救う者と救われるもの 第十九話

「・・・落ち着いたか?」
「うん、なんとか・・・」



・・・30分もしただろうか、ルークが嬉しさに耐え切れず泣き崩れて。ルークは徐々に泣くペースを落として立ち上がるに到った時間はそれくらい、目は充血していてその周りには涙を拭いてこすったような後が見られる。対するジューダスは声は怒ってはおらず、平静そのものだ。
‘ガチャッ’
「・・・おぉ、大丈夫か?ルークよ」
「叔父上・・・皆・・・すみません、時間を取らせちゃって・・・」
部屋に戻って来た陛下とシンク達がルークの顔を見て心配そうな顔になり声をかけるが、ルークはその心遣いにいたたまれな気持ちになって意識せず頭を下げる。
「いや気にすることはない、いきなりこのような事を聞いてはそうなるのも無理はない。それにシンク達にも話をつけることが出来たのでな」
「「?」」
話と聞き本当に話をしていたのかとジューダスは思ったが、内容に心当たりがないので二人共に疑問を抱く。
「ルークにジューダス。二人はしばしこのバチカルにいなさい。シンク達三人には各国を廻ってもらう、その間はここで休養しなさい」
「・・・各国?」
「陛下。私からお話していいでしょうか?」
「うむ」
いきなりの休養を言い渡され、更にはシンク達との入念な話し合いの成果が見える会話。本気で意味が理解出来ない二人は話をすると言い出したシンクを凝視するくらい注目する。
「僕たちが陛下から承った依頼はね、外殻大地の降下をきっかけにキムラスカとマルクト、それにダアトの三国の首脳を一カ所に集めて和平と預言の撤廃を話し合う会議を設ける為に各国を廻ってそのことを伝える役割なんだ」
「・・・え?」
「今キムラスカには事情を知る陛下、マルクトには死霊使い達、そしてダアトには導師イオンに・・・どうなってるかはわからないけどモースもいる。今なら三国共同体制でこの事態に終止符をいい形で打つ事が出来る、僕たちは機が来たと知らせに行く為に陛下の依頼を承諾したんだ」
「・・・それはわかった。だが何故僕たちに休養など?」
事情を聞いて成る程と思うと同時に二人は自分達だけどうしてだと、ジューダスは問う。その質問に答えたのはシンクではなく、ジューダスに近寄り手の裾を握って来たアリエッタだ。
「ジューダス達、レムの塔で障気、中和した、です。けどアリエッタ達、中和の時何も出来なかった、です」
「そうそう。だから僕たちもルーク達の為に色々やりたいんだ。それに障気を中和したのも昨日の事だし、話をしに行く間くらい僕たちに任せてよ!」
「・・・でも・・・」
「ルークよ、今の泣き腫らした顔でナタリア達に会いに行くのか?」
「・・・アッ・・・」
自分も行くべきだとフローリアンの主張に答えようとするが、今の自分の顔の状態を陛下に指摘され気付いたように小さく声をあげ一気に頬を赤くして気まずそうにうろたえる。そんなルークの顔を見て陛下は優しい微笑みを浮かべて、諭すように話し出す。
「ルークよ。障気の中和という大役をローレライがいたとはいえ、二人でこなしたのは全世界に誇っていい事だ。焦る事はない、ほんの少しの間だけ泣き後が消えるまでは休みなさい。他の誰が批難しようと、わしはルーク達が休む事を許させる・・・それに彼らも大役を終えたルーク達に少しでも報いたいと断る事の出来る依頼を受けてくれたのだ、察しなさい」
そう言われてシンク達に目を向けるとアリエッタ・フローリアンからは力強い頷き、シンクは気まずそうに視線を背ける。三人の意志を見たルークに断りの言葉が出るはずがない、
「ありがとう・・・」
絞り出て来た精一杯の感謝の言葉は涙をこらえての物。人の優しさに触れ再び揺り起こされた溢れる想いを押し止める事にルークは必死で、それ以上何も言う事が出来なかった・・・







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