救う者と救われるもの 第十九話
「さて・・・引き止めて悪かったな、シンク。インゴベルト陛下にはよろしく言っておいてくれ」
「・・・はい」
「・・・待ってシンク」
再会はユリアシティで、話が終わりシンクを送り出そうとピオニーが頼むというがまたもやティアが神妙な顔つきで呼び止める。
「これだけは聞かせて・・・ルークは、元気なの・・・?」
聞いているのに訴えているような、小さな声で叫んでいるティアの声色は芯から答えて欲しいと願っている。これだけはどうしても先に聞かずにはいられなかったのだろう。
「・・・・・・ま、元気だよ。あんたらが過去に戻ったって聞いて、盛大に泣くくらいはね」
「「「「・・・え?」」」」
その声に多少間を空け、シンクは観念したような、そんな響きを持った声で答えを返す。
「それでは陛下。失礼します」
戸惑いを見せるティア達を尻目にシンクはさっと頭を下げ、謁見の間を後にしようと歩いていく。つい言葉とシンクの声色に戸惑ったティア達はなんだと止める事も出来ず、アリエッタとフローリアンは話が終わったのだとシンクが横を通り過ぎたところで気付きピオニーに軽く頭を下げ「「待って(ください)シンク」」と言いながらその後ろ姿を小走りで追いかけて行った。
ここで残されたティア達は、シンク達の姿が見えなくなったその頃にようやく冷静さを取り戻した。
「ルークが泣いたって・・・今までそんなことありませんでしたよね、大佐ぁ・・・」
「・・・えぇ、少なくても私はルークが泣いた姿を見た事はありません」
アニスは確認を取るようにジェイドに質問するが、ジェイドからもそれはないと返される。
「・・・あいつ、どんな辛い時も泣いた事がないのに・・・」
「辛いから泣く、ってのは決めつけじゃないのか?お前ら」
「陛下・・・」
泣く事がなかったから逆に心配、ガイの不安そうな声に柔らかな笑顔を浮かべピオニーは諭しに入る。
「人間感情が高ぶって理性をぶっちぎったら抑えらんないもんだよ。ルークは嬉しかったから、我慢出来なかったから泣いたんだよ。お前達が戻って来た事にな・・・けどそこまで想われてんのに歓喜の涙だって気付けないのはお前も相当鈍くないか、ジェイド?」
「・・・悔しいですが、そこは認めておきますよ。陛下」
前半は本気で泣かなかったルークが何故という疑問を解決するため真剣に、後半はからかいの入った口調でピオニーはジェイドを突く。が、意外にもあっさりその答えに肯定を返す。
「・・・あー、この数日でも十分感じたがお前も大分変わったんだな。これもルークのおかげか?」
「えぇ、そうです」
本音を出す事はピオニーの前でも稀だったジェイドが、からかいの時に話を流す毒すら吐かずに真剣に質問に答えた。数日で大分変わったのだと実感してはいたが、より顕著にその姿を見せられピオニーは改めて、ルークという存在に興味を抱かずにはいられなかった。
・・・そして一方、グランコクマを出てアルビオールに戻ったシンク達は一路バチカルへと向け空へ飛び立っていた。
「・・・まぁ仕方ないよね。あんな声出されたら・・・」
先程のティアの姿を思い返し、シンクは小声で自分に言い聞かせるよう呟いている。
・・・あの声は、顔は本当にルークを想って出た物だった。それを理解できない程、今のシンクは情に感心がないわけがない。寧ろ理解出来たからこそ、降参したのだ。自分達と比較しても遜色ない想う気持ちに、無駄に対抗して一人相撲を取る事に。
「・・・僕も変わったもんだね・・・」
人の必死な質問に同じような感情の葛藤を感じたことなど今までなかった、ましてや思いやりをほとんど会ったことなどないティアに見せた事に。シンクはしみじみそう実感しながらも、らしくないと考えながらふぅと息を吐き窓の外を遠くを見るよう眺める事にした。
.
