救う者と救われるもの 第二十話
「僕はお前のように図々しくて脳天気で馴れ馴れしい奴が・・・大嫌いだ・・・・・・だから、後は・・・任せた」
言葉と想いは完全に裏腹、そしてその裏腹の想いを最大に込めスタン達に後を託してリオンはレバーを下に下ろす。
・・・スタン達を乗せた昇降機はスタンのリオンを呼ぶ声を聞き入れず、無感情にただ上に上がり続ける。そのスタン達を見送ると、リオンは浸水を始めた洞窟の中シャルティエを抜いて彼ららしい最後の会話を繰り広げた後、全てを悟り切った穏やかな顔で洞窟の岩壁に体を預け・・・
「・・・・・・ジューダスゥ・・・」
ルークはただ自らとは全く違う死の在り方に、意気を削がれていた。全てを享受して死ぬという点で言えば同じと言えるかもしれないが、あまりにもその環境の違いに悲しみが浮かんでいた。
自らの矜持を捩曲げられ、その意志を否応なしに手駒として使われる。ヴァンのように偽りの優しさを持ったものではない、ただ単純な恐怖による恐喝だ。暗示でアクゼリュスを崩落させられる直前まで好意を持つ態度を取っていたヴァンと違い、より直接的な捨て駒としての扱い。そして何よりもリオンの人生の中でも数少ない、彼自身が無意識に認めていた人物達との決別を二重の意味で迫られた事・・・一度目はヒューゴ達の足止めの為の戦い、二度目はそんな自分に歩み寄ってくれたスタン達を助ける為に身を差し出した事・・・
こんな・・・こんな悲しい生き様という物をルークは知らなかった。救われない生き様、なのに全てを悟ったあの天上を見上げる安らかな表情・・・
だがリオン、いやジューダスの記憶はこれで終わりではない。寧ろジューダスの伝えたかったモノはここからが本題だった。
「・・・・・・えっ?これは・・・この人が、神の分身・・・・・・・・・あっ、これがカイル・・・スタンって人とルーティって人の子供・・・」
悲しみにくれるルークを気遣う事なく記憶はただ流れてくる。その中にエルレイン、そしてカイルとの出会いがあった。
死の世界とでも言うのか、周りが全く見えない黒い世界に漂っていたジューダスに突然神々しい光をまとった女性、エルレインがその光で死の眠りについていたリオンの目を醒ました。
「お目覚めですか?リオン・マグナス。再び貴方に生を与えましょう、協力していただければ貴方の望む幸せをあげましょう」
確かに一種のカリスマを感じはする、だが人間味に乏しい。リオンに語りかけるその口調はいい意味でも悪い意味でも穏やか過ぎて、ルークは話を聞いてたのもあいまってエルレインに少ししこりを覚えていた。
とはいえリオンも一朝一夕にその言葉に頷く事はなかった。だがエルレインはそんな事を構わずリオンを再び生き返らせた状態で、現世へと戻した。・・・自分が死んで十八年後の世界、リオンが真っ先に行った事はリオン・マグナスであった時の服装を今の服装への変更と自らの顔を隠す、ルークの見た事のない竜骨の仮面の調達であった。
それらの調達を終えたリオンが取った行動は・・・かつて自分がいたヒューゴ邸、そこの変わり果てた地下室で世捨て人のようにただじっとハンモックに寝転がる事だった。世界が十八年も自分の知っている時から変わった事に、何かエルレインの為にも自分の為にも行動を起こそうという気が起きなくなったのだろう。・・・その姿勢にルークはディストに話をした時の様子の変貌を思い出していた。実際にそう体験した・・・その重みから来る言葉は芯に来る、ルークは改めてディストに与えた衝撃という物がどれほど身を削ったのかと実感した。
「・・・アハハハハハッ!!」
そんな生活に身を投じてそんなに時間も経っていない時、寝ていたリオンの耳に地下牢として使われている室内に似つかわしくない笑い声が届いて来た。何気なしに会話を聞いていけば何の疑いも無く英雄になれると信じてやまない、純粋無垢な声。その声にエルレインからの申し出を自らへの戒めを含め出来るはずがないと話してやろうと、リオンはハンモックから勢いよく飛び降りた。
・・・そこにいたのはスタン達の面影を残した少年カイルと、兄のような雰囲気を出す青年ロニの二人だった。
