の雰囲気に本格的にジューダスの命運もかけた時が始まるのだと考えたからこそ、余裕が無くなっていくのを自覚していた。だからこそシンク達からの責めなら後で受けると考え、何も言う事なく心をジューダスを助ける為の気概へと変えていったのだ。






「・・・皆様、私の記憶はご覧いただけたでしょうか?」
ルークが見守る中、ジューダスは沈黙の支配する会議室に自ら言葉を放り込み会話に繋げんとする。
「・・・うむ。しかと見させてもらった。リオン・マグナスと呼ばれしそなたの人生を」
「・・・あんなもん、作ろうとして作れる話じゃない。お前は別世界の人間・・・それはよく分かった」
「・・・ですが、貴方の生き方はそこまで明かす必要はありませんでした。貴方は何故・・・この世界の為にこうまでも力を貸していただけるのですか?」
インゴベルト・ピオニー・イオンと三勢力の主が揃って順々に声を上げる。その声に非難の気はないが、そのかわり強い疑惑が場にいる全員の代表としてイオンから出されて来た。






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