救う者と救われるもの 第三話

握手を終え、自分が考えていた懸念に決着がついた二人。次に二人はこれからの行動指針を決める為に会議を開始していた。



「これからの行動だけど、クイーンを助ける為にチーグルの森に向かうんだ。明日の朝に出発・・・」
「待て、ルーク」
「え?」
「明日の朝に出発・・・それはやめろ」
「・・・どうしてなんだ、ジューダス?」
「以前の様に行けばクイーンは死ぬ、それは確実だ。ならば僕たちは歴史を繰り返さないように先回りをして先手を打たねばならん。今の内に行くぞ」
「えっ!?どうして!!」
勢い良くジューダスに詰め寄るルーク。ジューダスはルークの勢いに関する事なく、冷静に話を続けた。
「以前は食糧盗難騒ぎで犯人扱いにされたお前がチーグルの森に行きたいと言ったのだろう?しかし今回は違う。食糧盗難騒ぎにお前は関わってはいない、従ってチーグルの森に行きたいという理由が存在しなくなる。それに以前のままの流れで行けばあのジェイドとかいう軍人がクイーンを有無を言わさず殺すだろう・・・以前の記憶を持っているのはルーク、そしてその指輪の力で過去を見た僕だけだ。これからの事をただ話した所でジェイドの性格上簡単に信じてくれるとは思えん。指輪を使ってジェイドに接触して記憶を植え付けようにも今奴はタルタロスの中にいるだろう。マルクト軍人がいる中、説得する為だけにタルタロスに秘密裏に侵入すればいらん時間を食い、イオン達が先にチーグルの森に入ってしまう。そうなれば最悪イオン達が逆に殺されるだろう・・・今のジェイドからすればクイーンは有害なだけの魔物、しかし説得の時間がない。その状況を考えれば手段はひとつ、ジェイドの手が及ばない場所に先にクイーン達を移動させるんだ」
「あ・・・そういうことか・・・」
ルークはジューダスの言葉に納得していた。前を思い出せば出すほど、ジューダスの言っている通りだと思えた。それと同時に、
「凄いな、ジューダス」
これほど先を考える人をジェイド以来に見たルーク。その事を単純に凄いとルークは思った。



「じゃあ、ティアはどうするんだ?」
そのジューダスの考えに賛同したルークはティアも連れて行くべきかどうかと聞いてみた。
「置いていく。手紙を添えてな」
「手紙?」
「『後で戻ってくる、宿で待っていてくれ』とでも書いていればいいだろう・・・ティアにも記憶をというのは正直辛いだけのものになる、出来るだけ何も知らず無関係のまま終わらせる方が幸せだ」
「そっか・・・そうだよな・・・」
記憶を植え付けるという事、それは尊敬していた兄や教官に大詠師の結末を見てしまうということ、確かに酷だとルークは思った。
「じゃあ手紙を書いてくる、それから出発しよう」
そう言い、ルークは宿へと戻っていった。
「僕も・・・酷な事をしてしまった。今更だがな」
ルークの背中を見つめ、小声で呟いたジューダス。今は遠い存在となってしまった姉の事を思い返し、自然と表情が暗くなってしまった。




「行くか」
「うん」
手紙を置いたルークはジューダスの所に戻り、漆黒の闇夜の中チーグルの森へと出発していった。







二人は知らない、エンゲーブを離れた直後ある光が宿屋の中に発生した事を。
二人が予想すら出来ない別の因子が戻ってきた事を。




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