救う者と救われるもの 第二十話

「申してくれるか、ジューダス?」
「はっ。今この場には三国の首脳及びローレライがいます。そしてこの場には更にユリアの血族であるティアとヴァン、ローレライの力である超振動を使えるルークとアッシュがいます・・・このようなやり方はあまり好ましいものではありませんが、これだけの人材が揃えば世界を納得させるための舞台を整える事が出来ます」
「舞台・・・ですか?」
「はい、私の思い描く筋書きを上げさせていただきますがこの会合で和平を結んだと全世界に情報通達後、ダアトに今上げた方々、それに護衛としてこの場にいる残りの方々に行っていただきたいのです・・・預言の真実をローレライから得たと、それゆえに重大な発表をすると信者達に伝えた後で」
「・・・成程、そこで大掛かりな演説でもしようってことか」
「そうです。導師と大詠師の二人が揃いその脇を六神将、更にキムラスカ・マルクトの両陛下とその精鋭が一斉に集結すれば全世界の意志という体制を見せる事が出来ます。その状態でヴァン・ティアの兄妹の二人とルークかアッシュのどちらかに出ていただき、ローレライを呼び出していただけばダアトの教団信者達には信じていただけるでしょう。預言の真実を。ローレライを呼び出す前に前置きとしてユリアの血族とローレライの完全同位体と話す事が必要ですが」
「・・・ふむ。案としては確かに筋道が通っている。ユリアの血族ならばローレライと接触したとしても怪しまれる事は無い上に、ルーク達なら預言も詠まれている故ローレライと接触しても問題はないかと思われる・・・だが、それではダアトにいる信者だけしか説得は出来まい?」
「もちろんバチカルやグランコクマ、ケセドニアにも行っていただきたいと思っております。ですがまずはダアト、彼の地にて信者を説得。これを成さねば他の地での民の説得は出来ぬのです」
「そうだな。ユリアゆかりの者とローレライの力を受け継ぐ者がダアトを差し置いて他の国から先に演説でもしようものなら、一気に言葉に信憑性が無くなってしまう。例えローレライがいようとな。だが逆にダアトで演説を成してしまえば、世界各地の教団信者にも波紋が広がる。預言脱却を考える為の噂って波紋がな」
「確かに・・・うまくいきそうだとは思えます。ですが・・・ヴァン、貴方はこの話を聞き協力する気はありますか?」
・・・光明と暗雲、世界のトップ達が協力する壮大な舞台構成に皆が聞き惚れるが、話の矛先をヴァンに向けたイオンの声に不遜な笑みでヴァンは口を開く。
「確かにそこまで凝った舞台でしたら民衆の心は掴めるかもしれません。ですが私は協力する気はございません。私の目指す物とジューダスの献策した世界、それは相いれぬのです」
「そんな・・・」
はっきりとした否定にイオンはどうにかならないかと手を出すが、遠い位置にいるヴァンにその手は届かない。
「それに私はオールドラントに数多といる預言中毒者に聞く耳があるとは思えぬ。絵空事だけでそんな者どもを救えるはずもない」
「兄さん・・・」
預言憎し、預言信者憎しと凝り固まったヴァンの口調は全ての民を罵倒するよう吐き捨てている。そんな兄の姿にティアが悲しげに兄を呼ぶよう、呟く。
「・・・導師、両陛下。ヴァンに話をさせていただきたい。そして言葉が乱れる無礼がありますが、そのことにもご容赦願います」
「え、あ・・・はい、どうぞ」
「う、うむ・・・」
「・・・わかった」
すると途端にジューダスが二人での対談の形を取りたいと、意見を出す。だがその視線は鋭く強く、ヴァン以外を捉えていない。あまりの迫力に、三人は少し圧されながら了承を返す。






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