救う者と救われるもの 第三話

「・・・気を落とすな、異次元空間に本来人は存在している筈はない、あれは事故だ」
ジューダスが頭を抱えたルークにフォローをする。
「・・・でも」
頭を上げ、不安げな顔で何か言葉を返そうとしているルーク。その顔を見たジューダスは元気を出させようと、自ら言葉を放った。
「罪悪感を感じるというなら僕を連れていけ。そして僕と共に世界を変えてみせろ。それがお前の僕に対する罪滅ぼしになる」
「・・・え?」
言われた意味が理解出来ずに目を見開くルーク。
「頭では理解していても意識では納得出来ないんだろう?ならばお前の中でそうすることが償いなのだと思え。・・・先に言っておく。ここまで言ってこの事をこれ以上引きずるというのは無しだ。僕に罪悪感があるというなら僕の言った事をやってみせろ。それがお前なりの罪滅ぼしになる」
そこまで言い、ジューダスはルークの返事を待つため黙りこんでしまった。



(えっと・・・俺ってもしかしてこの人に気遣われたのかな)
言葉を少しづつ思い返せばジューダスは気にしていないと言っているのに対し、自分はこの事を気にしすぎだったように思えた。それをみこして彼は自分に元気を出させようとしていたのではないか?ルークはそう気付いた。
(この人の気遣いに答えないと!!)
ルークの顔に迷いは無くなり、改めてジューダスと向かいあった。
「わかった。俺、約束するよ。この世界を変えてみせる。預言に左右されない、理不尽な事で命を失う事がない世界を作ってみせる」
かつてユリアシティでティアに誓ったように、ジューダスに誓うルーク。その表情には曇り一つなく、これで立ち直ったとジューダスは確信した。しかしそれと同時にジューダスはあることを念を押そうと口を開いた。
「ならばもう一つ誓え。・・・今回限りで全てを終わらせろ」
「え?」
「命は本来1つきりだ。しかし僕たちは有り得ない形で命を再び得ている。結果を納得出来ないからと何度もやり直すのは生ある者の形ではない。・・・分かるか?」
そうジューダスに言われ、亡くなった人達の事をルークは思いだした。
(俺は死んだ人達を助けるために過去に戻ってきた・・・だから俺はこうして生きてる、けどこの人が言うように命は1つきりなんだ。俺はやり直す為に戻ってきた、けど俺だけが何度もやり直せるなんてやっちゃいけないよな・・・この人の言う通りだ)
ジューダスの言葉を受け止め、自分の意識に甘えがあったことをルークは実感した。
「わかった。それも誓う、俺は今回限りで全て終わらせて見せる。だから・・・見ていてくれ、俺を」
先程よりも強くジューダスを見つめて宣言するルーク。その表情にジューダスはこれなら大丈夫だと確信できた。



高らかに宣言を挙げたルークだったが、ある一つの疑問がルークの中で提起されていた。
「俺の名前はルークなんだけど・・・名前は何?」
二人は現在に至るまで名前を互いに明かしていなかった。ルークはふと目の前の人物をどう呼べばいいのか分からなかった為、名前を聞いたのだ。



(名前・・・か。カイル、また名乗らせてもらうぞ)「ジューダスだ」
自分が今この場にまた有り得ない形で生を受けている以上、『リオン・マグナス』ではない、ましてや『エミリオ・カトレット』でもない、という気持ちになっていた。だからこそ『ジューダス』という運命を裏切る者の名を名乗ったのだ。



「じゃあジューダス・・・これからよろしく!!」
笑顔でそっと手をジューダスの前に差し出したルーク。
「ああ・・・ルーク」
差し出された手を握り、微笑で返したジューダス。
その握手は新たな縁が産まれた瞬間であった。




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