救う者と救われるもの 第十九話

「・・・まぁ色々聞きたい事はありますが先にこれだけは言わせていただきます・・・貴方のおかげで世界は救われようとしています、かつて我々が対面した危機を最善の形で避けるように・・・ありがとうございます、ルークに協力していただいて」
そう言い切ると、ジェイドは深く頭を下げる。確かに疑問こそたくさんあるが、それ以上に感謝の気持ちは強い。自らにも思いもつかない行動を持ってしてジューダスは全てを良い方へ覆してくれた、ジェイドは一同を代表して素直に謝意を表す。
だがそんなジェイドの声を受けても、ジューダスはいたって冷静に返す。
「まだ全ては終わってはいない。数時間後に控えている和平を話し合う会合、そこで僕の考えている案件を陛下達が取り上げて下さるならば恐らく預言は詠まれなくなっても無事に世界は動く事になる。それが終わってこそ、最悪の自体を回避したと言える。まだ道半ばでは世界を変えたとは言えん、礼を言われる筋合いはない」
その返し口にジェイドは頭を上げる、その表情は納得した様子をもう一度見せていて口元に笑みを乗せている。
「・・・ジェイドの言っていたリアリストってのはホントだったんだな。油断っていうか何て言うか、そんな様子が全くないけど・・・」
「・・・何の話だ?」
「いえ、私が貴方がこうではないかと推測していた時の話です。その通りだっただけの事ですから、気にしないで大丈夫ですよ」
ガイの独り言に疑問を表すジューダスだが、ジェイドは気にすることはないと言う。
「それにしても・・・一つ聞いていいかしら?ええと・・・ジューダス、って呼んでいいかしら?」
「あぁ構わん」
すると今度はティアが一歩前に出て、呼び名に戸惑いながら質問したいと言い出す。
「貴方はどこの国の人間なの・・・?キムラスカにもマルクトにもダアトにも貴方の事を知っている人はいなかった・・・それにエンゲーブに行った時には既に貴方はルークと何も知らない時の私と一緒にいたようだし・・・何者なの?」
「・・・」
そのティアからしてみれば当然の疑問を受けて、ジューダスは少し考える様子を見せる。後で説明する気はもちろんあるが、ティア達は数少ない以前を知る以前のままの彼女達だ。今この場でティア達にだけは先に話すべきか?ジューダスがそう考えていた所、ジューダスの後ろからイオンが近づいて来た。
「ティア。その質問に関してジューダスは会合の場で話すと言っています。もう少しだけ待ってはいただけませんか?」
「イオン様・・・」
「お久しぶりです、皆さん。それにアニス」
「お久しぶりです、イオン様ぁ。でもジューダスの事を後で話すってどういう事なんですか?」
「ジューダスには何か考えがあるそうです。後でちゃんとお話をするそうなので後ででよろしいですか、ティア?」
「はい。そういうことなら・・・」
イオンの諭しに納得した様子を見せるティアを見て、ジューダスは内心でホッとする。



「ほーう、ならジューダスの事は会合の時に聞ける訳か」
「・・・ピオニー陛下・・・」
するとジェイド達のやってきた港口の方からピオニーが楽しそうな顔で近づいて来た。ナタリアはピオニーに気付き名前を呟くと、ルークはそれを聞き涙を流していた状態から顔を上げる。
ルークがその視線の先に見据えていたのはピオニー、ではない。二歩程後ろにつけていたフリングス将軍でも、キムラスカからマルクトへジェイド達に付いて行ったセシル少将でもない。視線の先にいたのは・・・縄に縛られ、マルクト兵士に引っ張られてこの場に来たヴァンだ。リグレットとラルゴもヴァンと同じく縄に繋がれ、三人でこちらに近づいて来ている・・・
「ヴァン師匠・・・」
ようやくの再会は最後の説得の場、ここで説得出来なければもうヴァンは・・・。涙を拭いつつ、ルークは強く意志を持った表情になりながらピオニー達を見据える。





19/22ページ
スキ