救う者と救われるもの 第十九話

マルクトに飛んでから、地核に飛び込むまで大いに関わっていたタルタロス。思い入れのあるその姿をルークが忘れるはずはない。

そして同時にルークは感じていた、あのタルタロスの中にティア達がいるという事を・・・



タルタロスがユリアシティに入港する姿を見たルークは心臓の鼓動が異常に早まっていくのを抑える事が出来なかった。溢れる感情、つられて固まる体・・・

もはやルークは何も言えず、タルタロスの方向をただじっと見つめている。イオンとジューダスはそんな様子のルークに話しかけず、同じようにタルタロスを見つめている。



・・・そして入港を終えて動きを止めたタルタロスから徐々に近づいてくる影が現れた。遠目に見ても十人以上は確実にいる・・・そんなマルクトの代表と思わしき一団の中から、いくつかの影が突然ルーク達に向かって走り出して来た。

その影達の姿がより鮮明にルーク達の目にも明らかとなってくる。そして近づいて来た影を見ると、途端にルークが足取りをゆっくりさせながらその影達に近づいて行く。ジューダスとイオンはそんなルークを止める事なく、ただ見守っている。









・・・待ち望んだ瞬間、予想だにしていなかった朗報。二つの交わらなかった想いがようやく交わる時が・・・来た。
「「「「「「ルーク!」」」」」」
「・・・皆っ!」
六人分の自らを呼ぶ嬉しそうな声に、ルークはたまらず足を止めて泣きそうな顔でこの再会の時を身体で理解した。
「・・・うわっ!?」
立ち止まったルークに勢いよく体当たりしてきた影が一つ。
「ルーク!ホントにルークだよぅ、大佐ぁ!」
「えぇ、間違いありませんよ。アニス」
ルークを驚かせた影、アニスの嬉しそうにはしゃぐ声に抱き着くような事はせず心なしか上機嫌そうにそうだと言う近くに位置をつけた影、ジェイド。
「ようやく会えましたわね!ルーク!」
「ハハッ!元気だったか?ルーク!」
胸元で手を組み嬉しそうに顔を綻ばせる影、ナタリア。ルークの肩を掴みこれまた爽やかに笑みを浮かべる影、ガイ。
「ルーク・・・久しぶりね・・・」
「ちっ・・・手間をかけさせやがって・・・」
微笑を浮かべてうっすら赤みがかった頬になっている影、ティア。ルークから顔を背け不機嫌そうに愚痴る影、アッシュ。
「・・・皆・・・アッシュ・・・ホントに戻って来たんだな・・・」
六人の再会の挨拶はルークに感激をもたらし、たまらずルークは泣きそうになるのをこらえて下を向く。するとそこには見覚えのある青い聖獣の姿があった。
「ルークさん!お久しぶりですの!」
「ミュウ・・・お前、チーグルの森に残ってたんじゃないのか?」
「僕はまだルークさん達にご恩を返していないですの!だからティアさん達にお願いして連れて来てもらったですのー!」
ピョンと跳ねルークの胸元に抱き着いて来たミュウ。それを受け止め抱き上げたルークは・・・涙腺の決壊を迎えた。
「皆・・・ホント・・・ホントに、ふぐっ・・・ありがとう・・・」
六人だけならなんとか我慢出来たかもしれない・・・が、イオンとの再会。そしてミュウが変わらず自分を慕ってここまで来てくれた事。不意に受けた衝撃は我慢の限度を超え、ルークは耐える事を忘れてしまった。
「ミュッ、ミュウ・・・?ルークさん・・・?」
「おっ、おい。ルーク・・・?」
「・・・そっとしておいてやれ。直に泣き止む」
そんな様子を見た事のないルークの腕の中のミュウとガイは心配そうに声を上げるが、ルーク達に近づいたジューダスが放っておけと告げる。と、その聞き覚えのない声にはっとしたのだろう。一斉にルークを注目していた全員の視線がジューダスへと向けられた。
「・・・成程、貴方がジューダスですか・・・」
「あぁ、そうだ。直に会うのは初めてになるな。お前達とは」
ジェイドがそんな一同の代表として納得したように、ジューダスの姿を見て確認を取る。ジューダスはジェイドの質問に簡潔に答える。



一同は再会を喜び、そして初対面を果たす。そんななかでやはりというか、ジューダスを初めて見たティア達の表情は好奇心に彩られていた。







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