救う者と救われるもの 第二十話

「お前は自らの記憶を僕を始めとした、協力を申し出させる為に何人かに明かした。それと僕は同じ事をするだけだ。それだけのことだ」
「それは・・・っ・・・あれは、あんな悲しい事がもう二度と起こって欲しくないから俺の記憶で分かってくれるなら明かしたいって思っただけで・・・だからって!ジューダスの過去をティア達に教える事は別の事だ!」
自らのは無自覚な捨て身の暴露、過去を明かす事が必要とあらば痛みなど気にしない。いや正確に言えば自分は世界と大事な人達を救えるならば、全く心は痛まない。
少々言葉に詰まり自らの心に浮かんだその結論とジューダスの決断を照らし合わせたルークは、声を荒くして自分とは違うと決断を否定する。それは必要過多な自己犠牲で、自覚する心の痛みになると。
「いいや、違わないさ。僕はこの世界を救いたいと思っている。だからこそヴァン達にも知ってもらわねばならんのだ。レプリカ大地計画の行く末に見られる一つの擬似的な可能性を」
「・・・え?」
話が少し飛んだ、ジューダスの話し口にルークは一瞬戸惑って荒い呼吸を止める。その隙間を塗って、ジューダスは口を開く。






「「・・・ではローレライ、僕の記憶を」」
『『承知した』』
会議室にいたもの全員がジューダスの頼みを受け、再びローレライが第七音素を自分達に向けて出す姿を目撃する。とほぼ同時に、全員はその姿を包まれた。ほとんどの者が姿を光に消した中、遠い何かを見るような寂しい瞳を無自覚で浮かべているジューダスと力を使ったローレライ、そしてフラッシュバックする映像に頭を下げ泣くまいとズボンのふともも辺りを強くにぎりしめるルークだけがその姿を残していた・・・









「・・・うっ、ここは・・・もしかしてジューダスの記憶を見せられるのか・・・?」
瞬間光に包まれ、目を覚ませばそこは見知らぬ空間・・・ローレライから過去を見せられるという事に気付いたルークはフヨフヨした浮遊感の中、キョロキョロ辺りを見渡す。
「・・・うぁっ!?」
突然襲い来た頭痛、久しぶりだがやはり慣れないこの感覚にルークは顔を痛みで歪める。
「・・・・・・これは・・・・・・これが、ジューダスの記憶、なのか・・・?」
次々と流れてくるジューダス、いや当時はエミリオ・カトレットと呼ばれていた頃の記憶。
幼少時より父親との接触はほとんどなく、懸命に父親を振り向かせようと頑張るエミリオ。しかしその父親は全く息子を省みる事がなく、周りの大人達はそんなエミリオを見て父親のヒューゴの子供というだけの事はあるとおべっかの要素しかない賛辞だけしか言わない。そんな中エミリオは大昔の時からあったという使える素質を持った者以外は声も聞く事が出来ないという生きた剣ソーディアン・シャルティエ以外に心を開く事が無くなっていく。
「・・・・・・この人がマリアンさん・・・リオン・マグナス・・・?」
かつての自分以上に不憫とも思える立場、そうルークが感じた所にエミリオがよく見ていた母親の肖像画の面影を見せるマリアンという女性が姿を現した。
ある日屋敷に新しく雇われた一人のメイド、マリアン。彼女は他のメイドと違いエミリオの頑なな心を優しく、ただの一人の人間として認めた。その暖かさにエミリオは決心をした、自らの存在を確立させマリアンと対等な位置につける為にリオン・マグナスと名乗る事を。
「・・・・・・えっ!?・・・これ・・・これがスタンって人達との戦い・・・」
リオン・マグナスと名乗るようになってしばらくした時にふと舞い込んだ盗掘者捕縛の命、それがスタン達との出会いだとルークは認識したが更に先を知って愕然とした。
神の目と呼ばれるレンズ奪還の任を終え穏やかな時を過ごしていたリオン。だがその平穏をヒューゴは壊した。圧倒的な力でリオンを押さえ付け刃向かえばこうだと自らの生き甲斐でもあったマリアンを人質に取られ・・・誰も助けを呼べない。万事休するその状況、リオンは・・・ただ一人の為に、想いを貫く為に敢えてヒューゴに膝を屈する事を選んだ。どのように罵られようとマリアンを助ける為に、飛行竜に乗ったヒューゴ達を追って来たスタン達と戦う事を選んだ。
「・・・こんな・・・こんな・・・こと・・・」
いかにリオンが強いとはいえ多勢に無勢、近しい実力になったスタン達に敗れた後のリオンを見てルークは顔を青ざめた。
リオンの孤独の決意をスタンは何故一緒に悩まなかったと叱咤した、そのうえで尚共に行こうとリオンにスタンは手を出した・・・しかし運命は残酷だった。手を握ろうとした瞬間海底洞窟がヒューゴの起こした事変により崩落・・・生き残るには昇降機に乗らなければいけない、だがその操作レバーは誰か一人が昇降機から離れた位置で操作しなければいけない・・・リオンは何も言わずレバーへと向かった。








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