救う者と救われるもの 第二十話

数分後、二人の為にすぐに椅子は用意された。

その椅子に揃って腰をかけるルークとジューダス、それにキムラスカ側についていたはずのシンク・アリエッタ・フローリアンがルーク達の後ろに着く。

構図としては第四勢力に見える五人・・・実際に、その見解で正しい。二人はこの星を憂い行動している、その意識に国は関係ない。ただ個人として二人は国を動かそうとしているのだ、英雄という勢力として・・・



「さて・・・皆さん、席に着きましたね」
ルーク達が位置に着き代表者としてイオンが場を取り仕切るよう、椅子から立ち上がり声をかける。
「この場は国家間の和平、キムラスカ・マルクトの両国の仲を取り持つ為の場です。そして預言の真実を明らかにするための場でもあり、ヴァン。貴方がそれを知っていて尚取った行動に対しての協議の場でもあります」
そこで一斉にルーク達、ティア達以外のヴァンが起こした事の経緯の実態を知らない人達の目が捕らえられた三人に集中する。特に祖父であるテオドーロは何を、と理解出来ずヴァンをより強く凝視している。
「・・・まずは和平に対しての話し合いは置いておきましょう。ここにはまだ、預言自体の実態を知らない人もいます。そこでルーク、ローレライを呼び出してはいただけないでしょうか?」
「わかった・・・聞こえただろう、ローレライ。出て来てくれ」
『承知した』
更に続けたイオンはまずは段階を踏むと、ルークにローレライの呼び出しを願う。それを受け指輪に話しかけるルークにローレライは了承を返す。その会話と指輪が喋った事に、ローレライをまだ見た事のない一同は思い思いの感嘆の吐息を吐いて動揺を表す。
・・・瞬間、指輪から壮大な第七音素の光の塊が溢れ出てくる。そしてその光はルークの真後ろの頭上程に位置をつけるとそのままフヨフヨと浮かび続ける。
「・・・ま、まさか貴方がローレライ・・・なのですか・・・!?」
『いかにも』
まさか本当に、実在するローレライを目の当たりにしたテオドーロが愕然とした様子で驚く一同の代表となって確認を取る。
『導師よ。我を呼び出したのはいかな用か?』
「ローレライ。貴方はインゴベルト陛下やモースにその力を用い、過去を見せたと聞きました。そこで僕たちにも記憶を共有出来るよう、過去を見せてはいただけないでしょうか?」
『・・・成程』
用件を尋ねるローレライに、過去を見せてはもらえないかとイオンは言う。ローレライは納得したように一言呟くと更に続ける。
『これより見せる物はルークが体験した未来であり、今この時においての過去だ。ルーク達が今この時に戻り、ジューダスがいなければこのような結末になっていた物。皆・・・心して見よ』
前置きを置き、最後にローレライは声を低くして一斉に過去を見せる為の光をルークとジューダスを除いた全員に放つ。驚く面々、しかし誰もその光に包まれるのを回避出来ずに瞬く間に二人以外が記憶の世界へと旅立つ。
「・・・何故ジェイド達や陛下達にまで記憶を見せるようにした?」
その光景にジューダスは後ろを振り向き、見せる必要のないはずのメンツまで巻き込まれている事の理由を問う。あの記憶を持っている陛下・公爵・モースと、ルークと共に旅をしたジェイド達にはあえて記憶を見せる必要は一切ない。だからこそジューダスは気になった。
『ジェイド達にはこの状態を身を持って体感してもらいたかった、インゴベルト達は・・・お前の覚悟が変わっていないかを聞きたかったから、あえてこの場から外させてもらっただけのことだ』
ジューダスを慈しむような声に変わるローレライ。だがジューダスは視線を横へ背ける。
「覚悟なら・・・出来ている。今更僕は悩まん」
「・・・ジューダス」
その物悲しい表情にいたたまれなくなり、ルークはジューダス以上に悲壮に顔を歪める。
『・・・ならばこれ以上はもう何も言うまい。我はジューダスの考えを尊重しよう』
「・・・」
むしろ止める事は出来ない、そんなニュアンスのローレライはただそう告げると下を向いて泣きそうなルークとともに沈黙する・・・








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