救う者と救われるもの 第二十話

「ヴァン師匠のやろうとしたレプリカ大地計画は・・・エルレインのやったことと同じ、いや結果を考えたらフォミクリーで生み出されたレプリカの人達も下手すると全部死ぬ可能性がある・・・」
神という存在と神になろうとしている存在・・・その違いにルークはヴァンの計画が所詮人が起こした物なんだと感じてならない。



悠久の時を死ぬ事なく人類を全て管理していたエルレインは善くも悪くも人類の在り方を絶えず示して来た。

だがヴァンの計画は違う。レプリカ大地計画がもしまともに成功したとしよう・・・大地をレプリカとして人をレプリカで代用した、ヴァンからすれば役割を持って生み出させたレプリカを意味もなく放置していいわけがない。作った訳がなくなるのだから。ならばこそレプリカにその役割を示す為ヴァン達が道を示さねばならない。

しかし計画性を持ってレプリカ達の人員管理及び住居や食糧、更には学を学ばせ自我を身につけさせる為には相応の時間が必要になる、それこそ数十年単位の。人間であるヴァンの年齢は二十八歳、持って人間はせいぜい七十八十くらいで活動的に限界が来る。つまりヴァンの意志を継ぐ者でも育てなければまずレプリカ達の発展などありえないのだ。

しかしレプリカを道具として見下すヴァンでは被験者の誰かと契りを結んで産んだ子でも、まともにレプリカを同等の人と見る事などないだろう。むしろ子供である分ヴァン以上にレプリカを蔑むだろう。下手を打てば奴隷化したレプリカは主を失った後、生きる標を無くして無気力になる可能性もある。隷従しか出来ないレプリカでは尚更だ・・・その点エルレインは平等に、いつまでも同じように人類に接するだろう。

どちらがいいのか優劣をつけれる訳はないが、それでも先を見据えればその行動がもたらすものはそこに存在する人全てを否定するやり方。それは共通してルークが自信を持って間違っていると言える物だった。






「・・・・・・ジューダス。すごいよ、ジューダス・・・」
改変された世界で再びエルレインと相見えたカイル達は覚めない夢の中をさ迷い、ジューダスもその中へ閉じ込められた。その中での光景にルークはジューダスのすごさを改めて感じていた。
そもそもそんな世界に閉じ込められたのはジューダスが・・・リオンであることをエルレインに明かされた瞬間の隙を突かれてのことだった。真実を言われ何も反論することのなかったジューダス・・・ジューダスはカイル達との旅を続ける時点で決心をつけていた、真実を知る事があれば黙って認める事を。
その夢の中でジューダスが見ていたのは・・・スタン達との別れの時。何回も繰り返される悪夢・・・手を取りたくても取れない、何故ならマリアンの為に選んだ友との断絶の瞬間。シャルティエに話しかけるジューダスからすれば確かに悪夢なのだろう。
一通りあの場面を見たジューダスはそこに現れたエルレインの愛と名誉の両方を取る、自らの手を取る道を何故拒むとの問いにまやかしの未来を否定した。
「僕は・・・ジューダスだ!」
はっきりと拒絶を示すその一言に込められた想いはルークを感服させた。自らの存在をリオンではなくジューダスとして認めた上で神の与えんとする幸せをまやかしと言って否定するその意志。過去の自身をありのまま受け止め、それで尚今の自分までも受け入れ、自分の意志を過ちだったとより良い結末を求めるような事をせず受け入れていた事。
全てを受け入れてジューダスのように毅然と意志を迷いなく告げるのは自分にはまだ無理だとルークは1番よく理解している、例え表向きであろうとも。迷いながら自分は進んで行くしかない・・・まだ未熟な自分、その生き様にルークは敬意を感じざるをえなかった。







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