救う者と救われるもの 第二十話

「幸せか・・・だと・・・?」
「・・・・・・」
消え入りそうな声だがジューダスにははっきりと聞こえるが、その力の無さにジューダスはルークに何故そんな事をと問う。だがルークは質問に答えず、目を閉じて黙り込む。



・・・何か別の言葉であればルークは答える事はない・・・求めるのは幸せか否かの二択のみ。それ以外にルークはジューダスの言葉を求めてはいなかった。ジューダスの真意を知りたい、ごまかしはいらない、だから・・・今この場にいることは幸せなのか・・・?



全てを知った上でジューダスの本音を知りたい、全く態度を変えないルークを見てジューダスはその口を開いた。
「・・・ホントの事を言えと言ったな?なら答えてやる・・・僕にもはっきりとはわからん」
「・・・え?」
待望の答えは予想にない三番目、しかもどう考えをまとめればいいかわからない曖昧なもの。たまらずルークは驚きと呆気に取られ、目を開けて緊迫感の抜けた声を出す。
「フン・・・冗談だ」
「!なっ・・・!?」
すると眼前には余裕と不敵な笑みを浮かべたジューダス、瞬間訳がわからなくなりルークは表情を定める事が出来ず百面相になってしまう。だが流石に茶化されたと感じたルークは怒りを感じて声を荒げる。
「っジューダス!」
「落ち着け、冗談だと言っただろう。それに僕のこの顔が不幸そうに見えるか?」
「・・・それは、そうは見えないけど・・・」
落ち着いた返しにルークは勢いを削がれるが、でもと言いかける。強い姿を見せるジューダスだが内心はどうなのか・・・マリアンを人質に取られ助け出す事が出来なかった時にシャルティエ以外に見せなかったあの弱い姿、あの自己嫌悪した姿をスタン達との対峙時には全く感じさせずジューダスは毅然と振る舞っていた。
もしかしたら表面上は、と思っているルークのはっきりしない声にジューダスは言葉を瞳を向かい合わせ笑みを消して想いとともにゆっくりと出す。
「一つだけホントの事を言えと言ったからには、今度は冗談ではなく本音を言うぞ。僕は不幸ではない、それだけは確かだ」
「・・・じゃあ幸せ、なのか?」
確認するよう静かに聞くルーク。
「正確に言えば・・・幸せを掴む途中といった所だな」
「途中・・・?」
「・・・認めたくはないことだが、僕はこう言った厄介事を放ってはおけんようになってしまった。あのカイルのせいでな。だからこそヴァンを、預言を放っておくということが僕には出来ん。無事に世界が滅びから命運を変えなければ幸せ、とははっきり言えんな。僕の幸せはそこからだ」
「・・・そうなんだ」
ある意味で言えばジューダスらしい考えの答えにルークはそれ以上何も言えなくなる。最後まで徹底した念の入れよう、自分もそうあるべきなのだと考えてしまう。
だが不幸ではないと聞けた、幸せを掴む途中だと聞けた事がルークは少しだけ嬉しくその感情は微細に声に現れていた。
(でも・・・ジューダスは師匠達を止めた後はどうするのかな・・・?)
だがルークはその言葉に嬉しさとは別の疑問も生まれていた。確かに幸せを掴む事が重用なのはよく分かる、だが明快な幸せを掴んだ後のビジョンが全くジューダスから語られてはいない・・・
(その後はどうする・・・)
「だがその幸せも数時間後に控えた会合で僕たちがどうヴァン達を説得するか、そして・・・僕を陛下達が認めてくれるか、だ」
「・・・どういう事?」
ルークがその事を質問しようとする寸前、ジューダスから一つ音量の落ちた覚悟の感じれる声が届いてくる。ただならぬ雰囲気を感じたルークは自分の質問を後にしようと思い、その意味をジューダスに問う。







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