救う者と救われるもの 第二十話
「絵空事とお前は言うが、人の歩みを決めるのは人自身。ユリアが預言を残したのは後の人々に滅びの命運を避けて欲しいと願ってのこと、その預言をどう活かすかは人自身だった。確かに預言はその存在の意味を捩曲げられ、繁栄を約束したものと曲解された意図で取られてしまった。だがそれでも人の歩みを預言で決めて来たのは人自身、故にその歩みを滅亡から遠ざける為に預言を用いる事が出来るのも外ならない人しかいない」
「それこそ絵空事に過ぎん。貴様なら分かるであろうに、この世界の歪みそのものである預言を変えるには一度全てを壊すしかないと」
「しかし歪んだ世界を変えようとしたお前はルーク達に敗れ、その後の世界は預言は無くなり人自身の納めるという未来がある。それはジェイド達がいることから全く出来ん事ではないと、お前ももう気付いている・・・いや、もう預言の示す未来は変わっている。それに気付けん程愚かではないだろう?」
「・・・それも私の行動があってこそ、世界は預言を詠む事をようやく止めただけだ。愚かな人は危機を身に染みて理解せねば到底意識を改革するには到らん。・・・だから私は預言を憎み、これからも人類全てを消す事を諦める事はない。それだけのことだ」
ここで初めて本心を明かしたような、ヴァンの寂しい決意が垣間見えた。
・・・ヴァンとて突拍子もなく世界全てに絶望するわけもないし、その世界にも大切にしているものはある。唯一の妹であるティアだけは敵として相対しているときであっても気遣いを忘れようとはしなかった。
例え賛辞を受ける行為でなかったとしても予め決まっている滅びを変えたい、その想いだけはルーク達と根幹は同じであった。ただ方法がそれしかないと思い込んで曲げる事をせず、絶望したままルーク達と相対してしまった。
・・・ジェイド達にグランコクマに連れていかれる中でヴァンはそんな自分達が敗れ去った後の世界、預言が無くなった後の世界を知ってしまった。それはヴァンにとって二重の意味での衝撃を心にもたらした。まさかの計画頓挫という物が最初はほとんどを占めていたが、徐々にヴァンの心にはその世界を望みたいという自らにあるまじき変貌が現れて来た。そのことにヴァンは衝撃を受けたが反面でそれでいいかと思っている自分がいたことに、驚くほど心を穏やかにしていた。
自らを犠牲にしてその世界、いやそれ以上の世界を作れるなら望んで悪役を買って出よう。グランコクマからこの場に到るまでに、ヴァンが出した結論は・・・自分の幸せを全く鑑みない独りよがりの正義から来る悲しい男の決意だった。
(師匠・・・)
ルークは哀愁の見える強がりをまとったヴァンになんとも言えず、ただ心でその存在に呼びかける。だがそうしたいのはこの会議室にいるリグレット・ラルゴを除いた全ての者の共通した思いだ。
心変わりをしてはいるがそれでも大きな壁としてルーク達の障害たらんとしている・・・意識をせずに零れ落ちたヴァンの本音がルークにたまらず心に影を落とす。
「・・・お前は神などではない、ただの一人の人間だ。人の想いの強さは運命すらも切り開く事が出来る。絵空事というならそれを実現に導くまで力、そして想いを集結させればいいだけのことだ」
「・・・フッ。確かに自身が認めた通り、お前はリアリストではないな。言っている事は夢だけを描く夢想家でしかない」
らしくないと軽い口調に変わったヴァンであるが同調して反応しているのは何人ほどかいる。ジューダスの口からそのような言葉が出て来るのは意外だったのだろう。
「・・・僕はリアリストではないが夢想家でもない。僕がそう言えるのは・・・人の想いが神を、運命を越えれるという事を身を持って知っているからだ」
「・・・何?」
(・・・ジューダス・・・)
冷静沈着であったジューダスのらしくない発言、だがはっきり力を込められたその声にヴァンと周りも眉を寄せる。そんなジューダスに、ルークは決意を感じ取っていた。その身に秘めた決断を明かすという決意を・・・
.
「それこそ絵空事に過ぎん。貴様なら分かるであろうに、この世界の歪みそのものである預言を変えるには一度全てを壊すしかないと」
「しかし歪んだ世界を変えようとしたお前はルーク達に敗れ、その後の世界は預言は無くなり人自身の納めるという未来がある。それはジェイド達がいることから全く出来ん事ではないと、お前ももう気付いている・・・いや、もう預言の示す未来は変わっている。それに気付けん程愚かではないだろう?」
「・・・それも私の行動があってこそ、世界は預言を詠む事をようやく止めただけだ。愚かな人は危機を身に染みて理解せねば到底意識を改革するには到らん。・・・だから私は預言を憎み、これからも人類全てを消す事を諦める事はない。それだけのことだ」
ここで初めて本心を明かしたような、ヴァンの寂しい決意が垣間見えた。
・・・ヴァンとて突拍子もなく世界全てに絶望するわけもないし、その世界にも大切にしているものはある。唯一の妹であるティアだけは敵として相対しているときであっても気遣いを忘れようとはしなかった。
例え賛辞を受ける行為でなかったとしても予め決まっている滅びを変えたい、その想いだけはルーク達と根幹は同じであった。ただ方法がそれしかないと思い込んで曲げる事をせず、絶望したままルーク達と相対してしまった。
・・・ジェイド達にグランコクマに連れていかれる中でヴァンはそんな自分達が敗れ去った後の世界、預言が無くなった後の世界を知ってしまった。それはヴァンにとって二重の意味での衝撃を心にもたらした。まさかの計画頓挫という物が最初はほとんどを占めていたが、徐々にヴァンの心にはその世界を望みたいという自らにあるまじき変貌が現れて来た。そのことにヴァンは衝撃を受けたが反面でそれでいいかと思っている自分がいたことに、驚くほど心を穏やかにしていた。
自らを犠牲にしてその世界、いやそれ以上の世界を作れるなら望んで悪役を買って出よう。グランコクマからこの場に到るまでに、ヴァンが出した結論は・・・自分の幸せを全く鑑みない独りよがりの正義から来る悲しい男の決意だった。
(師匠・・・)
ルークは哀愁の見える強がりをまとったヴァンになんとも言えず、ただ心でその存在に呼びかける。だがそうしたいのはこの会議室にいるリグレット・ラルゴを除いた全ての者の共通した思いだ。
心変わりをしてはいるがそれでも大きな壁としてルーク達の障害たらんとしている・・・意識をせずに零れ落ちたヴァンの本音がルークにたまらず心に影を落とす。
「・・・お前は神などではない、ただの一人の人間だ。人の想いの強さは運命すらも切り開く事が出来る。絵空事というならそれを実現に導くまで力、そして想いを集結させればいいだけのことだ」
「・・・フッ。確かに自身が認めた通り、お前はリアリストではないな。言っている事は夢だけを描く夢想家でしかない」
らしくないと軽い口調に変わったヴァンであるが同調して反応しているのは何人ほどかいる。ジューダスの口からそのような言葉が出て来るのは意外だったのだろう。
「・・・僕はリアリストではないが夢想家でもない。僕がそう言えるのは・・・人の想いが神を、運命を越えれるという事を身を持って知っているからだ」
「・・・何?」
(・・・ジューダス・・・)
冷静沈着であったジューダスのらしくない発言、だがはっきり力を込められたその声にヴァンと周りも眉を寄せる。そんなジューダスに、ルークは決意を感じ取っていた。その身に秘めた決断を明かすという決意を・・・
.