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言葉と想いは完全に裏腹、そしてその裏腹の想いを最大に込めスタン達に後を託してリオンはレバーを下に下ろす。
・・・スタン達を乗せた昇降機はスタンのリオンを呼ぶ声を聞き入れず、無感情にただ上に上がり続ける。そのスタン達を見送ると、リオンは浸水を始めた洞窟の中シャルティエを抜いて彼ららしい最後の会話を繰り広げた後、全てを悟り切った穏やかな顔で洞窟の岩壁に体を預け・・・
「・・・・・・ジューダスゥ・・・」
ルークはただ自らとは全く違う死の在り方に、意気を削がれていた。全てを享受して死ぬという点で言えば同じと言えるかもしれないが、あまりにもその環境の違いに悲しみが浮かんでいた。
自らの矜持を捩曲げられ、その意志を否応なしに手駒として使われる。ヴァンのように偽りの優しさを持ったものではない、ただ単純な恐怖による恐喝だ。暗示でアクゼリュスを崩落させられる直前まで好意を持つ態度を取っていたヴァンと違い、より直接的な捨て駒としての扱い。そして何よりもリオンの人生の中でも数少ない、彼自身が無意識に認めていた人物達との決別を二重の意味で迫られた事・・・一度目はヒューゴ達の足止めの為の戦い、二度目はそんな自分に歩み寄ってくれたスタン達を助ける為に身を差し出した事・・・
こんな・・・こんな悲しい生き様という物をルークは知らなかった。救われない生き様、なのに全てを悟ったあの天上を見上げる安らかな表情・・・
だがリオン、いやジューダスの記憶はこれで終わりではない。寧ろジューダスの伝えたかったモノはここからが本題だった。
「・・・・・・えっ?これは・・・この人が、神の分身・・・・・・・・・あっ、これがカイル・・・スタンって人とルーティって人の子供・・・」
悲しみにくれるルークを気遣う事なく記憶はただ流れてくる。その中にエルレイン、そしてカイルとの出会いがあった。
死の世界とでも言うのか、周りが全く見えない黒い世界に漂っていたジューダスに突然神々しい光をまとった女性、エルレインがその光で死の眠りについていたリオンの目を醒ました。
「お目覚めですか?リオン・マグナス。再び貴方に生を与えましょう、協力していただければ貴方の望む幸せをあげましょう」
確かに一種のカリスマを感じはする、だが人間味に乏しい。リオンに語りかけるその口調はいい意味でも悪い意味でも穏やか過ぎて、ルークは話を聞いてたのもあいまってエルレインに少ししこりを覚えていた。
とはいえリオンも一朝一夕にその言葉に頷く事はなかった。だがエルレインはそんな事を構わずリオンを再び生き返らせた状態で、現世へと戻した。・・・自分が死んで十八年後の世界、リオンが真っ先に行った事はリオン・マグナスであった時の服装を今の服装への変更と自らの顔を隠す、ルークの見た事のない竜骨の仮面の調達であった。
それらの調達を終えたリオンが取った行動は・・・かつて自分がいたヒューゴ邸、そこの変わり果てた地下室で世捨て人のようにただじっとハンモックに寝転がる事だった。世界が十八年も自分の知っている時から変わった事に、何かエルレインの為にも自分の為にも行動を起こそうという気が起きなくなったのだろう。・・・その姿勢にルークはディストに話をした時の様子の変貌を思い出していた。実際にそう体験した・・・その重みから来る言葉は芯に来る、ルークは改めてディストに与えた衝撃という物がどれほど身を削ったのかと実感した。
「・・・アハハハハハッ!!」
そんな生活に身を投じてそんなに時間も経っていない時、寝ていたリオンの耳に地下牢として使われている室内に似つかわしくない笑い声が届いて来た。何気なしに会話を聞いていけば何の疑いも無く英雄になれると信じてやまない、純粋無垢な声。その声にエルレインからの申し出を自らへの戒めを含め出来るはずがないと話してやろうと、リオンはハンモックから勢いよく飛び降りた。
・・・そこにいたのはスタン達の面影を残した少年カイルと、兄のような雰囲気を出す青年ロニの二人だった。
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