救う者と救われるもの 第三話

指輪から発せられた光の意味したものは過去を人に見せるというもの、それはジューダスから出てきたタタル渓谷とエルドラントという単語から疑いようのないものへルークは確信してしまった。

質問に答えるべくルークはジューダスと真摯に向かい合い、静かに話しだした。




「助けたいんだ・・・ヴァン師匠や六神将、イオンやフリングスさんやシェリダンの人達やアクゼリュスの人達に、死ななくてもよかったレプリカの人達、戦争で死んでしまった人達を助けたい・・・それに預言に頼った生き方から脱け出さないと人は死んでしまう・・・だから、ヴァン師匠とは違うやり方で預言を覆して誰も悲しまない未来を作りたい。それが俺の望む未来だ」
揺るぎない真っ直ぐな瞳でジューダスを見つめ、心中を明らかにするルーク。
「・・・お前が目指す道は何よりも辛い道となる。それでもお前は選んだ道を違わず、その道を貫き通すか?」
「ああ!!」
問いに迷うことなくすぐに返事を返したルーク。その答えにジューダスは口許に笑みを浮かべた。
「ならば僕もお前についていこう」
「・・・え?」
突然のジューダスの申し出に目を丸くして驚くルーク。訳がわからないと雰囲気がジューダスにも丸分かりだ。
「僕は預言とヴァンとやらの計画には賛同出来ん、だから僕が協力する、理由はそれだけでいいだろう」
ルークの言葉にならない疑問に訳を言うジューダス、しかしルークはまた別の疑問が浮上してきた。
「預言に賛同出来ないって・・・どういうこと?」
オールドラントの住民は預言を絶対として崇めている、しかし目の前のジューダスははっきりと預言を否定する発言を口にした。それが疑問に起こったのだ。



「僕は元々この世界の住民ではない」
「・・・え?」
「先に言っておく、これから話す話は紛れもなく事実だ」
突拍子なく真実を言うジューダス、尚もジューダスは真剣に話を続けた。
「・・・僕の世界で十八年前に戦争が起き、僕はその戦争で後に英雄と呼ばれたスタン達と戦い、敗れ死んだ。それから十八年後、世界に神が降臨した。神は人々を幸せにするという使命を胸に、自らの分身二人を生み出した。そこで僕はエルレインという神の分身の一人に再びて命を与えられた」
「与えられた!?」
「そう、それこそが神の力だった。僕はエルレインの手により蘇り、彼女の手駒として生きれば幸せになれると言われた。・・・僕はそれを断りもう一人の分身のリアラとスタンの息子カイル達と共にエルレインを倒す道を選び、そして最後に神を倒した」
「倒したって・・・どうして!?人を幸せにしようとしていたんだろ?」
「確かにエルレインは人を幸せにしようとしていた。しかしエルレインは神を信じなければ人に救いを与えようとしなかった。人は救いたいが、神を信じない人達はどうしても出てくる、そこでエルレインは過去に戻り、人の歴史を都合の良いように作り替え神を信じるものしかいない世界を作り上げた」
「えっ・・・?それって・・・」
「人の歴史をリセットして、自分の手で理想の世界を作り上げていた・・・つまりはヴァンとやらの理想と全く同じだ」
「どうだった・・・?その世界は」
「人が人として生きることを放棄している神の作った『箱庭』のような世界だった。痛みも苦しみも悲しみもないが、その代わりに人らしさが全く無くなっていた。それを見た僕達はエルレインを倒す道を選んだんだ・・・ヴァンとやらはあのような世界を再び作ろうとしている、僕はそれを許す訳にはいかん・・・!」
ジューダスの口調の端に抑えきれない怒りの感情が篭っているのが分かる。



・・・少し間が空いた後、ジューダスは口調をいつもの調子に戻して再び話だした。
「・・・話はずれたが神を倒した事で神が起こした現象全てが無くなる事になってしまった。神の力で生き返った僕は消滅するか、時空間をさ迷うかのどちらかの結末だろうと予測していた。そして結果は後者、時空間をさ迷っている最中にお前が時空移動してきたんだ」
「で・・・巻き込まれてしまった・・・?」
「そういう事だ」
ジューダスの返しを聞き、「あぁ~」と頭を抱えだしたルーク。ローレライに気にしなくてもいいと言われたが、やはり大分気にしていたようだ。




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