救う者と救われるもの 第十九話

その報告を受けて城の入口まで行く二人。そこには既にインゴベルト陛下・ファブレ公爵・シンク達三人の姿があった。
「おぉ来たな、ルーク。バチカルはアルバイン達に任せた。早速ユリアシティに向かうとしようか」
「はい、叔父上」
「マルクトとケセドニアにはアルビオールがないため、キムラスカより先に会合の日にちを記した手紙を出したらしい。到着する時刻に差はあれど、同日中には代表者が全員揃うよう配慮したとのことだ。そしてユリアシティに着いたら少し休憩を挟んだ後で会合は行われる・・・わかったか、ルーク?」
「・・・はい」
会合に行くまでの流れを説明され、ルークは緊張感を持った表情で首を縦に振る。
「では出立いたそう。ノエルも待っているであろうからな」
「はっ。参りましょう、陛下」
話はそこまでだとインゴベルト陛下はユリアシティに向かうと切り出し、公爵が同意を持って返す。
ルーク達も首を縦に振ると、一行は示し合わせたようにアルビオールに乗る為に下層へと向かった・・・










そして時間は過ぎてユリアシティ。イオンとディスト、それにモースは船が横付けするであろう街の入口にて代表者達の到着を待ち侘びていた。

・・・まず先に明記しておく。実際の話として、イオン達はユリアシティで和平の話し合いをします、はいどうぞとすんなりテオドーロ達の許可を取った訳ではない。預言に反する行動、それを何故導師が率先するのかと口を多大に挟まれていた。しかしそんなテオドーロを説得したのは意外や意外、モースである。

「・・・もはや預言に従う事が正しいのかどうか、私にはわからなくなりました・・・市長。貴方もローレライにお会い下さい、そしてルーク達にも・・・」

表情にまだ陰りの残るモースから出た憔悴した言葉はテオドーロ達に興味、及び驚愕をもたらした。敬謙なローレライ教団の大詠師として預言絶対を掲げていたモースが迷い、更にはローレライという存在が出て来た事。その変化に、ならばとテオドーロは強い興味を大半の理由として、会合の場所にユリアシティを使う事をイオンに許可したのだ。



(本当に昔のモースからは考えもつきませんでしたね・・・)
何か答えを求めて渇いているのだろう、預言に従う事の是非を最良の形で教えてくれる事を。預言に、ではなく預言以外で疑問の答えを探すその考えに到った為に、テオドーロを説得して会合の場を作るようルーク達を誘引してくれた。
苦しみ悩む姿を視線を気にすることなく見せたその姿は、イオンが一度たりとも目撃していないものだった。






「・・・おや?あれが、アルビオールですか・・・?」
イオンが代表者達を待つ中でモースの事を考えていると、ディストが首を上に上げて空飛ぶ譜業を見てアルビオールではないかと指を指す。
「そうですよ、きっと・・・」
ディストの言葉にアルビオールを初めて見た驚きも含んでイオンは肯定し、長い一本道の通路中でぽつんとサークル状の広場になっている所にアルビオールがゆっくり着陸するのをじっと見守る。
そして着陸を終えたアルビオール。すると入口の扉が開き、まずはシンクが先頭を切ってアルビオールから降りて来た。続いてアリエッタ・フローリアンと来て、次に出て来たのはジューダスだった。
「あの人がジューダス、なんですね・・・」
「はい・・・そうです」
ジューダスを直に見たのは初めてで確認を取るイオンに、ディストは強い視線をジューダスに向けながらはっきりと肯定する。
だがまだアルビオールからは全員出て来てはいない、続いて機内から出て来た人物にイオンは自然と確信の言葉を口にしていた。



「あの人が・・・ルーク・・・」










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