救う者と救われるもの 第十九話

最初に降り立つ地はダアト、目的地にたどり着いたアルビオールから三人は足早にイオンの部屋へと足を踏み入れた。するとそこにはイオンと、何故かディストの二人。
扉を開けた瞬間驚きを二人は見せた物の、ディストはイオンより立ち直りも早くシンク達に眼鏡を手で抑えながら声をかける。
「あなたたちだけ・・・ですか?ルークとジューダスはどちらに?」
「二人はバチカルで休んでもらってるよ。あんたはなんでイオンと一緒にいるのさ」
「それは僕が話し相手にってお願いしたんです・・・久しぶりですねアリエッタ、シンク。そして、初めまして・・・フローリアン」
二人の会話に入ったイオンは挨拶を三人にするが、事情を既に知っている二人に明るく笑顔でなど声を出せず、法衣にフードを被ったフローリアンに向かってはより深刻な顔になる。
「うん・・・初めまして、になるのかな?産まれた時に君は近くにいたんだと思うけど、話した事ないからわかんないや」
フードを取ったその顔はイオンとは対照的に、暗さなど感じさせずうーんと首を傾げていた姿勢からどうでもいいかとニパッと笑顔に変わる。
「そう・・・ですか」
「ハイハイ、僕たちはあんたと再会や顔合わせの為にここに来たんじゃないんだからね。そういうのは後にして、まずは僕の話を聞いて」
「あ・・・はい・・・」
どうにも楽観的になれないイオンを見て、シンクが空気を変える為割り込むようにイオンの前に入る。イオンは呑まれつつ、シンクに空返事に近い様子で返事を返す。そんな上の空に成り兼ねないイオンの様子ではあるが、話を聞けばすぐさま正気に戻るとシンクは考え今までの流れを含め、シンクは説明を開始した。









「・・・という訳でね、ダアトの代表としてあんたとモースが会合に出席すること、ユリアシティを会談の場として使わせてほしいとのこと、ケセドニアの代表にも出席するよう頼むこと、それらを陛下は頼んで来たんだよ」
「・・・そういう事ですか。わかりました、すぐに手続きに取り掛かりましょう」
説明を聞き終わる頃にはいつものイオンへと戻り、陛下の依頼に二つ返事で提案に乗ってくれた。
「それならそっちはあんたらに任せるよ、僕たちはこれからすぐにケセドニアとマルクトに向かうから」
「待ってください、シンク・・・なんで僕との会話を避けているんですか・・・?」
用事は済んだとさっさと扉に振り向くシンクを引き止めるようにイオンは声を出す。会話をする事すら煩わしいと思われるかのようなシンクの態度に、イオンは導師の立場の自分に思うところがあってこんな行動を取っているかもと深刻に考えていた。



・・・だがイオンに振り向かないまま、シンクから出た言葉は刺も何も感じられないものだった。
「別に、そんなんじゃないよ。ルークとジューダス達は迅速な行動を心掛けてたからね、僕はそれに習って行動してるだけさ」
「えっ・・・?」
「何間抜けな声出してるの?そんなに話したいなら終わった後にしてくれる?・・・時間はあるんだからさ、全部終わった後なら全員とゆっくり話す時間なんてね」
その言葉には恨みつらみなど一切こもっていない、ただそうなんだとゆっくり諭してくれる口調には優しげな響きが隠されている。イオンは全員と付けられていたことにも気付き、二人を見ると笑顔を向けられ頷いてくれている。
(・・・これがルークという人が起こしてくれた事なんですね・・・)
このように穏やかにシンク達と話が出来る日が来るとはイオンは思ってもいなかった。更にはシンクから歩み寄ってくるような、先があると自分で言ってくれた。以前は同じレプリカかもと時々見る姿で感じただけで、話をする事すら稀有な物だったのに。話に聞くに世界に怨みを持って、わかりあう事が出来なかったというのに。



「・・・はい、全て終わりましたらゆっくりお話しましょう」
歩み寄りに縁を結び付けたいイオンは申し出るように約束をする。この空気が偽りなくルーク達のおかげだと理解出来てしまったイオンは、自らの心ですらも楽になったことを自覚していた。







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