救う者と救われるもの 第十九話

「まぁそれならそれでいいさ。でも後数日もすればユリアシティでの会合がある・・・それでアッシュや死霊使い達とも話す事は出来るよ、それまでの話だ」
「ジェイド達・・・かぁ・・・なぁシンク。元気だった?皆・・・」
「うん・・・まぁね」



マルクトでの出来事を話し合うルークとシンク、片方は真摯に、片方は他愛のないように見せる会話を。
そんな多少温度差を見せる二人の様子を見ながら、ジューダスは一人壁にもたれながら物思いにふけっていた。
(・・・ジェイド達も戻って来た、それはルークの為。これは疑う余地のないこと・・・だからこそ僕はこれ以上この世界に関わる必要はない・・・)
「ねぇジューダス」
「・・・・・・ん、なんだ?シンク」
ジェイド達の話を聞いたからこそオールドラントにいる理由も存在しないと考え出したジューダス、だが考えている最中シンクがジューダスに声をかけてきた。没頭していたジューダスは多少遅く返事を返す。
「・・・あんたにしては遅い反応だね。まぁそれはともかく、あんたもユリアシティの会合には行くんだろ?」
「・・・そのつもりだが、どうしたんだ?」
「いや・・・死霊使い達はあんたの事を知りたがっていたからね。以前にいなかったあんたって存在の事を」
「・・・そういう事か」
興味の対象、そう言われジューダスは納得する。確かにジェイド達とは一回も顔を合わせていない。例外はティアに当たるのだろうが、それでも人格が分かる程会話を交わした覚えは全くない。それにエンゲーブでティアと別れるまでティアが過去に戻って来たような傾向もなかった。
ルークとともに秘密裏に行動していた記憶の中に存在しない男、ジェイド達からすれば気になって仕方がないことなのだろう。
「元々僕は陛下に頼み、その場に連れていっていただこうと考えていた。もっとも陛下が連れていかないと言えばそれだけの話だがな」
自分で言っておきながら、是非を問わずユリアシティにはジューダスは行くつもりだ。例え会合の場に入れずとも経過を聞き、自分なりに預言なき世界を作る助言をするために。



「それはないんじゃないの?あんた、一応ルークに次ぐ外殻大地降下と戦争停止の立役者なんだし。障気中和に関しても唯一の証言者なんだし、来てくれって陛下に逆に頼まれるさ」
「うん、それに駄目でも俺が叔父上に頼むからさ。ジューダスには絶対席に着いて欲しいし」
「えー、じゃあ僕たちはそこにいちゃいけないのー?」
「真面目な話が続く場所、ですよ?フローリアン我慢、出来ますか?」
「うっ・・・うん、我慢するよ。だからルーク、僕らもいていいかな?」
「うーん・・・多分フローリアン達も俺達と一緒に行動してたから大丈夫だとは思うから、俺から叔父上に頼むよ」
「やったぁ!じゃあ僕、大人しくしてるよ!」
シンクから会合の件は大丈夫だろうとジューダスに言うと、立て続けにアリエッタ・フローリアンも会話に加わり和んだ雰囲気が出て来る。ルークから許可を求めると言われたフローリアンは止めていたジャンプを再びしだし、相当に嬉しそうである。
(・・・ユリアシティか。ジェイド達が僕の事を知りたいと思うのは当然、だがどうする・・・?馬鹿正直に僕の過去を話したところで奴らは信じてくれるのか・・・?)
そんなやり取りに気を残しながらも、ジューダスは再び一人で考えに戻る。ルーク達は多少なりにも付き合いの時間があっただけに自分の過去を聞き、素直に受け取ってくれた。しかしジェイド達とは先程も言った通り、顔を合わせてすらいない。付き合いの無いものには一朝一夕には信ずるに値しない妄言、酷い言い方ではあるが別世界から来たなど安々信じる事は出来ないとジューダス自身が考えていた。
(・・・やむを得んな。信じさせる為にはこれ以外ない・・・)
内心苦々しくてしょうがない実情、しかし表情には出せない。ジューダスは重い決断をすることを決意しながら、ルーク達を遠い目で見つめていた。









そんな一人の内情など表に出ることもなく、平和な時間が数日程も続いた。
ゆったりとした時間を過ごしていたルークとジューダス、そんな二人の部屋に兵士が入って来た。
「申し上げます、導師イオンより全ての準備が整ったとの手紙が参りました」
「・・・ありがとうございます」
いよいよ来るべき時が来た、その事を伝えに来た兵士に真剣に礼を言いながらルークは座っていた椅子から立ち上がった。







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