救う者と救われるもの 第二十話

「英雄とは過去の功績に対して公衆から与えられる称号。自らなろうとするものではないし、ましてやなりたいと思ってなれるものでもない」
カイルに現実を教える言葉はルークに寂漠の想いを植え付ける。
自分がいなくなった後の世界を知り、英雄と持て囃されているかつての仲間達。もしリオンがあの場からスタン達と一緒に海底洞窟を脱出して行動を共にしていたなら・・・同じように英雄と呼ばれていたかもしれない。しかしジューダスは敢えて自らを反逆の徒へと身を落とした。それは英雄だとかそういったモノになりたいという打算で起こした行動ではない自らの心に従って起こした行動だ。
リオンの言葉は心と結果が望んでついてくる、都合のいいものがあるはずがないと言っているようにルークには聞こえてならなかった。



「えっと・・・ジューダスって名前はカイルがつけたんだ・・・・・・・・・・・・ジューダス、カイルが心配だったんだな」
カイルから名前を聞かれてリオン・マグナスと名乗る訳にもいかず、好きに呼べばいいと言ったリオンにカイルは突発的にジューダスと呼び名をつけた。
一時カイル達から身を離したジューダスはやはりスタン達の息子のカイルを放ってはおけず、カイル達の後を追って一人旅をした。紆余曲折、色々ありはしたもののカイル達の苦境を見過ごせなかったジューダスはカイル達を助け、カイルから仲間の誘いを受けた。心中複雑な物はあれどジューダスはカイル達との旅を続けて行った・・・
その旅を続けていく中ではっきりカイルの敵となったエルレインの起こした未来への時間移動、カイルともう一人の神の分身のリアラと離れ離れにされた中でロニと二人でカイルの事を表向きは不遜にしながらも心配していたジューダス。ロニと二人でいた時に世話になったナナリーがカイル達を連れて来た時には茶化された時、少し慌てた様子を見せていた。
ほほえましい物でもある一時、ルークは目に見えて態度が軟化してきたジューダスに少しだけ嬉しさを感じていた。



「・・・・・・え?これ・・・は・・・」
本来ありえない出会い、カイル達五人。そんな五人はカイル達の時代にリアラの力で戻り、エルレインの行う世界救済を阻止すべく行動を起こした。エルレインを執拗に追うカイル達、そんな中でカイル達は再びエルレインの起こした時空移動・・・いや正確に言えば後に判明した、歴史改変に巻き込まれた。



・・・その改変後の世界で見た物に、ルークはジューダスの伝えたかった物がこれであると理屈抜きに感じ取った。



「・・・・・・ドームの中の生活が全てって・・・レンズがなきゃ生きていけないって・・・神の管理がないと生きていけない世界だなんて・・・」
改変された世界はオールドラントの世界から見ても、ルークの視点から見ても異質そのものだった。
人は外界の空気を毒とし、額につけたレンズがなければ徹底して清浄化されたドーム状の街から一歩も出る事は出来ない。そのドームとやらは神の力の管理を持って形勢されている。
そこでルークはジューダスの言葉を思い出した。『神の作った箱庭』・・・
「あぁ・・・ジューダスはこの世界の事を言っていたんだ・・・」
確かにその表現がよく似合う、似合っている・・・そう感じてしまっただけにルークはこの世界を許せる気にはなれなかった。
確かに穏やかで平和そのものといった表情をドームの人達はしている、だが結果が平和でありさえすればそれでいいという姿勢がルークは嫌だった。過程で出る犠牲はまるで砂場で作った砂人形を壊すかのように、気に入らなければ気に入るまで作り直すというやり方。まさしく神の作った箱庭、自らの思った成功以外認めない世界・・・
人の作った未来は過ち、神の作った未来こそが唯一無二。全てを賭けて世界を救わんとした自分すらが否定される。昔のルークであれば神の救いを享受していたかもしれなかったが、人を救うと言いながら人の全ての想いを無視した独りよがりの救いを今のルークは許せる気にはなれなかった。



そして改めてヴァンの計画を認める訳にはいかないとも思い・・・









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