「・・・はい」
「・・・待ってシンク」
再会はユリアシティで、話が終わりシンクを送り出そうとピオニーが頼むというがまたもやティアが神妙な顔つきで呼び止める。
「これだけは聞かせて・・・ルークは、元気なの・・・?」
聞いているのに訴えているような、小さな声で叫んでいるティアの声色は芯から答えて欲しいと願っている。これだけはどうしても先に聞かずにはいられなかったのだろう。
「・・・・・・ま、元気だよ。あんたらが過去に戻ったって聞いて、盛大に泣くくらいはね」
「「「「・・・え?」」」」
その声に多少間を空け、シンクは観念したような、そんな響きを持った声で答えを返す。
「それでは陛下。失礼します」
戸惑いを見せるティア達を尻目にシンクはさっと頭を下げ、謁見の間を後にしようと歩いていく。つい言葉とシンクの声色に戸惑ったティア達はなんだと止める事も出来ず、アリエッタとフローリアンは話が終わったのだとシンクが横を通り過ぎたところで気付きピオニーに軽く頭を下げ「「待って(ください)シンク」」と言いながらその後ろ姿を小走りで追いかけて行った。
ここで残されたティア達は、シンク達の姿が見えなくなったその頃にようやく冷静さを取り戻した。
「ルークが泣いたって・・・今までそんなことありませんでしたよね、大佐ぁ・・・」
「・・・えぇ、少なくても私はルークが泣いた姿を見た事はありません」
アニスは確認を取るようにジェイドに質問するが、ジェイドからもそれはないと返される。
「・・・あいつ、どんな辛い時も泣いた事がないのに・・・」
「辛いから泣く、ってのは決めつけじゃないのか?お前ら」
「陛下・・・」
泣く事がなかったから逆に心配、ガイの不安そうな声に柔らかな笑顔を浮かべピオニーは諭しに入る。
「人間感情が高ぶって理性をぶっちぎったら抑えらんないもんだよ。ルークは嬉しかったから、我慢出来なかったから泣いたんだよ。お前達が戻って来た事にな・・・けどそこまで想われてんのに歓喜の涙だって気付けないのはお前も相当鈍くないか、ジェイド?」
「・・・悔しいですが、そこは認めておきますよ。陛下」
前半は本気で泣かなかったルークが何故という疑問を解決するため真剣に、後半はからかいの入った口調でピオニーはジェイドを突く。が、意外にもあっさりその答えに肯定を返す。
「・・・あー、この数日でも十分感じたがお前も大分変わったんだな。これもルークのおかげか?」
「えぇ、そうです」
本音を出す事はピオニーの前でも稀だったジェイドが、からかいの時に話を流す毒すら吐かずに真剣に質問に答えた。数日で大分変わったのだと実感してはいたが、より顕著にその姿を見せられピオニーは改めて、ルークという存在に興味を抱かずにはいられなかった。
・・・そして一方、グランコクマを出てアルビオールに戻ったシンク達は一路バチカルへと向け空へ飛び立っていた。
「・・・まぁ仕方ないよね。あんな声出されたら・・・」
先程のティアの姿を思い返し、シンクは小声で自分に言い聞かせるよう呟いている。
・・・あの声は、顔は本当にルークを想って出た物だった。それを理解できない程、今のシンクは情に感心がないわけがない。寧ろ理解出来たからこそ、降参したのだ。自分達と比較しても遜色ない想う気持ちに、無駄に対抗して一人相撲を取る事に。
「・・・僕も変わったもんだね・・・」
人の必死な質問に同じような感情の葛藤を感じたことなど今までなかった、ましてや思いやりをほとんど会ったことなどないティアに見せた事に。シンクはしみじみそう実感しながらも、らしくないと考えながらふぅと息を吐き窓の外を遠くを見るよう眺める事にした。
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