救う者と救われるもの 第二十話
・・・数分後、全員を包んでいた第七音素が唐突に全てローレライの元へと戻る。かつて事実だった過去、そしてこことは違う未来。その全てをイオンの事だけ曖昧にわからないようにし、見せられた一同は驚きを隠せていない。
『導師、そして皆の者よ。今見せた物がルーク達の経験したものだ』
「・・・話には聞いてはいましたが、ヴァン。貴方方はなんてことを行おうとしていたのですか・・・」
「・・・ふっ、この預言に塗れた世界を変えるには世界を滅ぼす程の劇薬が必要。そう思ったから私は行動を起こしたまでです・・・もっとも、その行動も二度同じレプリカという存在に阻まれましたが」
「・・・」
ローレライの問い掛けにイオンは表情を痛ましげに歪め、ヴァンへと視線を向ける。そのヴァンは開き直ったように軽く笑い、ルークへの皮肉を込めた賛辞を視線と共に送る。そんな皮肉にルークは反論はせず、黙り込む。
「・・・とりあえずヴァンには後で話を聞かせていただきます。それで次に話をお聞きしたいのは市長、貴方です。貴方は・・・預言の事実、それにヴァンの行動を知ってどう思われましたか?」
「それ、は・・・・・・確かに預言の示す物が滅び、そしてヴァンの起こそうとした事を考えれば・・・一刻も早い対策を講じるべきかとは思われますが、正直私は未だローレライの見せた夢の中にいるような心地です。今まで預言に全てを委ねた生き方をしてきた私には、すぐに何かを考える事は・・・」
話の振り先を変えたイオンの振り向き様の質問。その答えに本当に自らの内心を示すよう、所々止まりながらテオドーロは言葉を紡ぎ最後に視線を逸らす。
「・・・やはりすぐには認められないですか・・・それは仕方ないとは思います。現にモースも今悩んでいますし・・・」
イオンはそこでテオドーロからモースへと視線を移す。そこには話題に上がりクマの出来た顔を下に下げ、一斉に視線を向けられたモースが気まずそうにする姿。
「・・・この様子ではいかに預言を詠まないよう導師が宣言しようとしても、ダアトや預言を信じる者達は預言を詠む事を止めようとはしないだろう。もしかしたらそう宣言することで騒動も起こりかねないし・・・」
「うぅむ・・・」
その姿にピオニー・インゴベルト両陛下が問題点を上げて、頭を抱えたそうな重い声を上げる。
以前外殻大地降下を終えて預言を詠む事を禁止した時、ヴァン達が再活動するまでの間になんだかんだで預言廃止の反発が表向きほぼ無いに等しかったのはひとえにアクゼリュス崩落から始まる一連の騒動に巻き込ませたから、それが大きかった。
市民の心に暗い影を落とした世界崩壊の危機、その後始末と慣れに追われる事となった人達。そんな状況で全て預言に頼る程の暇と時間はない。故にヴァン達が再活動するまでの間で言うなら多少不満の声こそあれど、それは時が流れれば預言が詠まれないという事が市民の間でも自然と受け入れられる流れとなっていた。
しかしそれも何か騒動があってこそ、つまり預言とヴァンがそれを利用したという行動があってこそ。今はアクゼリュスは崩落はしておらず降下してその地も残っており、戦争も起こらず外殻大地降下も世界への説明無しで秘密裏で行った。したがって、市民が自然と預言を詠まない事とする状況ではないのだ。自らの事だけで手一杯と切迫するのではなく、預言があるなら預言に任せようというオールドラント従来の生活を捨てるに値しない状況。
どうやって預言廃止の宣言を民に納得させるか・・・その一点は王としての真価を試されている。
「・・・その件につきまして、私から申し上げたい事がございます」
「・・・何?」
国の頂点としてどう向き合うべきかを悩む両陛下を前に、ジューダスがその重い口を開く。
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『導師、そして皆の者よ。今見せた物がルーク達の経験したものだ』
「・・・話には聞いてはいましたが、ヴァン。貴方方はなんてことを行おうとしていたのですか・・・」
「・・・ふっ、この預言に塗れた世界を変えるには世界を滅ぼす程の劇薬が必要。そう思ったから私は行動を起こしたまでです・・・もっとも、その行動も二度同じレプリカという存在に阻まれましたが」
「・・・」
ローレライの問い掛けにイオンは表情を痛ましげに歪め、ヴァンへと視線を向ける。そのヴァンは開き直ったように軽く笑い、ルークへの皮肉を込めた賛辞を視線と共に送る。そんな皮肉にルークは反論はせず、黙り込む。
「・・・とりあえずヴァンには後で話を聞かせていただきます。それで次に話をお聞きしたいのは市長、貴方です。貴方は・・・預言の事実、それにヴァンの行動を知ってどう思われましたか?」
「それ、は・・・・・・確かに預言の示す物が滅び、そしてヴァンの起こそうとした事を考えれば・・・一刻も早い対策を講じるべきかとは思われますが、正直私は未だローレライの見せた夢の中にいるような心地です。今まで預言に全てを委ねた生き方をしてきた私には、すぐに何かを考える事は・・・」
話の振り先を変えたイオンの振り向き様の質問。その答えに本当に自らの内心を示すよう、所々止まりながらテオドーロは言葉を紡ぎ最後に視線を逸らす。
「・・・やはりすぐには認められないですか・・・それは仕方ないとは思います。現にモースも今悩んでいますし・・・」
イオンはそこでテオドーロからモースへと視線を移す。そこには話題に上がりクマの出来た顔を下に下げ、一斉に視線を向けられたモースが気まずそうにする姿。
「・・・この様子ではいかに預言を詠まないよう導師が宣言しようとしても、ダアトや預言を信じる者達は預言を詠む事を止めようとはしないだろう。もしかしたらそう宣言することで騒動も起こりかねないし・・・」
「うぅむ・・・」
その姿にピオニー・インゴベルト両陛下が問題点を上げて、頭を抱えたそうな重い声を上げる。
以前外殻大地降下を終えて預言を詠む事を禁止した時、ヴァン達が再活動するまでの間になんだかんだで預言廃止の反発が表向きほぼ無いに等しかったのはひとえにアクゼリュス崩落から始まる一連の騒動に巻き込ませたから、それが大きかった。
市民の心に暗い影を落とした世界崩壊の危機、その後始末と慣れに追われる事となった人達。そんな状況で全て預言に頼る程の暇と時間はない。故にヴァン達が再活動するまでの間で言うなら多少不満の声こそあれど、それは時が流れれば預言が詠まれないという事が市民の間でも自然と受け入れられる流れとなっていた。
しかしそれも何か騒動があってこそ、つまり預言とヴァンがそれを利用したという行動があってこそ。今はアクゼリュスは崩落はしておらず降下してその地も残っており、戦争も起こらず外殻大地降下も世界への説明無しで秘密裏で行った。したがって、市民が自然と預言を詠まない事とする状況ではないのだ。自らの事だけで手一杯と切迫するのではなく、預言があるなら預言に任せようというオールドラント従来の生活を捨てるに値しない状況。
どうやって預言廃止の宣言を民に納得させるか・・・その一点は王としての真価を試されている。
「・・・その件につきまして、私から申し上げたい事がございます」
「・・・何?」
国の頂点としてどう向き合うべきかを悩む両陛下を前に、ジューダスがその重い口を開く。
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