救う者と救われるもの 第十九話

「はい・・・ではお言葉に甘えさせていただきます。初めましてルーク、そして・・・ジューダス」
ルークの優しい声にイオンも自然と笑顔になってルークに挨拶をするが、続いて向けた視線の先にいたジューダスには真顔になる。
「・・・うん。初めまして、イオン」
「・・・お初にお目にかかります、導師。私がジューダスでございます」
ルークは初めましてと改めて笑顔で挨拶し、ジューダスはかしこまった態度で頭を下げる。
「そんなに気を使わないで下さい、ジューダス。僕にもルークと話していたように普通にしてくれませんか?」
「・・・そうさせてもらおう」
そんなジューダスにイオンは苦笑を浮かべながら、態度を軟化してほしいと頼む。意外と頑固なイオンのこと、そういうわけにはいかないと断ってもお願いしますと頼まれると考えたジューダスは顔を上げ仕方なさそうに答える。
「・・・貴方達が、ルークとジューダスなんですね。会いたかった・・・」
「・・・大袈裟だ。僕はそこまでたいした事はしていない」
「そんなことないよ、ジューダス。俺、ジューダスのおかげでここまでやれたんだからさ」
「僕は何もしていない、ただ僕は助言をしてルークがそれに従ったまでのことだ」
「・・・ふふっ」
二人に会う事を切望していたと語るイオンの目と声に、ジューダスは言い過ぎだと自らを下げる。しかしルークはジューダスを立てようとする、しかしジューダスはなんでもない事だと強調する。
そんな二人の掛け合いに、イオンは笑い声を堪える事なく静かに笑う。
「お二人は仲がよろしいんですね」
「仲って・・・そんな風に見えるのか、イオン」
「僕から見ればそう見えますよ」
「・・・」
仲がいいと言われ内心で嬉しくなるルーク。だが対象的にジューダスの内心は複雑だ。



そろそろ別れの時・・・ジューダス自身、そう思っているからこそこれ以上踏み込む事はためらわれる事だ。だがスタンやカイルみたいにルークは自分の事を自信たっぷりに友達と言わない為、ジューダスはどう突き放せばいいかが分からなかった。勝手に友達宣言をしたなら辛辣な言葉を持って好感を下げる事も出来るだろうが、ルークはそういった友達とか仲間とか言った言葉を一切口にはしない。故に自ら僕はお前が嫌いだ、などと自分から脈絡なく言えないジューダスはイオンの言葉を否定出来なかった。



「それで・・・一つお願いがあるんですが、お二人の旅のお話を聞かせていただけませんか?・・・まだピオニー陛下とアスターが来るには時間があります。待っている間だけでもお二人の旅の間の出来事が聞きたいんです」
「うん。それは全然構わないけど」
「・・・僕の事に関してはジェイド達が来てからでいいか?」
仲の良さにどうしても気になったのだろう、ルーク達の旅の様子が。そんなイオンの頼みにルークは快く答えようとするが、ジューダスは少し言い出しにくそうに会話に加わる。
「・・・それはどうしてですか?」
「僕のことは会合が始まったら折りを見て話を切り出す・・・僕は大分特殊なんでな、説明の手間を省く為にも一回で済ませた方が都合がいい」
「・・・はい、わかりました」
会合の際・・・その妙なタイミングに明かすという。しかしイオンはその迫力に圧されたというのもあったが、違和感に気付けず我慢すると言った。
「・・・じゃあ取りあえず話をしようか。俺が未来から戻って来た時からでいいか?」
「あ、はい」
「えーっと、まずは・・・」
そんなジューダスを見て、過去を話す事を心苦しく感じていると考えたルークは話に行くよう助け舟を出す。イオンはその質問に肯定で返すと、ルークは自分の記憶を思い返しながら出会いの事を話し出した・・・









「それで・・・ん?」
ジューダスの過去を話さないよう、ルークが旅の出来事を話して一時間経って二時間経たない程の時間が過ぎた。話を続けて聞いていたイオンは入口の方へ唐突に視線を向けた。そのイオンの様子に、ルークもその視線を追うとそこには忘れようにも忘れられない姿がユリアシティに近づいている光景を目撃した。



「タルタロス・・・ってことはあれに・・・!」









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